全国の仲間から届いた”漆”の道具 輪島塗職人たちが受け取った”希望”
自らも被災しながら仕事ができなくなった仲間たちの再起を支援しようと奮闘する輪島市の男性を取材しました。
先月末、輪島市内の神社の境内に長い行列ができていました。
NNN取材団・伊藤 裕介 記者:
「こちらにずらりと並んでいるのは漆器づくりに使う道具です。使われなくなったものが全国から集められました」
漆器づくりに欠かせないヘラや刷毛。
被災により道具を失った輪島塗職人を対象とした無償配布です。
企画したのは輪島塗職人の桐本滉平さん。
漆職人・桐本滉平さん:
「僕と同じように道具があれば復活できるという人が1人でも増えることは輪島の産業、ひいては能登の復興に繋がると思って」
元日の能登半島を襲った大きな揺れ。
桐本さん:
「現実だと思えませんでした」
朝市通りの近くにあった桐本さんの自宅兼工房は地震直後の大規模火災で全焼しました
桐本さん:
「自分の手ですべてのガレキを撤去してもしまだ使える自分の仕事道具だとかがあれば回収したいと思っています」
現在は朝市から離れた輪島塗職人の父の工房に身を寄せていますが、道具を失って以来、作品づくりはできていません。
活動再開の目処が立たないなか、一筋の希望も…。
桐本さん:
「ハケですね。漆を塗るのに使う…」
桐原さんが手にした道具。
全国の漆職人たちから届けられたものです。
桐本さん:
「本当に大きな勇気をいただいた。まず道具が手元にあるだけで精神は安定するんで」
きっかけを作ったのは以前から親交があった福井県の「越前漆器」の職人、酒井義夫さん。
酒井義夫さん:
「風景風土も含めて輪島に残っているこのにおいみたいなものも一つを担っているのが漆芸だと思うのでそれが(なくなるのは)もったいない」
同じ職人として仲間を救いたいと、酒井さんが用いたのが、SNS。
“使わなくなった道具があれば提供してほしい”と、全国の漆職人に呼び掛けたところ、大きな反響がありました。
作り手の高齢化などで入手困難なものが多い漆塗りの道具が、次々と届きました。
桐本さん:「大変ありがたい。希望を見せていただいた。大きな一歩を踏み出せたと思う」
集まった道具を1人でも多くの職人に使ってもらいたいと、桐本さんは、無償配布を企画。
輪島塗の漆職人、50人が集まりました。
職人:
「すごい嬉しいです」
「昔の古いものも結構あるすごい貴重なんだけどね」
「全部が倒れてしまって何もかも上に乗って陶器も全部割れてもうすべてが使えない状況になってしまったので」
「前向きにやらないと前には進めないのでそのための一歩にもなるのですごく助かります」
桐本さん:
「多くの地元の仲間が同じようにものだけでなく希望を受け取れたらと思って」
「先代に恥じないように未来に文化を繋いでいきたいなという思いが強いです。」
職人たちに希望を与えた仕事道具。
桐本さんたちは今後もSNSなどを通じて道具を募り、集まれば、道具の無償配布を行いたいとしています。