保育所に贈られた1冊の絵本に込められた想い「未来の命を守りたい」
3月、多賀城市の保育所に1冊の絵本がプレゼントされた。
「ガタガタ、グラグラただいま大きな地震が発生しました。海や川には近づかないでください」
物語の主人公の男の子は地震の直後、2人の女の子に出会う。
「あっ僕の帽子。海くんは帽子を追いかけようと2人の手を放しました。すると2人が海くんの服を強く引いて放しません。坂の上に行こうと言っているようです。」
絵本を贈ったのは石巻市の佐藤美香さん。東日本大震災で娘を亡くした。
花を手向け祈りを捧げる姿があった。
幼稚園の年長だった長女の愛梨ちゃん。人を笑わせるのが好きな明るい女の子だった。
愛梨ちゃん「楽しかったよ」
佐藤美香さん
「いつも私、娘に何かあったらママが絶対助けてあげるからって…言っていた。だから約束していたのに約束果せなくてごめんね。助けてあげられなくてごめんね。」
愛梨ちゃんが通っていた幼稚園のバス。
地震の後、愛梨ちゃんを乗せた幼稚園バスは大津波警報が出されている中、高台からなぜか海沿いへ向かった。
バスは津波に飲まれ、その後、炎に…5人の園児が命を落とした。
悲しみを繰り返してはいけない。
美香さんは震災の語り部となりあの日の教訓を伝え続けている。
佐藤美香さん
「まだまだくすぶっている場所がたくさんありました。それでも私たちはくすぶっていようが何しようが我が子を探し当てたい」
去年の夏、美香さんの話を聞きに訪れたのは幼児教育などを学ぶ学生たち。
学生「本当に目と鼻の先まで行けば助かった命があった。すごく驚きました。」
美香さんの体験を絵本にするにあたって協力してくれたのが仙台白百合女子大学の学生たちだった。
学生(朗読)
「あいり・はるね?地震の日、その2人が僕を高台まで連れて行ってくれたんだ。あいりちゃん。はるねちゃん。海を守ってくれてありがとう」
佐藤美香さん
「震災を知らない子どもたちがどんどん増えてきている中で今の大学生は私の娘と同世代。なので同世代の学生と絵本を作るのに意味があるような気がして」
13年前のあの日、救えたはずの命があったことを知って欲しい。
美香さんは幼い頃から学ぶことが未来の命を守ることにつながると考えている。
佐藤美香さん
「命が助かるような行動を取れるように少しでもこの絵本で学んでもらえればと思います」
今後、絵本は幼稚園や保育園、小学校、図書館などで防災教育に活用されるということ。