【後編】シリーズ「山と人をつなぐ」事故防ぐために新たな登山道を整備
【後編】
仙人池ヒュッテから見る剱岳。仙人池の鏡のような水面に、逆さ剱が浮かぶ絶景です。
新しい登山道は、この仙人池ヒュッテが起点となります。
数家キャスター「これまでの登山道は、小屋のすぐ脇を出発するんですが、雲切新道ですね。新しい登山道はこちらです。小屋の裏手からスタートします」
仙人池ヒュッテから南仙人山の山頂を経て、尾根伝いに下って元の雲切新道に接続する2.2キロの新しい登山道です。
今は営業していない仙人温泉小屋までの足場が悪く、この区間だけで去年までの10年間で滑落や転落などで5人が死亡しました。
このため、ここを迂回する新しい登山道を作ってほしいという声が山小屋などから寄せられ、登山道を管理する県が3年前に整備を決断しました。
新しい登山道の開設は実に20年ぶりです。登山道はまだ建設中ですが、所々ですでに完成していて、この日は、設計図通りに仕上がっているかどうかを確認していきました。
数家「元々ここは、全部、木が生い茂っていたんですよね、そこをこんなふうに切り払って、登山道にしたのがよく分かります」
国立公園内のため、伐採する木は1本1本を特定して申請し、国の許可を得なければなりません。
数家「新しく作った登山道なんで、至る所に、まだプレートはないんですが、標識をかけるポストみたいなものもあります」
関係者以外では、初めて入る登山道。現場では、試行錯誤が続いていました。
登山道を整備しているガーズ・クリエイティブ 北川博之社長「油断すれば落ちるよね、もう絶対にロープがいるっていう」石川 仁さん「鎖を張るっていう計画だったんですけど、グズグズで、鎖の効くアンカー入らないよねっていう話で」「それでロープ渡してあるんですね」「なんか設計通りに行かないねという話です」
整備にあたるのは2人から3人の作業員。山小屋に泊まり込んでの仕事です。
北川さん「入った時は、もう先が見えないくらいの要はジャングル状態ですから。何も整備していない状態で物を運ぶっていう作業も出てきますんで、人の力が一番ですよね」
工事は県が発注し、この会社がおよそ2500万円で受注しました。奥山での作業となるため、引き受ける会社はほとんどないということです。
数家「この白い幹の木がある、この空間いいですね。何か新しい登山道の中の魅力の一つを発見したような、そんな感じがします」
ダケカンバが点在する眺望、神秘的な表情を見せていました。新しい登山道は、安全面でも期待されています。
仙人池ヒュッテ 志鷹正博さん「旧道っていうのはね、毎年のように滑落があって、それこそほぼ毎年同じポイントで人が亡くなっている。それで、ずっと(迂回路を)要望してて、やっとできたかという感じで。安全性はもう格段に上がると思います」
「はい、安全確認よし!」「OK、はい、ありがとうございます」
北川さん「やっぱりね、安全第一かな。いかに安全に歩いていただけるかっていうことを念頭に置いて仕事してるような感じですよね。それが僕の仕事かなって思ってますけど」
まだ登山者が入っていないため道が踏み固められておらず、”若い道”という感じがしました。これから歴史を重ねていきます。新しい登山道が完成するのは今年11月末で、実際に通行が始まるのは来年の春からです。