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“当事者”発「歩行支援アプリ」で…視覚障害者が散歩“楽しむ” ベビーカーに活用できる“みんな”が便利なアプリも

2024年2月20日 20:56
“当事者”発「歩行支援アプリ」で…視覚障害者が散歩“楽しむ” ベビーカーに活用できる“みんな”が便利なアプリも

今週末は楽しく多様性に触れる「カラフルウィークエンド」、news every.では今週、さまざまな「生きやすさ」に関する企画を配信しています。

障がいがある人が生活しやすくなるよう、当事者が自ら開発や運営に携わるアプリが意外な広がりを見せています。中には車いすユーザーの作ったアプリが健常者にとっても便利に。どんなモノなんでしょうか?

生まれつき目の見えない大石亜矢子さんは、ラブラドールレトリバーの盲導犬・イリーナ(10)に7年間、歩行を助けられていますが、ある悩みを抱えています。

大石亜矢子さん
「“犬がいないと私は歩けない”というのでは、困るなと思ったので」

盲導犬の入店拒否などもあり、イリーナに頼れない状況もあるというのです。

そこで、新たに歩行をサポートするのが、首から下げたスマートフォン。「アイナビ」という視覚障害者のための歩行支援アプリです。カメラが捉えた画像をもとに、AIが障害物などを認識し、音声で案内してくれます。

試しに、街で使ってみると…

歩行支援アプリ「アイナビ」の音声
「自転車」

視覚障害者にとっては、障害物である“自転車”を認識しました。
そして、横断歩道では、盲導犬や白杖では信号の「色」がわからず、渡るのも一苦労ですが…

アイナビの音声
「信号が青です」

アイナビが、信号の色を案内しました。
車や壁など、20種類を認識するようプログラミングされています。

大石亜矢子さん
「『赤信号です』みたいな。こんなふうに教えてくれるなんて、すごいなと」

全盲の川田隆一さん(63)は、このアプリの改善に尽力する1人です。

――特に力をいれた点は?

ダイヤル・サービス株式会社 アイナビ担当 川田隆一さん(63)
「(視覚障害者に)お散歩っていう心のゆとりはなかった…。でも、(道に)何があるかってわかると、結構楽しいなって」

障害物だけでなく、周辺の施設を案内すること(機能)に力を入れたといいます。

アイナビの音声
「18メートル先に、エクセルシオールカフェ新橋2丁目店」

歩行支援アプリを使うことで、歩くことがただの“移動”から、“楽しいこと”に変わるといいます。

ダイヤル・サービス株式会社 アイナビ担当 川田隆一さん(63)
「A地点からB地点に行くっていうことだけが、必死で歩く目的だったんです。自分のやりたい道をやりたいように、歩きたい道を歩きたいように歩けるように」

目指すのは、“誰もが自由に歩ける社会”――

小学6年生の櫻怜哉くん(12)は、ごくわずかな範囲しか見えていない弱視です。母親が見守るなか、先月から白杖を持って1人で歩く練習が始まり、自宅から最寄り駅までを歩けるようになりました。

中学生になったら、やりたいことがあるといいます。

櫻怜哉くん(12)
「寄り道して帰る。路線バスで帰るようになったら、 (友達と)バス停まで一緒に行けて」

視覚障害を“できない理由”にしない――

アイナビの音声
「ポール」

櫻怜哉くん(12)
「ポールって言った。ポールってこれのことか」

見守る母親は…

櫻千恵子さん
「自分一人で、何でもやっていきたいっていう気持ちが芽生えているところで…この子の世界が広がる」

視覚障害者の人生をより安全に、そして、楽しく彩る可能性を秘めていそうです。

障害者のアイデアから生まれ、健常者まで便利になったアプリもあります。

去年12月、「ジャパンSDGsアワード」で岸田総理に表彰されたのは、車椅子の女性。地図アプリ「WheeLog!(ウィーログ)」の発案者、織田友理子さんです。

「ウィーログ」は、エレベーターやスロープ、誰でもトイレの場所などを“可視化”してくれるバリアフリー情報アプリ。

東京・渋谷駅付近をみてみると…複数のトイレやエレベーターの場所を表示し、駅構内のスロープ情報も掲載されています。これらの情報は、ユーザーの投稿をもとに増えていきます。

車椅子ユーザーが困ることは、実は、ベビーカーを使う人も同じだといえそうです。

3歳の子どもがいる会社員(30代)
「ベビーカーの場合は、エレベーターを使わないといけないので」

赤ちゃんがいる親世代や、お年寄り、重い荷物を持った人などの味方になってくれます。

1歳の子どもがいる会社員(30代)
「(アプリで)エレベーターの位置が、これでわかるんですね。車椅子の方とほぼ同じルートで、お出かけとかしてると思うので、同じように使えると思います」

代表の織田さんは、障害者がアプリを通して誰かの力になることで、彼らの生きがいにもつながるといいます。

障害者も健常者もさまざまな人が、より自由に、より生活しやすい社会を目指して――。
アプリは進化を続けます。

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