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【語り継ぐ】大震災を朗読劇で伝える福島の25歳女性 地震から8年の熊本に伝えたいこと

2024年4月10日 19:41
【語り継ぐ】大震災を朗読劇で伝える福島の25歳女性 地震から8年の熊本に伝えたいこと
横山和佳奈さん

(緒方太郎キャスター)
私は3月まで、東日本大震災と原発事故が起きた福島で暮らしていました。
今回は、福島から熊本へつなぎたい挑戦を取材しました。

取材した場所は福島第一原発に近い双葉町と浪江町です。
どちらも一時は全ての地域に避難指示が出され、現在も入れない区域があります。

取材したのは東日本大震災のとき小学6年生だった女性です。熊本に伝えたいのは「語り継ぐ」ことの大切さでした。

■緒方太郎キャスター
「ちょうど林の奥に福島第一原発の排気筒が見えます」

あの原発が牙を剥いたのが13年前。
津波で福島第一原発の電源が失われ、未曽有の水素爆発を起こしました。
今も周辺の一部の地域は、人が暮らすことができません。

■緒方太郎キャスター
「こちらは津波で大きな被害を受けた福島県の浪江町です。奥にある小学校は1階部分が13年前の津波にのまれました。教室をみると津波の恐ろしさが伝わってきます」

福島第一原発から約7キロにある浪江町の請戸小学校。災害の教訓を伝えるため、ほぼ当時のままの姿で保存されています。この学び舎で育った当時小学6年生だった少女は…。

■横山和佳奈さん(25)
「地震発生から約50分後に津波が到達したというのがわかる資料になっています。配電盤が津波で流された瞬間に止まっていると思われます」

語り部に。横山和佳奈さんです。

■横山和佳奈さん
「誰かが請戸のことを話していかないと、請戸地区であった出来事が忘れ去られてしまうんじゃないかなという危機感があったのが一番大きいです」

大切なおじいちゃんとおばあちゃんを津波で失い、原発事故で避難を強いられた横山さん。
同じような思いを誰にもしてほしくない…。大学を卒業後、震災を伝承する施設で働く道を選びました。
ただ、震災から13年が経ち、悩みが芽生えます。

■横山和佳奈さん
「この子達にはどういう話し方をすれば伝わるんだろう、どうすれば遠い昔にあったことじゃなくて、比較的最近にあったことで、それを今も完全には終わりきっていないことを伝えていけばいいんだろうと悩むところではあります」


「自分より若い世代にどう伝えればよいのか…」
今年の3月11日、横山さんは地元の高校生と一緒にいました。

Q.13年前ってみなさん何歳だったんですか?
「3歳ぐらいですね」

始まったのは…。
■高校生
「先生、津波が来っぞー!」
■横山さん
「消防団員のおじさんがそっと伝えました。何度も地面が揺れる中、僕らは走りました。」

朗読劇の練習です。同級生や教師とともに津波から避難した経験をまとめました。

「町が海にのみこまれた!」

■高校生
「ずっとこの街で暮らしていた人達がいきなりこの光景を見たらどうかなと考えて、自分なりに工夫して」

■横山和佳奈さん
「高校生のみんなが自分たちで演じることによってより自分事に落とし込んで、発信する側にまわってくれるというのはとても素敵なことだと思います」

(朗読劇)
「2011年3月11日、金曜日、福島県浪江町になる請戸小学校にある1日のお話です」

いつもどおりの穏やかな町。

(朗読劇)
「学校がゴゴっと大きな音をたてて揺れ始めました」
「地震だ!地震だ!」
「みんな一斉に机の下にもぐりました」
「先生!うちの子はどこですか?」
「家も心配なんだけど、子どもも…」
「今はとにかく逃げるのが先です。子どもは私たちに任せてください!」

小学校の子どもたちと教師は高台へ避難します。そして津波にのまれた町を見下ろす場面が…

(朗読劇)
「なんだこれは!」
「家がなくなっている、船が流されている」
「町が海に飲み込まれた」
「もう戻れない…」

被災した人の気持ちを考え、演じきった高校生。
そして、つらい過去をあえて伝え続ける横山さん。

■横山和佳奈さん
「3月にやるからこそ、こんな天気だったなとか色々なことを思い出してしまって。喋りながら泣きそうになっちゃったんですけど、みなさんに支えられて講演を終えることができます。今日は本当にありがとうございました」

「被災した者同士の苦悩というか、こっちは13年、あっちは8年経っていると思うので、そういうのを共有できる場があればいいと思います。もし災害が起こってしまったらちゃんと命を守る行動をしてくださいねというのを強く伝えていきたいと思います」

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