投票率は前回よりアップ対馬市長選 核ごみ処分場反対の現職が圧勝 住民投票求める動きも《長崎》
任期満了に伴う対馬市長選挙は3日、投開票が行われ、現職の比田勝 尚喜氏が3回目の当選を果たしました。
争点となったのは、核ごみの最終処分場誘致の是非。市民は「反対」を訴えた現職を支持しました。
(選挙事務所)
「バンザイ」
3回目の当選を果たした現職の比田勝 尚喜氏 69歳。支援者らとともに喜びを分かち合いました。
(比田勝 尚喜氏)
「美しい対馬を皆様とともに守っていきたいと思っている」
現職と新人の一騎打ちとなった今回の選挙。
主な争点となったのは、原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場誘致の是非です。
対馬市議会は去年9月、処分場の選定に向けた調査について、「推進」の請願を採択。
しかし・・・
(比田勝 尚喜氏)
「特定放射性廃棄物最終処分場の文献調査を受け入れないとの判断に至った」
比田勝氏は、風評被害や市民の分断への懸念を示し、受け入れ反対を表明しました。
現職の考えに異議を唱えたのが新人で、大阪の飲食店経営荒巻 靖彦氏 59歳。
即効性ある経済政策として、最終処分場の誘致を掲げました。
(荒巻 靖彦氏)
「私はこの対馬にNUMOを誘致して、豊かな財源を引っ張ってくる」
荒巻氏を支援する推進派の市議も。
(入江 有紀 市議)
「このままの状態では、対馬市はだめだからということで、荒巻さんにお願いして。対馬を助けてくださいということで。もし負けたらそれで(文献調査の話は)立ち消えになる」
比田勝氏は、多数の企業や団体のほか、自民党と公明党から推薦を受け市内をくまなく巡りました。
(比田勝 尚喜氏)
「対馬市で育つ子どもたちを考えたときに、どうあった方がいいのか。さんざん悩みぬいたが、最終的にはここ対馬には受け入れない」
そして、3日。
市民が選んだのは、処分場誘致「反対」を訴えた比田勝市政の継続でした。
獲得したのは1万3000票あまり。全体の9割近い票を集める「圧勝」でした。
(比田勝 尚喜氏)
「豊かな島づくりを目指して、対馬の観光、一次産業を活用した海業の振興など、今後の産業活性化対策にしていきたい」
(荒巻 靖彦氏)
「NUMOは、対馬ではもう無理だということがこれで100%わかった。もし今回敗れても、4年後必ず日本はこの対馬に誘致できると踏んでやったが、この得票数ではいけない」
投票率は64.5%で、4年前の前回を1.27ポイント上回りました。
対馬市長選挙を取材した梅田記者の報告です。
今回の市長選では、核ごみの最終処分場誘致に再び「反対」の民意が示される形となりました。
今回の結果は、誘致推進派の中でも受け止めが割れています。
「今回で誘致の話はおしまい」と文献調査を断念する声があがる一方、一部の市議は「市長選は人を選ぶ選挙なので、今回の結果とは切り離して住民投票で賛否を問うべき」と話しています。取材を進める中「普段は投票に行かないが、今回は核ごみを持ってこられたら嫌なので投票に来た」という若者の声が印象的でした。
これは数字にも表れていて、投票率は64.5%と4年前の前回を1.27ポイント上回りました。
また、敗れた荒巻氏は処分場の誘致により人口や仕事が増えると訴えていたわけですが、今回、取材をしていて人口減少という島の課題が深刻だと感じました。
投票率は上がっているにも関わらず、有効票数は700票近く減っていてこの4年でも人口減少が進んでいることが分かります。
今回の選挙について対馬市の市民にも話を聞きました。
(記者)
「今回の市長選の盛り上がりはどう感じた?」
(60代女性)
「いまいちじゃなかったですか。初めから対馬の人を応援したいというだけのこと」
(80代男性)
「(人口減少は)感じる。空き家が多い。子どもが少なくなっているから末期的症状。子供が増えないとだめ」
核のごみの最終処分場の誘致には頼らない方向にかじを切った比田勝市長。
ただ、人口減少が進む島で、今後も、議論が続く可能性を残しています。