長崎くんち【八幡町】「弓矢八幡祝い船」と対照的 滑らかな所作で魅了 詩吟に合わせ舞う「剣舞」《長崎》
今年の「長崎くんち」、八幡町は「弓矢八幡祝い船」を奉納。
豪快な船回しや、ハトを飛ばす演出でも観客を沸かせます。
祝い船と共に奉納する「剣舞」にも着目。
子どもたちや女性メンバーが勇ましく、美しい奉納を目指し、技を磨いています。
(根曳衆)
「ヨイサ、ヨイサ」
勇ましい掛け声にあわせ、ダイナミックに船が回ります。
八幡町が奉納する「弓矢八幡祝い船」。20人の根曳が、荒々しい波を表現します。
詩吟に合わせて披露するのが…。
(剣士たち)
「エーイッ」
一糸乱れぬ「剣舞」です。
祝い船の曳き回しとは対照的に、滑らかな所作が特徴で10年ぶりの奉納に臨みます。
奉納踊は、町内にある「宮地嶽八幡神社」の起源に由来。
江戸時代に、京都の山伏が八幡宮をまつったのが始まりだそうです。
「山伏道中・剣舞・弓矢八幡祝い船」は、荒波を船で渡り長崎に到着した山伏たちが、諏訪神社に「奉とう文」を奉納する様子を表しています。
7月、諏訪神社の踊馬場での初稽古では『少年剣舞』に小学生6人が出演。
一方『成年剣舞』には、中学生から32歳までの10人が全員、くんちは初めてです。
(剣舞師匠 三木 勝風さん)
「首に集中して」
「剣舞」は、1915年に初めて登場。
一時 中断しましたが、1993年に『少年剣舞』が復活し、町の人にもより多く参加してもらおうと2000年から『成年剣舞』が加わりました。
(少年剣士たち)
「こんにちは」
8月。この日は八坂神社での稽古です。
剣舞は、長崎市内で教室を開く 勝風神刀流 剣武術の三木勝風さんが指導しています。
(剣舞師匠 三木 勝風さん)
「ここは八坂。(踊り馬場に)傾斜が付いているから分かっていると思うが、若干少し後ろに傾いている分、どうしても下半身のふらつぎが入ってしまう。しっかり少し前向きに踏ん張るように」
伊良林小学校2年生の菅 加緒里さんは、今回 初めて少年剣士に。
(少年剣士 菅 加緒里さん)
「最初はドキドキしたが、どんどんやってきたら楽しくなってきたし、できるようになってきたので、うれしい」
加緒里さんの家族は “くんち一家”。
父は根曳。兄は囃子で、そろって八幡町の奉納に臨みます。
稽古を見守る祖父の菅 裕昭さん68歳は、前回の長采で「弓矢八幡祝い船」が初めて奉納された1985年から、欠かさず参加してきました。
(祖父 裕昭さん)
「(加緒里さんは)覚えがよくて、結構 決めポーズも頑張っている」
(少年剣士 菅 加緒里さん)
「うれしいです」
(祖父 裕昭さん)
「16人がいっぺんに揃って、勇ましい姿を見てほしい」
剣舞の演目は二つ。
「扇の的」とは、平安時代の源平合戦で 海上の小舟に掲げられた扇を、那須与一が弓矢で射抜く場面を表現します。
もう一つは。
(少年剣士たち)
「八幡公、エーィ」
源頼朝の祖先で、武勇の誉れ高い源 八幡太郎義家にまつわる詩吟。
共に、宮地嶽八幡神社にまつられている戦の神様「弓矢八幡」にも通じる歴史の一幕です。
(指導担当 細田 輝風さん)
「しっかり前見る。前見る」
21歳の細田 輝風さんは、少年剣舞の指導担当です。全体を取り仕切る三木さんの弟子で、剣舞歴は17年。
八幡町の「剣舞」に憧れ、4歳で弟子入り。前回10年前のくんちは、剣士の年齢制限で出られず低学年を指導しました。
今回も裏方として、6人の少年剣士を指導しています。
(指導担当 細田 輝風さん)
「初めてする人ばかりなので、どうしたら格好よく皆さんに見せることができるか、感動を与えらるような剣舞ができるよう指導している」
三木さんも愛弟子の細田さんに、全幅の信頼を寄せています。
(剣舞師匠 三木 勝風さん)
「(輝風が)いてくれるおかげで、私も全体や大人の方に集中することができたので、今回の出来に関しては(輝風の)力が大きい」
剣舞で重要なのは、一糸乱れぬ日本刀と扇の動き。何度も、何度も、息を合わせて振り付けを繰り返します。
弓矢八幡祝い船の「動」に対し、「静」を体現する剣舞。
(加緒里さんの祖父 裕昭さん)
「他の町内にない演し物で、八幡町伝統の踊りなので、勇ましい刀を使った踊りを見せたい」
(少年剣士 菅 加緒里さん)
「最後の手を上げてピーンと伸ばすところを頑張ってのいる。全部頑張って、褒められたい」
研ぎ澄まされた気迫で、観客を魅了します。