障害者の能力は会社の力「可能性を信じてあげて」進む “障害者雇用” 新たなモデルに《長崎》
「障害がある人たちの雇用」についてです。
今年4月から、民間企業の障害者雇用率が引き上げられ2.5%以上とすることが義務付けられました。
40人以上の企業であれば、1人以上の雇用が必要です。
ただ、達成できている企業は全国で 約半数。県内でも、約62%にとどまっています。
こうした中高い雇用率を実現しているファストフードの運営会社があります。
できることを伸ばし、誰もが自分らしく働けるように。取り組みを取材しました。
(スタッフ)
「裕次郎さん。ナゲットを10ピース、揚げてもらっていいですか」
城山 裕次郎さん 44歳。知的障害がありますが、開店前の準備や調理まで 1人でこなします。
(マクドナルド長崎夢彩都店 谷田 寿美子マネージャー)
「クルーとのコミュニケーションをうまく取りながら、お店を助けようという気持ちを持ってやってくれている」
(城山 裕次郎さん)
「もっともっと、お客様に笑顔が出せるように頑張りたい」
長崎市や時津町で、マクドナルド12店舗を経営する「エス・ケイ・フーズ」。
障害がある16人が働いています。
積極的な雇用を始めたのは、相談役の中村 こずえさん 67歳です。
(エス・ケイ・フーズ 中村 こずえ 相談役)
「障害っていっても特性なんだよ、全然、特別な事じゃないというスタッフの意識が変わってきたのが一番大きいんじゃないかと思う」
本社では、年に数回従業員を集めたお茶会を開催。ここでは…。
(接客練習)
「138番のお客様、お待たせしました。ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ」
みんなが成長している様子を見るのが、何よりの楽しみです。
従業員同士の交流も深めようと、ボーリングやカラオケの大会も開く中村さん。
障害者雇用を進めるきっかけは、城山さんとの出会いでした。
▼可能性を見出す 彼らができることを生かす職場づくり
(エス・ケイ・フーズ 中村 伸一郎 社長)
「マック歴、何年ですか?」
(城山 裕次郎さん)
「数えていない」
(エス・ケイ・フーズ 中村 こずえ 相談役)
「2001年からだから、マクドナルド人生23年です。みんな長く働いてくれてありがとうね」
2人の出会いは2001年。
入ったばかりの城山さんは、掃除などの簡単な作業だけを担当していました。
しかし、その6年後。
城山さんは、調理なども1人で行いほかの従業員と同じように 働いていました。
(エス・ケイ・フーズ 中村 こずえ 相談役)
「掃除と洗い物と、ごみ出しくらいしかできなかった裕次郎君が、フライヤーで仕事したり、ハンバーガーを作ったりしていた。それはすごく衝撃だった。人生を変えてくれた存在」
中村さんの長男で、社長として経営にあたる伸一郎さん 40歳も、障害者雇用の必要性を感じています。
(エス・ケイ・フーズ 中村 伸一郎 社長)
「彼らができることとできないことは明確にあるので、会社は本当に人材が必要であれば、それに合わせてあげることだと思う。彼らの力を借りながら、より会社を発展させていける企業をどんどん増やしたい」
指導にあたるのは、現場の店長やスタッフたちです。
日々向き合いながら、みんなの特性や長所をいかすよう努めています。
(エス・ケイ・フーズ 中村 伸一郎 社長)
「浪の平店の稔くんは思春期で話をしてくれないんだけど。どういうふうに僕は理解したらいい?」
(波の平店 店長)
「(今は)波があるので。稔くんがトレーナーに上がった。ネパール人の子をトレーニングして。言葉が通じないけれど、してくれていて」
(エス・ケイ・フーズ 中村 伸一郎 社長)
「どうやってコミュニケーション取るの」
(波の平店 店長)
「ジェスチャーとか」
(エス・ケイ・フーズ 中村 こずえ 相談役)
「可能性を信じてあげるっていうのは、店舗の人たちの大事なところ」
▼時には優しく 時には厳しく 従業員は家族
毎月開く会議では、普段の様子を共有し、課題については根気強く解決するように取り組んでいます。
従業員とは半年に1度 個別面談も。今後 半年間の目標を話し合います。
(エス・ケイ・フーズ 中村 こずえ 相談役)
「前回の目標は?」
(城山 裕次郎さん)
「ポテトのやつ」
(エス・ケイ・フーズ 中村 こずえ 相談役)
「今年12月までには、エキスパートを取れるように。また谷田さんにトレーニングしてって、裕次郎からもお願いしないといけない。待ってるばっかりじゃだめよ」
アドバイスをしたり、悩みを聞いたり。中村さんにとっては、家族のような存在。
思いを受け止めながら、時には優しく、時には厳しく接します。
(エス・ケイ・フーズ 中村 こずえ 相談役)
「七虹ちゃんはカウンターもできるもんね」
木下 七虹さん18歳は、この春 高校を卒業し、時津町の店に入りました。
働き始めて まもなく3か月、今では。
(木下 七虹さん)
「グリルをしたり、ハンバーガーを包んだり楽しいなって。できれば長く続けたい。ここの職場は環境が良くて楽しいので、ずっと続けていきたいと思う」
▼住居も生活面もサポート 障害がある従業員の店舗を
そして会社は来年、新たな取り組みをスタートしようとしています。
障害がある従業員を1つの店舗に集めた店づくり。
新たなモデルにする考えです。
店の近くに全員の住まいも準備し、生活面もサポートする計画です。
(エス・ケイ・フーズ 中村 伸一郎 社長)
「将来的には自分で独立して、自分で生活して、自分で働く選択を取れるようにサポートしたい。私が先頭を切って、今後も障害者雇用を促進したい」1人の従業員との出会いから始まった障害者の雇用。
中村さんは、社内だけでなく社会全体に広がるよう願っています。
(エス・ケイ・フーズ 中村 こずえ 相談役)
「日本中が障害者雇用という名前を付けなくても、一般の人を雇用するみたいに普通に雇用できる。それが当たり前になっている世界が、そういう時が来たらいい」