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南相馬の小高区に若い世代が続々と移住し起業 なぜ「住民ゼロの町」が「フロンティア」に

2023年3月10日 1:24
南相馬の小高区に若い世代が続々と移住し起業 なぜ「住民ゼロの町」が「フロンティア」に

福島・南相馬市小高区は、福島第一原発事故の影響で一時は住民が「ゼロ」になりました。しかし今、町には若い世代が続々と移住しているといいます。「フロンティア」とも言われる小高区を訪ね、人が集まり新たな事業が生まれる理由を探りました。

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福島第一原発から半径20キロ圏内の南相馬市小高区に住む佐藤太亮さん(30)は、飲食もできる酒蔵「haccoba」を経営し、日本酒の製法をベースに新しいジャンルの酒造りに挑戦しています。

ビールで使うホップを掛け合わせた定番商品「はなうたホップス」は、フルーティーな味わいが特徴です。つくるお酒のほとんどが、オンラインで即日完売する人気だといいます。

実は、佐藤さんは都内のIT企業で働く“サラリーマン”から一転、3年前に小高区にきた移住者です。

――福島にゆかりなどがある?

佐藤太亮さん
「全く、もともとはなくて…僕が、誕生日が3月11日だったのでそれが自分の中で…“使命感”というと言いすぎかもしれないですけど」

今から12年前、小高区は原発事故で「避難指示区域」に指定されました。みな、避難を余儀なくされ、住民は一時「ゼロ」になりました。避難指示が解除され間もなく7年となる中、町に住む人はいまも震災前の3割ほどですが、佐藤さんがこの場所を選んだのには理由がありました。

佐藤太亮さん
「人口が一時『ゼロ』になってしまって、まさにゼロからもう一回、町の暮らしや文化を作り上げていこうとしているフロンティアな街だと(聞いて)、もう、ここしかないなと思って」

佐藤さんのように、あえて小高区を選択する若者が増えているといいます。案内してくれたのは、佐藤さんの移住の原点の「小高パイオニアヴィレッジ」です。

――受付の人も若いですね

佐藤太亮さん
「そうですね。福ちゃんは、大学卒業してすぐここに移住してきて…」

「福ちゃん」とは25歳の管理人です。

佐藤太亮さん
「(事業が)立ち上がる前は、ずっとここで作業したり、結構入り浸っていました」

若い起業家らを呼び込もうと、4年前にオープンしたワークスペースです。移住してすぐ生活できるよう宿泊も可能で、時には地元の若手経営者らと意見交換をすることもあります。こうした拠点作りや起業支援などを通して、これまでに70人の若者が移住しているといいます。

立ち上げたのは、地元・小高区育ちの和田智行さんです。

和田智行さん
「(小高区が)『フロンティアだよ』と言ってきたことを、まさにこういった人たちが体現してくれている。日本中探しても、そんなフィールドはここにしかないと思っている」

一度ゼロリセットされたからこそ何でもできるといいます。町は「被災地」ではなく、「やりたいことをかなえる場所」に変わろうとしています。

デザイナー 西山里佳さん(38)
「どんどんメンバーが増えて、活気があるなと」

「馬ビジネス」を起業 神瑛一郎さん(27)
「ビジネスを通じて、もっと人と馬を近づけたい。10年後には上場させたい」

小高の町は、新しいにぎわいを見せているのです。

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酒蔵を始めて2年。佐藤さんは先週、小高区よりも原発に近い浪江町へ向かいました。今月末に帰還困難区域の一部で避難指示の解除が決まった地域です。

佐藤太亮さん
「ここがいま、新しく浪江町につくっている酒蔵の場所」

“新たな酒蔵造り”への挑戦を始めました。

佐藤太亮さん
「実は、仮設住宅を再利用して(酒蔵を)つくる予定で」

震災の記憶を語り継ぐため、建設には仮設住宅の木材などを再利用する予定だといいます。酒造りで被災地に、再び「人」を戻したい佐藤さんが目指す“この先”を聞きました。

佐藤太亮さん
「小高も少しずつ人が来ていただけるようになってきたので、小高からこっち(浪江)に来ていただいたり、浪江で知っていただいた方が小高にも行っていただいたり…。町こえて人の流れが少しでも生み出せるといいなと」

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木曜日の「news zero」パートナーを務める元ラグビー日本代表キャプテン・廣瀬俊朗さんは、佐藤さんがつくる酒を飲んだことがあるといいます。

廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「都内のイベントで飲んだんですけど…」

有働由美子キャスター
「たまたま?」

廣瀬さん
「たまたまです! 日本酒のような感じもあるんですけど、さわやかな香りとか味わいがあり、すごいおいしかったです。その時にどこで・誰が・どんな思いでつくっているんだろうとか、現場行きたいなと思いました。佐藤さんのお酒で“被災地と人をつなぐ”コンセプトは、本当にいいと思います」

有働キャスター
「印象的だったのが、住民がゼロになって全てを失った…じゃなくて、ゼロになった場所をそのまま受け入れて、自分たちのやりたいものを作り上げていく、しかもワクワクしながら。そして、地元の人も一緒に。さらに、ビジネスもそこで営んでいけるというのは力強いなと感じました」

(3月9日放送『news zero』より)