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【福島第一原発のデブリ取り出しで検討中の3工法とは】更田豊志委員長に聞く

2024年2月22日 19:10
【福島第一原発のデブリ取り出しで検討中の3工法とは】更田豊志委員長に聞く
3月で震災と原発事故から13年です。
福島の復興のカギを握る福島第一原発廃炉…その最難関とされる燃料デブリの取り出しについて、お伝えします。

福島第一原発では現在、デブリの試験的な取り出しに向けて準備が進められていますが、同時に議論されているのがその後の本格的な取り出し方です。
前例のないプロジェクトに道筋をつけることはできるのでしょうか。

3月、東京都港区で開かれたのは、燃料デブリ取り出し工法評価小委員会です。
原子力の専門家らが1年ほどをかけて、どのようにデブリを取り出すのか検討してきました。

■燃料デブリ取り出し工法評価小委員・ 更田豊志委員長
「まだ大きな不確かさがいっぱいある中で、議論しなければならないというところが一番難しい」

原発事故からまもなく13年、廃炉作業は一定の進捗を見せていますが、デブリの取り出しは、いまだ着手すらできていません。

東京電力は秋ごろまでに初めてデブリを取り出せるよう準備を進めていますが、想定している取り出し量は、耳かき1杯程度の、わずか数グラム。

1号機から3号機までの燃料デブリの総量は880トンともいわれる中で、今後どのように大規模に取り出していくのか、小委員会は「3つの工法」について検討を重ねています。

■更田豊志委員長
「一通り各工法について議論をしてきたと思っていますので、どこで取りまとめるか、考えていく段階に来ていると思う」

一つ目の工法が「気中工法」です。空気中で燃料デブリを取り出す方法で、遠隔ロボットを使い「横」と「上」から取り出しを進めます。
■更田 豊志 委員長
「柔軟な対応が可能で途中から工法を変えることも比較的容易、一方で難しいのはとにかく放射線がきついので、すべてを遠隔装置で行わないといけないので、遠隔装置の開発が大きな課題となる」

そして二つ目が「冠水工法」です。
建屋全体を大きなプールのような構造物で覆い、水に沈めてから水中でデブリを取り出します。
■更田豊志委員長
「気中工法に比べると、作る構造物は非常に大掛かりなものになる。ただし気中工法に比べれば、人がある程度近づくことが可能となる。水は非常に優れた放射線を遮るものなので、作業員は上に新たに設ける部屋で作業が可能です」

そして、最近検討が始まった三つ目の工法が「充填固化工法」です。
コンクリートのような充填剤を流し込み、デブリを固定します。そしてそれらを一緒に砕いて取り出しを試みます。

■更田豊志委員長
「固めるために使う材料も放射線を遮る役割を持っているので、一旦安定させられるという意味では魅力的な工法。ただし、この工法は廃棄物が増えると予測されているので、固める範囲を減らすなどの検討が必要になる」

小委員会は2024年春までに、3つの取り出し方の評価結果をまとめ、その後、東京電力などに提言する計画ですが、更田委員長は2つの観点からその難しさを話します。

■更田豊志委員長
「それぞれの工法によって難しさはあるが、一言でいうと時間です。1Fのリスクを下げて、できるだけ早く管理した状態に持っていきたいと思っている。その意味で、いったい時間がどれくらいかかるのかを今の段階で評価するのは非常に難しいし、進んでいく段階でより多くの情報が得られてきたら、工法の仕切り直しもできるように考えていかないといけない。『情報が少ないこと』が一番の難しさです」

30年から40年かかるとされる福島第一原発の廃炉。
事故から13年が経とうとするなか、人類史上例を見ない困難への挑戦が続きます。
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