【特集】隠し味は笑顔! 84歳のおばあちゃんが作る「桜の塩漬け」
笑顔がチャーミングな84歳のおばあちゃんが作る桜の塩漬けが、”まち”と”さと”の交流の輪を広げています。
4月末、庭に八重桜が咲き誇る県北の一軒家に、人々が集っていました。
■川上令子さん
「もう開いてちょっと満開よね。早く取ってください、お茶飲んで。」
この家の主は川上令子(かわかみ・のりこ)さん、84歳です。この日、みんなが集まったのは、見ごろの桜の花を摘むためでした。ちょっとかわいそうな気もしますが・・・。
■川上令子さん
「容赦なく摘んでいいんよ。同情せずに。桜のためにもいいんよ、花を取ってやるのは。木が弱らんのよね。栄養が蓄えられるけえね。」
摘んだ花で作るのは、桜の塩漬けです。ちらし寿司や和菓子などに添えられています。
広島県庄原市高野町に住む川上さんは、61年前にとなり町から嫁いできました。桜の塩漬けの作り方は、誰かに習ったのではないそうです。
■川上令子さん
「(作り方は)自分で。桜の花がこうして咲いとったときにね、もう若いときよね。どうかしてみようかなと。いろいろやりながら。」
当初は、家族や近所で消費するぶんだけ作っていました。いつしか評判が広がり、広島市内の醤油メーカーが、季節限定で販売する桜のドレッシングづくりに協力するほどになりました。
子どもたちが巣立ち、夫に先立たれて始まった一人暮らしも長くなりました。自身も、作業を手伝う仲間も年齢を重ねる中、一時は、桜の塩漬け作りをやめていたと言います。
■川上玲子さん
「やめとったんよ。することをもうやめよう思うて。そしたら、和田さんが来られて「やめないでほしい」と言われて。」
「続けてほしい」と声をかけたのは、市民グループ『SATOMACHI』の代表、和田徳之さんです。
■SATOMACHI代表 和田徳之さん
「もともと桜の文化を大切にしたいなと思って。食べ物というところで桜の塩漬けを県内で探していたんですけど、なかなか作っていらっしゃる方が見当たらなくて。」
人づてにようやく探し当てたのが川上さんでした。4年前から、SNSなどを通じて募ったボランティアが作業を手伝っています。花びらの間についている花粉やホコリを落とし、さらに水で洗う作業を行いました。その間、手も、口も、笑いも止まりません。
作業の合間のコーヒータイムには、前年に漬けた桜で作ったケーキが振舞われました。交流を通して都会と田舎を結びたいと考えるSATOMACHI。桜の塩漬けをさまざまな商品とマッチングしています。
■川上玲子さん
「私らはやっぱりお寿司するとかぐらいのことしか考えんじゃないですか。じゃけど、こんないろんな形でね、現れてくるからびっくりする。」
この日摘んだ桜は、全部で11.4キロ。これらを、いよいよ塩漬けにしていきます。花を摘んだその日に「仮漬け」まで作業を進めなくてはなりません。そして、夏前に取り出してもう一度洗い、塩とクエン酸で漬け直します。「桜の塩漬け」が出来上がるのは、2025年2月ごろです。
■川上玲子さん
「食べられた方が、おいしいねと言われるのがいいですよね。」
笑い声に包まれながら作る「おばあちゃんの塩桜」。みんなが集って作業にいそしむこのひと時こそが、川上さんの元気の秘訣なのかもしれません。