水俣病再懇談「課題解決を前進させる覚悟」一方で被害者が求める療養手当改善は難色
水俣病被害者の支援団体、水俣病センター相思社で行われた再懇談の2日目では、はじめに伊藤環境大臣が患者などの位牌が並んだ仏壇に手を合わせました。続いて、5月の懇談で発言中にマイクを切られた水俣病患者連合の松﨑重光副会長(82)とと向き合いました。
■伊藤環境相
「5月の懇談でマイクを切ったことについて深くおわび申し上げます。環境省の力の限り政策を前進させる、その覚悟を強めています」
これに対して松﨑さんは、水俣病と認められないまま去年亡くなった妻の思いを伝え、水俣病問題の解決を訴えました。
■水俣病患者連合 松﨑重光副会長
「互いに話をしてわかり合ってもらえれば、それが一番幸せだと思います。よろしくお願いします」
10日の懇談では、水俣病特別措置法で救済の対象になった人たちに支給される「療養手当」の増額などがテーマになりました。療養手当は最高で月1万7700円が支給されますが、2009年に法律が施行されて以降15年間、額は据え置かれたままです。
被害者側は、物価の高騰などで生活は限界として、引き上げを求めました。
■水俣病患者連合 永野三智さん
「目の前にいる患者が訴えている事なんですよ。それをきちんと受け止めて返してください。療養手当あげてくださいよ、ちゃんと。この人たちに」
これについて伊藤環境相は「重大な問題と認識している」と答えたものの、環境省は「閣議決定で決めたこと」として改善に難色を示しました。
また、水俣病特別措置法で実施するよう定められている住民の健康調査について、国が「2年以内の実施に向けた準備を整えたい」としたことについては、被害者側から「調査方法が信用できない」や「水俣市の病院で勝手にデータが集められている」などと批判が集中しました。環境省は「データを集める際には、被害者への説明をしっかりします」と釈明しました。
再懇談は約6時間にわたりましたが、被害者側の要望に対する国の回答には大きな進展は見られず、不満の声があがりました。
■水俣病患者連合 松﨑重光副会長
「人間誰しも穏便に話し合いがおさまれば一番いいんですけど、行政の方は責任感があるから『はい、いいですよ』という言葉は言えませんよ。自分の立場を守ろうとするのが行政なんですよ」
■伊藤環境相
「団体のみなさんから要望をたくさんいただき、懇談の場でお答えできることはお答えしましたが、具体化に向けて前進できるように部長にも申し上げましたが、事務方に指示してまいります」
11日は熊本県や鹿児島県の離島に船で渡り、島で暮らす被害者の実情などを伊藤環境相が直接聞く予定です。