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特集「キャッチ」“音のない”デフサッカーで世界に挑む 日本代表を引っ張る福岡出身選手

2023年9月6日 17:47
特集「キャッチ」“音のない”デフサッカーで世界に挑む 日本代表を引っ張る福岡出身選手
特集「キャッチ」です。バスケットボール、そしてラグビーの日本代表が話題ですが、ほかの競技でも9月、日本代表が世界大会に挑みます。それは、聴覚に障害のある選手たちがプレーする『デフサッカー』です。日本代表を引っ張る福岡出身の選手を追いました。

グラウンドに響くのは、大きな声とサッカーボールの音です。

しかし、プレーする選手たちには、ほとんど届いていません。

彼らは聴覚に障害のある人たちがプレーする『デフサッカー』の日本代表候補です。手話やジェスチャーでコミュニケーションを取ります。

チームの守護神を務める福岡県宇美町出身の松元卓巳さんは、代表17年目のベテラン選手です。3歳から補聴器をつけて生活しています。

■松元卓巳さん(34)
「後ろから話しかけられたら聞こえない。何でだと思います?補聴器の音を拾うマイクが前向きについている。車が来ていても分からないから、近くに来たクラクションの音で気づく。」

松元さんは保険会社に勤務しながら、難聴への理解を広めようと、小学校などで講演活動を行っています。

サッカーを始めたのは小学3年の時です。高校は、強豪として知られる鹿児島実業に進みました。デフサッカーと出会ったのは、そんな高校時代です。

■松元さん
「ルールはみんなが知っている体育やJリーグのサッカーと全く一緒。ただ僕らのルールで、補聴器を外さないといけない。 外したら何も聞こえない。」

デフサッカーはプレー中、補聴器を外すことから、“音のないサッカー”と呼ばれます。

日本代表は、9月下旬からマレーシアで行われる世界選手権に出場します。

難聴のアスリートが4年に1度、世界中から集う『デフリンピック』にも、これまで4回出場していますが、いまだかつてメダルを取ることができていません。

■松元さん
「アジアでは金メダル取ったことあるけど、 世界の大会では、メダルどころか予選リーグを突破したこともないので。(デフリンピックで)メダルを取るまでは、全力でやっていきたいっていうのが今の目標。」

宮城県で行われた、デフサッカー日本代表の最終選考合宿初日、監督から、ある発表がありました。

■デフサッカー日本代表・植松隼人 監督
「1年間合宿を積み重ねて皆さんの性格を把握したうえで、 キャプテンとして、きょうから松元卓巳に託したいと思います。」

■松元さん
「ビックリしている部分もあるし、 うれしい部分もあるし。ことしで代表17年目。おそらく僕が一番長い。僕にとっては日の丸って重い。 日本代表として高みを目指せるチームを常につくっていきたいと思っていて。まずはW杯(ことし9月開幕の世界選手権)。そして2025(デフリンピック)。俺は本当に世界一になりたい。みんなにも同じ覚悟をもって、一緒に戦ってほしい。みんなで一緒にがんばっていきましょう。」

■原口凌輔 選手(29)
「(Q. 松元さんはどんな人?)(松元選手は)熱い。」

■瀧澤諒斗選手(19)
「時には厳しく、時には優しくしてくれる。とても尊敬している先輩です。」

合宿では、新チームとなって初めての対外試合も行われました。相手は大学のサッカー部、耳が聞こえる健聴の大学生が相手です。

先に攻撃を仕掛けたのは、大学チームでした。前半25分、サイドからの攻撃に対応できず、デフサッカー代表候補は失点してしまいます。

それでも果敢にゴールを狙いますが、なかなか得点に結びつきません。

■岡田侑也選手(26)
「ボールを持ったら全部前、前、前、前。そうじゃなくて、もうちょっと横も使いながら。」

プレー中、補聴器を外す難聴の選手たちにとって、一番大事なのがコミュニケーションです。限られた時間で何を伝えるか、キャプテンの松元さんも細かく指示を出します。

すると後半25分、相手ディフェンダーをうまくかわし、ハーフタイムで指摘のあった、サイドからの攻撃で同点に追いつきます。

その後、デフサッカー代表候補は次々と得点を重ね、終えてみると4対2で快勝です。新体制の第一歩を勝利で飾りました。

■仙台大学サッカー部・西口昌吾 主将
「自分たちは声を出してコミュニケーションがとれるのに、試合中にあまり声を出さないところがあったので、コミュニケーションをとる大切さを、(デフサッカー日本代表と)一緒に試合をして学んだ。」

2年後の2025年には、日本で初めて東京で『デフリンピック』が開かれます。

まもなく開幕するマレーシアでの世界選手権は、キャプテンの松元さんが引っ張る今の日本代表の実力をはかり、国際経験を積む、またとない機会です。

■松元さん
「耳が聞こえないというハンディを持っていても、スポーツを通して夢をかなえられる、楽しめるという姿を見てもらいたい。 今後、世界一を目指すという目標を掲げているので、最終的には世界一をとれるチームになりたいと思います。」
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