倒壊した家屋に閉じ込められたら・・・専門家に聞く
「能登半島地震」では、多くの人が倒壊した家屋や崩れた土砂の下敷きになる事態が起きています。
救助を待つ間は、圧迫の苦しさだけでなく、脱水症状や低体温。極度のストレスなど、様々なリスクに見舞われます。
万が一そういう事態に陥ってしまった場合に備えて知っておきたい「生き抜く術」を、災害現場での救助活動経験がある方に聞きました。
広島県警竹原警察所の檜﨑地域課長です。
管区機動隊員として4年間勤務し、「西日本豪雨」でも救助活動にあたりました。
知っておいてほしいポイントが2つあると言います。
一つ目は、「サイレントタイム」です。
■竹原警察署 檜﨑伴幸 地域課長
「まず、災害現場に着くと、救助隊は全ての音を消すやり方をやります。これがサイレントタイムといいまして、話し声を全くしない状態にした上で、誰かいますか?救助隊が来ましたよということで耳を傾ける、あるいは機器を設置する。それによって内部からの助けを求める音であるとか声であるとかいうものを拾うための時間の機会を設けるという意味」
「サイレントタイム」は、警察・消防・自衛隊のいずれもが必ず設けており、全ての重機や車両のエンジンを止めて、静寂を作りだします。
■塚原美緒・気象予報士
「私達もサイレントタイムを認識した方がいいことがあるんですか?」
■檜﨑さん
「閉じ込められて不安になってパニックになった状態で叫ぶ、あるいは無理をして体を動かす、そのことによって体力を消耗してしまうと、実際に救助隊が来たときに声も出せない、音も立てられないということになると、せっかく生存して頑張っているのにという場合もケースとしては考えられると思います」
そしてニつ目が「クラッシュ症候群」です。
家屋などの下敷きになった人が長時間にわたる強い圧迫から救出された際、毒素が全身を回り命に関わる状態のことです。
■檜﨑さん
「これの対応としては、閉じ込められた状態で、まずできれば自分の体の状態をチェックしていただいて、その状態が何時何分に始まってどのくらい経過しているのかということ記録すれば、救助にあたって医師の参考にもなるし、ひとつの命を救う手段として重要」
「サイレントタイム」では、助けが来たときに、自分の存在を知らせられるように、周囲の物を叩くなど、音を出せる手段を確保するのが大切で、体力の温存も大切なポイントです。
2つ目は「クラッシュ症候群対策」。建物などに閉じ込められた場合に出来ることとして、スマートフォン・筆記具などで「どの場所の圧迫が何時何分ごろから始まったのか」やその「経過」などを記録しておきます。
さらに、極限の環境に置かれることから、このように言われていました。
■檜﨑さん
「まず水分がとれない、圧迫されて、体の節々が痛みというより激痛の連続であったりとか、当然排泄もできないし、場合によっては真っ暗かも分かりません。そういう環境の中で生命を維持しようと思えばやっぱり感情の動物ですから生き延びてやろうという気持ちがかなり大事なのではないかと。もう諦めてしまうと、先ほどのサイレントタイムも全く無用になってしまいますから、そこの気持ちの問題も一番大きい所のひとつじゃないかと思います」
人命救助のタイムリミットとして「72時間の壁」という考え方があります。
石川県珠洲市では、閉じ込められていた90代の女性が、124時間ぶりに救出されています。
檜﨑さんは、被災者の置かれた環境や身体の状況によっては、一律に「72時間」ではないから、決して希望を捨ててはいけないと語っていました。
こういう事態を防ぐために、事前の備えは必ずしておきたいですね。
家の耐震補強はもちろんですが、すぐにできる備えとしては、
○家具・家電を倒れないよう固定する。
○ガラスが飛び散らないよう窓に飛散防止フィルムを張る。
○寝室に靴・懐中電灯・水・笛簡易トイレなどを、まとめて置いておく。
○携帯電話やスマートフォンなどの通信手段を、身近に置いておく。
いざという時に備えるために、様々なケースを考えておきましょう。
【2024年1月11日放送】