【イマドキの『新入社員研修』は?】「教える側」に大きな変化求められる 新入社員と世代間ギャップも
4月に入社した新社会人は、研修を経てそれぞれの配属先で本格的に仕事を始めている。
働く上での意識が世代間で変わっていくなかで、イマドキの新入社員研修は「教える側」に大きな変化が求められているようだ。
仙台市に本社を置く生活用品大手アイリスオーヤマ。
今年は415人が入社し、新入社員研修が行われている。
新入社員は、4月中旬までビジネスマナーなど基本的な研修を受け、その後分野ごとにより実践的な研修を行う。
アイリスオーヤマ・新入社員研修担当 宍戸海七人さん
「課題、お客様のニーズを引き出すそこをポイントにあまりしゃべりすぎることがないよう意識してやっていきましょう。はいよろしくお願いします」
この日行われたのは、先輩社員を取引先に見立て新入社員が自社の商品を使ったオフィス環境を提案するロールプレイング研修だ。
新入社員
「新しい事業が始まったので、そちらの紹介と御社が抱える課題を引き出していければと思います。よろしくお願いいたします」
最初に、きょうの提案の概要を伝える。
顧客のメリットを説明する。
最後に、次回の打ち合わせ予定を設定する。
研修で習った営業提案の「型」を実践してみる。
アイリスオーヤマ・新入社員研修担当 宍戸海七人さん
「すごいよかったと思います。すごいよかったよね?。お客様に気付きを与えてくれるのがよかった。1個改善点、惜しかったのはお客様が話したあと何かしゃべらなきゃいけないと間を嫌っていて、間をあまり怖がらずにちゃんと話を聞いて」
まず、よかった点をほめる。そのあとに改善点を伝える。
ダメ出しから入らないのが、ポイントだ。
アイリスオーヤマ・新人研修担当 宍戸海七人さん
「今でいう心理的安全性という言葉が引っかかってくると思う。いきなり否定から入ると、どうしても受け入れられない人も多いと思うので、まずは良かったところを探してあげることを意識している」
人材育成を支援する「リクルートマネジメントソリューションズ」の調査では、新人で過去3年以内に自己都合で退職した人の割合は17.5%と2割近くにのぼる。
退職していない新人でも、およそ6割が「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答している。
「入社後1年目の悩み」を聞くと最も多いのが「仕事に正解がなく、どうすればよいかわからないことが多かった」。次いで「仕事のやりがいが感じられない」、「プライベートに割ける時間が少ない」などが並ぶ。
誰しも経験する「新入社員時代」について街の声を聞くとー。
街の人は
「同期が多かったので、周りのみんなと助け合いながらがんばりました」
「新入社員合宿でしたね。集まって2日間くらいずっと缶詰でひたすらデスクワークをさせられた思い出しかない。夜は飲み会。『見て覚えろ』は当たり前でしたね。2度はないよ。2回同じことを教えてくれることはなかった。かなり厳しかった」
「僧侶をやっております。研修というか本山の修行が研修に。昔は厳しいと言われていましたけれど、今はとてもクリーンに。修行自体の厳しさは変わらず、朝起きる時間とかやること自体の厳しさはありますけれどハラスメントはない」
「職人の世界なので見て覚えろはありました。(自分の店の新人は)ある程度わからないことがない状態で、初めて(店に)出せるような形を仕組み化していく、そういう取り組みが必要」
新人育成に詳しい専門家は、「伝わる教え方」のポイントを次のように指摘する。
リクルートマネジメントソリューションズ・主任研究員 桑原正義さん
「意味、納得感がすごく大きなキーワード。なので常に研修のあるワークをやるとか演習をやるとか、これやるとこういう意味につながるよとか、こういうプラス面があるという意味や納得感を伝えていく」
今度は、新入社員を取引先にみたてて先輩が営業提案を行う。
どのような言葉が取引先の決定権を持つ人に響くのか、契約がとれるようになるまで細かくアドバイスが行われる。
アイリスオーヤマ・先輩社員(5年目)
「社長の決裁をとれるか?という話に持っていっています。今のご提案を差し上げると、お客さんは社長や総務の方だけど電気代をより詳しく知っている方なのでメリットを感じていただいて90%くらいの確率で受注できる」
研修を丁寧に行うのは、企業の求めるある力を養う目的もある。
リクルートマネジメントソリューションズ・主任研究員 桑原正義さん
「企業のキーワードとして自律的な力。昨今やはり正解のない仕事が増えてきたり、職場の中で余裕がなくて、新入社員も自ら周囲に働きかけていく自律的な行動。自分から動いていく」
納得感のある研修で、自分の力で判断して行動できる人材を育てていく。
新入社員の感想はー。
新入社員
「実際に商談ロールプレイングとか先輩のロールプレイングを見せていただけているので、面白く学ぶことができています」
「難しい点は多々あるけれど、教えていただく指導の内容がわかりやすくて明確になっているので、大きく成長できたと感じています」
一方、教育係の先輩社員は30代前後だが、新入社員との世代間ギャップを感じると言う。
アイリスオーヤマ・新入社員研修担当 宍戸海七人さん
「背中で教えるというのは、通じない世代になっている。今の人は、全体像を先につかみたいというニーズが多い印象。特に去年から感じている。全体像を先に出して、今やっている業務がこのあたりというのを話している」
イマドキの新入社員研修は、「教える側」に大きな変化が求められている。
リクルートマネジメントソリューションズ・主任研究員 桑原正義さん
「自分たちが受けてきた育てられ方や指導をしても、思うような反応が得られない。非常に難しい。今はコンプライアンス、パワーハラスメントが社会的に敏感になっている。マネージャーの悩みは、極端に言うと何していいかわからない。何もできないと言う方もいる」
新入社員と企業が良い関係を築くため、重要視されるのが「個人の尊重」。
リクルートマネジメントソリューションズ・主任研究員 桑原正義さん
「今の新入社員は、一人一人の個を尊重されて見てもらいながら育ってきている。これは社会としてすごく前に進んでいる状況。そこがわかると新入社員も相手に対してリスペクトしていく。上司や周りの方にリスペクトして、いい関係が始まっていく」