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<一問一答>「福島第一原発事故を一番近くで経験」東北電力・石山次期社長が語る 料金値下げは?原発再稼働は?

2025年2月3日 5:55
<一問一答>「福島第一原発事故を一番近くで経験」東北電力・石山次期社長が語る 料金値下げは?原発再稼働は?

東北電力は4月1日付で石山一弘副社長を社長に昇格する人事を発表した。技術部門出身の樋口社長から、これまで多くの社長が経験してきた「企画部門」出身の石山氏へと経営がバトンタッチされる。
会社人生の半分以上を企画部門で過ごし経営のスペシャリストとされる石山次期社長は、電気事業の競争が激化する中でエリア外への電力販売や地域のグリーンビジネスへ注力するなど収益力向上を目指す。安全確保を前提として原発再稼働を着実に進めるが、家庭向け電気料金の値下げについては財務状況を理由に慎重な考えを示した。震災当時は福島県の相双営業所の所長を務め、東京電力福島第一原発事故を「一番近くで経験した」という石山氏が記者会見で福島復興への思いを語った。

以下、石山氏の記者会見での一問一答。

■次期社長就任にむけての抱負

これからの当社経営の舵取り、いかにしてこの重責を全うしていくか頭の中で考えれば考えるほどたいへん身の引き締まる思い。樋口社長はこの5年間「挑戦」をキーワードに激変する経営環境の中で様々な課題に真正面から向き合い、お客様や地域の皆様に寄り添いながら常に先頭に立ってグループ全体をけん引してきた。女川原発2号機の営業運転再開を果たし、収支や財務状況も改善傾向にある中、こうした歩みをより力強いものとし、お客様や地域の皆様に新しい価値を提供していくことが私の責務と考える。
昨今、経済社会全体を取り巻く環境変化が激しく、先行きの不透明感は一層高まっているし、電気事業においても競争が一層激化するとともに、デジタル化の進展やカーボンニュートラルの潮流加速など、今後とも事業環境は大きく変化することが想定される。こうした激動の時代を勝ち抜いていくため大切なことは、これまでの常識にとらわれない自由な発想と実践。これまでの経験をいかしながら、実行力とスピード感をもって、よりそうネクストプラスの実現に向け失敗を恐れず挑戦していきたい。

■女川原発3号機の再稼働は?

国の第7次エネルギー基本計画が策定され、その中でも原子力、再生可能エネルギーを最大限活用していくという方向性が示されている。当社グループでもカーボンニュートラルチャレンジ2050を掲げている。中間目標として2030年度のCO2排出量について2013年度比で半減させる目標を掲げている。その達成に向けては、原子力について安全確保を大前提に女川原発2号機に続き、東通1号機と女川3号機の再稼働実現に向けて取り組む所存。

■次期社長として目指す東北電力の「新しい価値」とは?

これからの経営展開を考えた時に、いろいろ課題がある。私たちはグループ中長期ビジョンに加えて今後の経営展開としてよりそうネクストプラスを策定し取り組んでいく。我々は電気エネルギーを中心にお客様のニーズに合った付加価値サービスを提供し、スマート社会の実現として快適・安全・安心な暮らしを実感できる社会の実現を目指す。
当社の創立以来の「東北の繁栄無くして当社の発展無し」という基本的な考え方、地域社会との共栄という経営理念、グループスローガンとしてよりそう力というのを掲げている。地域の成長発展に貢献したいという思いの中、東北電力に入社した、その気持ちは今も変わらない。
当社の経営理念やグループスローガンは大切な不変の概念と考える。震災以来停止をしていた女川原発2号機が昨年末ようやく再稼働を果たし営業運転を開始した。原子力発電所を安全最優先に運営していくうえで、信頼される会社であることは必要不可欠な条件。樋口社長の言う再出発という気持ちを私も心の中に持ちながら、お客様や地域社会から信頼され親しまれる会社を目指したい。

■どのように競争力を高めていく?

