男性の育休取得率 石川でも急上昇 背景には企業の育休環境の整備も
市川 栞 キャスター
「北國新聞論説委員の野口強さんとお伝えします。よろしくお願いします。きょうはどんな話題でしょうか。」
北国新聞論説委員・野口 強 さん
「2023年度の男性の育児休業の取得率が、前の年度から2倍近く増えて30・1%となったことが、先日発表された厚生労働省の調査で分かりました。「イクメン」という言葉が、むしろ古いと言われるほど男性の育児参加が社会に浸透し、さまざまな制度改革が効果を上げたことが、数字が上昇した要因とも言われています。」
「きょうのテーマは、こちら。」
「男性の育児参加初の30%超え」
市川
「政府は、民間企業の男性の育休取得率を「25年までに50%」にする目標を掲げていますよね。」
野口さん
「北陸を含めた日本全体で、23年度は30・1%。22年度が17・1%でしたから2倍近く増えた。石川県でも、23年度の取得率は24・3%で、前の年度の14・3%から大きく上昇しました。育児休業が法律で定められたのは1992年ですが、当時は家事育児は女性の領域という価値観が根強く、1996年は、男性の取得率は0・12%という低さでしたが、近年、急カーブで伸びてきた。」
市川
「政府の目標が達成できそうな伸び率ですね。」
◆取得率が伸びた要因は...
野口さん
「伸びた要因として、育休は原則、生後1年までとれますが、男性の場合、この間、最大で4回に分割できるようになり、家族の生活や仕事のスタイルに応じて、柔軟に設定できるようになった。」
◆企業側は
「また企業側の責任として、対象者へ育休制度をしっかりと伝え、取得の意思を確認することや、従業員1000人以上の企業に対しては、育休の取得率を公表することが義務付けられた。」
市川
「数字の実績を上げなければならない状況になってきたんですね。」
野口さん
「1つ目の、目からウロコです。」
「”選ばれる企業”は育休環境がポイント」
市川
「育休環境が、かなり重要視されるようになっているんですね。」
野口さん
「就職情報を手掛ける民間会社の調査では、子育て中の男女の16・5%が、育児との兼ね合いで、退職や転職せざるを得なかったという結果が出た。人材不足の中、育休環境を整えて「選ばれる企業」になることが、社員確保に不可欠な条件になっているんですね。」
◆男性の育休取得には課題も
市川
「ただ、特に男性の育休については、パタニティ・ハラスメントと呼ばれる課題もありますよね。」
野口さん
「職場内に残る「この忙しい時期に育休か」と言った無言の圧力を振り払うことが課題ですが、企業側では、休職中の仕事をカバーする社員を、手当や人事評価で優遇する動きも出てきました。」
◆今はイクメンならぬイクジイも
「北陸のように、よそと比べておじいさんおばあさんとの距離が近い土地では、助っ人として、いわゆるイクジイ、イクバアの役割も大きい。県内の企業の中には、孫ができた社員に最大で10日間ほどの休暇を取得できる制度を作ったところもあり、かなりの利用者があるそうです。」
市川
「このような育児と両立した柔軟な働き方があれば育休取得の追い風にもなりそうですね。」
野口さん
「2つ目の、目からウロコです。」
「ごろ寝育休はNG負担”分かち愛”を」
「男性の取得率、取得する期間も増えてはいますが、その実態となると、「とるだけ育休」「ごろ寝育休」と言われるように、パートナーの労力の軽減になっているか、心もとない状況もあるようです。」
◆石川の男性の家事の時間は
「石川県は共働き世帯が63・5%で全国平均より多い中、総務省の調査では、子供がいる世帯の家事の時間は、妻が1日あたり4時間10分で、全国平均と同じレベルだったのに対し、夫は36分と全国最下位!なんですよ。去年は、馳知事自ら料理する動画を配信してアピールしました。」
市川
「女性の社会参加を促すには、家庭の負担を分かち合うことが求められますよね。」
野口さん
「男性の育児参加は、その象徴でもありますね。実際に、育休をとって育児に大汗をかいている若いお父さんを目にすると、非常に生き生きとしていて、何とも心が温かくなります。政府は、大手に比べて育休取得が難しいとされる中小企業への支援に乗り出しますし、出生率の低下傾向が続く中、自治体も住み良い地域づくりの視点で、しっかりフォローしていきたいですね。」
市川
「ありがとうございました。野口さんの目からウロコでした。」