危険な場所の住民『ゼロ』を目指して 広島県が行う防災対策『逆線引き』とは?【みんなで防災プロジェクト】
広島県が防災のために行っている『逆線引き』という取り組みについて、広島大学防災・減災研究センターのセンター長・海堀正博さんとお伝えします。
■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
『逆線引き』は簡単に言いますと、災害の危険度の高い地域への居住を制限するというものです。
■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
では、なぜ『逆線引き』というのかを説明します。私たちが暮らしている町は『市街化区域』と呼ばれる「街にしていこう」という区域になります。「人が住む街にしていこう」「開発をしてもいい」という区域です。もう1つ「開発を制限する区域」の『市街化調整区域』というのがあります。ところが、開発してもいいはずの市街化区域の中に、レッドゾーンと呼ばれる『土砂災害特別警戒区域』が含まれています。このレッドゾーンは、土砂災害発生の危険度が特に高いエリアということになり、これが全国で最も多いのが広島県ですね。
■広島大学 防災・減災研究センター長 海堀正博さん
その通りです。昭和30年代、40年代頃に、特に人口がどんどん増えていく状況の中で、宅地がどんどん傾斜の急なところ、危険なところに向かって開発がされていった状況で、結果として『土砂災害特別警戒区域』、レッドゾーンと呼ばれるものが、全国で1番多くなってしまってる状況です。
■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
山を切り開いて、団地を造成していったということによって、広島土砂災害ですとか、西日本豪雨などでも、甚大な被害が出ています。
■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
こうしたことから広島県は、この山際の危険な場所に住む人たちを減らそうと考えています。つまり、これまでは開発ができる区域だったんですが、その中でレッドゾーンに該当するエリアは、開発に制限をかけて、従来の線引きよりも、新しい線引きをこのまま下に下げる、山際から離して新しい線引きを作るということが『逆線引き』と呼ばれます。この『逆線引き』の取り組みについて、海堀先生いかがでしょうか。
■広島大学 防災・減災研究センター長 海堀正博さん
これは宅地を造成する側から言えば、制限ですね。土砂災害防止法の場合には、レッドゾーンの指定がかかっているところは、特別警戒区域は、普通に住むための家を新たに建てることは、やはり制限されます。でも、土砂災害対策、ハード対策「砂防ダム」や「崖の対策」などをすると、このレッドゾーンが、またイエローに戻るということがあり、そうすると、家が建てられてしまうわけなんですね。それだけでは、危ないところに住む人が増えてしまう危険性がまだまだ残ってしまいます。今回、この『市街化調整区域』という考え方で、これを「危険なところ」という示し方を増やすことで、ここに知らないうちにまた新たに人が家を建てて住むことを、ある意味制限することができ、重要だと思っています。
■広島テレビ 馬場のぶえアナウンサー
理屈は分かりますが、ただ今住んでいる人が転居を求められることもあると思うんですが、それはなかなか難しいことですね。
■広島テレビ 森拓磨アナウンサー
そうですね。そう簡単なことではないので、広島県は、まず住宅や店舗がない場所の土地から始めるということ、先行的な『逆線引き』というところで、こういった線引きをして、住宅はかからないように、住宅がないところで、先に線引きをしていこうと、段階的にこの『逆線引き』を進めることにしています。13の市町500か所以上で、先行して実施する予定になっています。全体としては、時間がかかるのは承知の上で大体20年だそうです。20年後に『逆線引き』を終えて、災害リスクの高い区域に、新規の居住者がほぼいない状態にします。50年後には、災害リスクの高い区域に居住する人「0」を目指すとしています。もちろん、人の生活・住居に関わることで、急にはなかなか進まないため、県としては、時間をかけてこの取り組みをやっていこうという方針になっています。
【テレビ派 2024年8月20日放送】