廃校になった母校の再生に取り組む住民たち 広島・安芸高田市
65歳以上の高齢者が人口の4割余りと、少子高齢化や過疎が進む安芸高田市で小学校の統合が進んでいます。特集の主人公は廃校になった母校の再生に取り組む住民たちです。
■マルシェ・バルーン
「一個作ろうか」
廃校になった小学校で開かれた「アートまつりinごうの」。48の手作りの店が並ぶ、手作りの「マルシェ」が出現しました。
■お客さん
「何回か来たことがあって、素敵な店がたくさんあるので今年も来てみたいなと思って来ました。」
「久しぶりに来て、懐かしいなと思って。ここら全く一緒。」
会場となったのは、安芸高田市吉田町にある旧・郷野小学校です。
開校したのは1874年、明治7年…。
約4400人が、この学び舎を巣立ちました。ピークは終戦前後。全校児童は400人以上に達しました。
2004年に誕生した安芸高田市。しかし、少子化に歯止めがかからず、
当初13あった小学校は2017年以降廃校が相次ぎ、現在は8校となりました。
そして2019年3月、郷野小学校が閉校。140年余りの歴史に幕を下ろします。
■水藤さん
「これが、郷野小学校自慢の長さ63メートルの廊下です。」
水藤さんはこの小学校の卒業生です。廃校後、校舎の活用に取り組もうと住民が作ったグループで活動しています。
■水藤さん
「地域を元気づけるのには、やはり校舎があって皆さんの心の寄りどころとして存在して、校舎を活用しながら少しでも人口減少に歯止めをかけるような役目をここの校舎が持ってくれていればなんとかなるんじゃないかと。」
水藤さんらは2022年、企業の誘致や観光での利用などを校舎の活用策として提案。2023年2月に市と協定を結んで以来、入居する企業や団体などを募っています。
そして、廃校した4年前から続けているのが、この「アートまつりinごうの」です。
■水藤さん
「この校舎の存在が、ただ単に学校であっただけでなくイベントにも使えると、次の魅力に繋がって校舎の活用というような形に進展していければいいと思っています。」
そして迎えた「まつり」の日。掃除に励むのは、この催しを企画した中島さん。もちろん、この学校の卒業生です。
■中島さん
「すごくいい建物。敷地全体がいい雰囲気だと思う。私の子どもの頃から
あったものなので、きれいにしてこういうときにしっかりお披露目したいなと思っている。」
「まつり」には、地元以外にも広島や福山などから雑貨や飲食など48の出店がありました。
■出店者
「もう使われなくなった学校だけど、こういうふうにみんなで活用して使われるのは素敵だなと思う。頑張ってイベントやろうと考えておられたので、こっちも賛同した感じです。」
会場には、地元だけでなく市外からも多くの人が訪れ、来場者は約450人に達しました。
■レース
「ピッ・ワー」
かつて、ここには懐かしい風景がありました。それは、米ぬかの入った雑巾で廊下を拭くレース大会。築90年近い廊下は、今も輝きを失いません。子どもたちの歓声がこだました長い廊下…。この日は、久々の賑わいです。
■お客さん
「懐かしいですね。養護教諭でも2年間来た。変わっとらん。」
「もともと僕はここの学校なんですよ。(イベントは)めちゃくちゃありがたいですね。久しぶりにこの学校の中が見れるので。」
「この建物に入るの初めてなんで(旧郷野小を)残してうまく使ってもらえれば。貴重なあれなんで。」
■水藤さん
「一日、賑やかな子どもの声とたくさんの懐かしいねという声が聞かれて
とてもいい一日だった。校舎の活用についても興味を持ってもらった方から連絡が入ったりとか、こちらから働きかけたりして、活用に向けて進んでいければいいなと思う。」
郷野小学校の校舎の再生に取り組むメンバー達は、この冬あの輝く廊下で
世代を問わず楽しめるぞうきんがけレースを開く準備を始めています。
(2023年10月31日放送)