新たな被爆者線引き「黒い雨」「被爆体験者」訴訟・広島と長崎 2つの被爆地で新たな”線引き”をめぐる動き
広島市に住む岡久郁子さん83歳。「被爆者と認めてほしい」と訴え続けています。原爆投下直後に降った「黒い雨」を浴びたにも関わらず、被爆者と認定されなかった処分の取り消しを求める裁判です。国は黒い雨の降った区域を「大雨地域」と「小雨地域」に「線引き」してきました。そして”大雨地域”の人だけに医療費が原則無料となる「被爆者健康手帳」を交付。”小雨地域”の住民は対象外としました。79年前に4歳だった岡久さん。爆心地から西におよそ15キロ離れた現在の湯来町、旧砂谷村にいました。ここは”小雨地域”のため被爆者とは認められませんでした。
■岡久さん
「戦後80年になろうというのにここらへんは黒い雨が降ったとか降っていないとか小雨だというのではなく放射性降下物が降ったということがいろんなところで証言・証明されればいいのではないか」
「黒い雨」訴訟は2021年、大きな節目を迎えます。広島高裁は小雨地域でも黒い雨を浴びた原告84人全員を被爆者と認めました。それを受け国は、同じ境遇だった原告以外の救済に動き出します。2022年4月から救済する対象を拡大した新しい基準の運用を始めました。しかしここから新たな「被爆者の線引き」が始まったのです。「疾病要件」です。被爆者手帳の交付条件は2つ。黒い雨にあったことを否定できないこと。さらにがんや甲状腺機能低下など11の疾病のいずれかを発症していることです。この2つ満たしていなければ、被爆者とは認められません。岡久さんもその1人でした。
■岡久さん
「私は疾病は甲状腺異常はあったんですが甲状腺機能低下症ではないし診断書は出さないで黒い雨の地域に住んでいたことは間違いないので診断書なしで申請を出しました。案の定、診断書が無かったからあなたは病気ではない。病気をもっていなかった被爆者ではない却下の通知がきた」
再び裁判が始まります。「第2次黒い雨訴訟」です。現在46人が新しい基準でも被爆者と認められなかった処分の取り消しを求めて裁判が続いています。被爆者の線引きは長崎でも。黄色のエリアにいた人たちは”被爆者”ではなく”被爆体験者”と呼ばれ手帳は交付されていません。9月9日、長崎地裁は”被爆体験者”44人のうち15人がいた3つの地域には「黒い雨」が降ったとして被爆者と認めました。原告は黒い雨に限らずアメリカの調査団の報告書を元に放射性物質を含んだ灰などが降ったと主張しましたが、判決では「精度が劣る」などとして3つの地域以外の29人は被爆者と認めませんでした。”黒い雨”と”灰”。新たに生まれた「線引き」に広島の第2次黒い雨訴訟の原告団からも憤りの声が上がりました。
■竹森雅泰 弁護士
「降灰とい黒い雨は別物だ同じものという立証ができていない否定する方向に持っていった」
■第2次 黒い雨訴訟 原告団長 岡久 郁子さん
「今回(被爆者に)認められなかった人たちは応援したい。長崎と一体となって被爆者問題を決着させたい」
広島の第2次黒い雨訴訟は9月24日に口頭弁論が開かれ、追加提訴が予定されています。
【2024年9月18日 放送】