電力小売りの競争が本格化してきている。燃料、電力市場価格はボラティリティ(価格変動の度合い)が非常に高くなっている状況。課題にどの様に取り組むか大事な経営課題ととらえる。小売り競争が本格化していく中で、特に法人向けの利益率の低下が今後顕在化すると考えている。小売り、卸売りともに電力のエリア外販売を増やすとともに、地域ポテンシャルの高い再生可能エネルギーを有効に活用したグリーンビジネス事業に一層注力することで収益力の向上を目指していきたい。燃料電力市場価格のボラティリティに対しては、先物市場を活用したデリバティブ取引などを行う東北電力エナジートレーディングと、燃料の調達や電力の卸販売を行う当社の発電カンパニーが密接に連携をとることで電力需給の最適化、リスクの最小化を図りたい。

■東京電力福島第一原発事故の経験と教訓について

私は震災前の2010年6月末に福島県の相双営業所長に着任した。翌年の3月に東日本大震災が発生し、東京電力福島第一原発の事故も同時に発生した状況を一番近くで経験した。私の会社人生最大の出来事で、当時を振り返ると福島第一原発から半径20キロ以内には相双営業所の富岡、浪江のサービスセンターがあった。浪江小高の原子力準備本部も当時あり、ここにいた社員は相双営業所に避難した。相双営業所自体も福島第一原発から25キロくらいのところに位置していて、屋内避難区域だった。30キロを超えるエリア、相馬市や新地町については避難の対象になっていなかったが、沿岸部を中心に津波被害もあり、被害にあった設備の復旧と停電の解消も進めなくてはいけない難しい局面の取組を所長として行った。
東京電力福島第一原発の事故の影響が大きく、営業所のある南相馬市の多くの市民の皆様、企業の皆様も避難した中で、食料や燃料の確保、自治体や行政機関との連携、所員の安全確保に苦心した。一緒に営業所で頑張った仲間は今でも戦友と思っている。我々が非常に厳しい状況の中で現地に踏みとどまって災害復旧を継続できたのはいくつかの偶然が重なった結果だった。営業所の建物自体は被害が全くなく、南相馬の中心市街地はライフラインが止まらなかった。放射性物質の拡散汚染状況も非常に低かった。当時の福島支店長は前の任地が女川原発の所長で原子力のスペシャリストが身近にいた。地元自治体との緊密な連携が図れたこと、必要な食糧燃料、宿泊施設も継続的に確保できた。
日ごろからお付き合いのある地域の皆様が私たちに食材や物資の提供もしていただき、多くの方が避難する中宿泊施設の営業を継続していただいた方もいる。今でも感謝している。地域との信頼関係の構築がいかに大事か、当時痛感した。

■家庭向け電気料金の値下げは?

2年赤字が継続し、まずは財務状況をできるだけ早く元の水準に戻すことが最優先の課題。着実に2026年度の財務目標の達成を目指す。利益を着実に積み上げていくなか、今後の収支状況などを踏まえて、電気料金についてどういうことができるか引き続き検討したい。足元の状況を見るとすぐできるかは難しいと認識している。感謝割として2月3月の電気料金はお客様に還元する取り組みもさせていただいている。ご理解いただけるとありがたい。

■これまでの経歴、実績は?

会社人生の半分以上を企画部門で経験している。2018年の4月以降企画部長を拝命し、グループ戦略部門長を含めて経営戦略の策定に携わった。グループ中長期ビジョンのよりそうネクストの策定、料金改定もあった。今後の経営展開の策定にも関与した。2020年4月から東北電力ネットワークが分離し、組織の再構築や新たな社内カンパニー制の導入やコーポレート機能の再編にも取り組んだ。
足元の事業環境、エネルギー関係の制度、政策をふまえてどのように取り組むかが大事。経営の今後の方向性は大きくぶれないが、事業ごとにグループ全体の視点でヒト、モノ、カネを効果的に活用しながら事業ごとに自律的に利益を積み上げ、次の投資、成長に結び付けていけるか。これが本質的な課題と認識している。経営のPDCAサイクルを効果的に回していくには、今後グループ中期計画の体系やマネジメントの在り方を見直していく必要がある。これまでの経験をいかし、実行力とスピードを重視した経営を目指したい。

■出身地でもある福島復興への思いは

福島県は私を育ててくれた故郷。現場第一線の営業所長として東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を経験した。私としては今でも強い愛着を持っている。特に浜通りは復興の途上にある。個人的にできる限りの支援をしていきたい。会社としては経営理念、グループスローガンをふまえながら、東北新潟地域全体の発展に寄与する社会貢献の一環として地元の要望を聞きながら具体的な施策を検討、実施したい。

■女川原発の乾式貯蔵施設建設について

原子力発電所を運営する事業者として地域の皆様から信頼される事業者であることが必要不可欠。丁寧な地域の皆様への説明が大事。情報についてできるだけ早く正確にお伝えしていく。一層地域の皆様への丁寧な情報発信に努めていく。

※樋口社長の「樋」は、一点しんにょう

最終更新日:2025年2月3日 5:55
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