被災後初の練習…400年以上続く伝統の”太鼓” 病院でも人工透析治療が再開…「別府温泉」でひと時の“癒し”も
地震により県内では今も3万7000戸あまりで断水が続く中、能登町には7日ある特別なお湯が届きました。
NNN取材団 永井聖志郎記者
「入浴支援に使われるのは、大分の名湯・別府温泉です。お父さんも気持ちよさそうに入っています」
7日から能登町で始まったのは、被災者の入浴支援。道の駅「イカの駅つくモール」の駐車場には「別府温泉」と書かれた移動式のテントが設営されました。
3日前に別府市でくみ上げられた源泉100%のお湯およそ10トンは、専用のタンクでフェリーや大型トラックを使って運ばれました。
別府市 入浴支援チーム 牧宏爾さん
「少しでも力になれることはないかということで、別府らしい温泉を持っていこうと。被災者がほっとする、癒しの時間になればと思う」
7日は76組の被災者が訪れ、久しぶりの湯船につかって、日ごろの疲れを癒やしていました。被災者は…
「気持ちいいですね。別府温泉は気持ちいいです」
―お風呂はいつぶりに?
「3週間ぶり!」
また温泉から上がった人は…
「あったまるわ、上がってからも体がポカポカしている」
他にも…
「1か月に3、4回しか風呂に入れなかった。本当にありがたいです」
この入浴支援は能登町で今月20日まで、珠洲市では22日から2週間行われ、8日以降は県内の和倉温泉のお湯をくみ上げて支援を続けるということです。
一方、七尾市の能登総合病院では7日朝から人工透析の治療を再開しました。
能登総合病院 泉谷省晶人工透析部長
「向こうで入院していた人たちも、慣れない環境での入院生活で、体調崩さないかなど心配だった。1人来てくれたが、元気そうで、全然変わりなかったので、ちょっと安心しました」
透析治療には大量の水が不可欠で、断水の影響でおよそ100人いた患者は別の病院に転院させるなどしていました。再開初日の7日は朝から9人の患者の治療が行われました。
七尾市民 透析治療の患者
「片道3時間で往復6時間ほどかかってましたら、七尾の方の病院にかわって本当にうれしく思います」
別の透析治療の患者
「懐かしい方たちに(囲まれて)古巣にもどってきたなという気持ちですね」
被災地の医療現場も通常通りの医療に近づく一歩を踏み出しています。
7日昼、白山市の音楽スタジオに鳴り響く太鼓の音。
鬼気迫った表情で、輪島市名舟町の伝統芸能「御陣乗太鼓」をたたいていました。
御陣乗太鼓保存会 槌谷博之代表
「夜叉って言いまして、男性の怒りを表している面。名舟町の男はみんなそうだが、生まれたときから太鼓をやるのが宿命」
「御陣乗太鼓」は上杉謙信の軍勢を太鼓で打ち払ったことが由来とされ、名舟町で400年以上受け継がれてきました。
しかし、元日の地震で太鼓や面が保管されていた集会所が被災し、15人ほどいるメンバーはバラバラに避難したため、1か月以上、太鼓を叩くことができませんでした。
そんな中、太鼓などを預かっている浅野太鼓楽器店からスタジオを無償で提供してもらい、7日、被災後初めての練習に臨んだのです。
御陣乗太鼓保存会 北岡周治さん
「三度の飯を食うみたいな感覚で太鼓を叩いていたので、これほどの気持ちになると思わなかった。やっぱりいいな」
保存会は来月16日の北陸新幹線・金沢~敦賀間開業の関連イベントでの披露を目指して練習を続けるということです。
御陣乗太鼓保存会 槌谷博之代表
「私たちの郷土芸能、和太鼓を精一杯叩いて、皆さんを元気づかせていきたい」