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【特集】気候変動とりんご栽培 弘前大学が続ける温暖化想定の栽培試験

2024年10月8日 18:28
【特集】気候変動とりんご栽培 弘前大学が続ける温暖化想定の栽培試験

特集は気候変動とりんご栽培です。
青森地方気象台のデータによると県内各地で気温の上昇傾向が見られ、温暖化対策が進まない場合21世紀末の県の平均気温はおよそ4.7℃上昇すると予測されています。
弘前大学は気温が今より3℃高くなったら県産りんごはどのように変化するのか4年間研究しました。試験結果から分かるりんご栽培の温暖化への備えとは?

★弘前大学農学生命科学部 伊藤大雄教授
「果樹って稲や麦以上に気候変動に弱い作物です(りんごは)しかも1回植えると30年もってしまう品種です 今ある品種を植えようと思ったら30年後には別の気候になっているかもしれないです だから今から30年後のことを考えてやらないといけないので」

気候変動とりんごについて研究している弘前大学の伊藤大雄教授です。伊藤教授の研究グループは藤崎町にある大学の農場で2019年から4年間3つのビニールハウスを使って今より気温が高くなったらりんごはどのように変化するか実験をしました。

A棟は今の気温のままです。B棟は外の気温より3℃高くしています。C棟は気温は3℃高くかつ二酸化炭素の濃度も高くしました。二酸化炭素の増加が温暖化の原因と考えられているためです。二酸化炭素は植物がよく育つ光合成の材料でもあります。

実験は「ふじ」と「つがる」「紅の夢」の3つの品種で行われましたが今回は主力品種の「ふじ」を中心にお伝えします。

まず、ふじの開花と収穫の時期の変化です。開花は気温を3℃高くした高温のB棟では11日から12日早く、C棟の高温かつ高二酸化炭素では高温だけよりわずかに遅くなりました。
一方収穫は高温だと今より7日遅くなり、高温かつ高二酸化炭素では高温よりわずかに早くなりました。高温だと木に成っている期間が今より19日間長くなります。

収穫量はB棟の気温だけを高くした場合減る傾向にあり4年間で16%減収しました。一方C棟の気温と二酸化炭素の両方を高くした場合ほとんど増減しません。伊藤教授は高温だけだと花芽不足になり減収しますが二酸化炭素があると光合成が盛んになるので減るのを抑えられているといいます。

★伊藤大雄教授
「高温だと花が咲かないんです ということは花が咲かないから実が確保できないんです 高温だけだったら減収するけど高温と高CO2はセットになれば 高CO2なのに増収はほとんどないぐらいのことだと思います」

高温がりんごの品質に及ぼす影響です。甘さを表す「糖度」は今とほとんど変わりません。ただ酸っぱさを表す「酸含有量」と実の硬さを示す「硬度」は高温になると低下する傾向にあります。

★伊藤大雄教授
「酸含有量や糖度は収穫時期の変更によってもある程度変えることができます どうしても糖度を高くしたければ収穫時期を遅らせれば少し高くなります逆に酸含有量や硬度を上げようと思えば収穫時期を早く未熟なうちは酸っぱくて硬い」

また伊藤教授が着目しているのは蜜入り指数の実験結果です。

★伊藤大雄教授
「高温の地域では蜜が入らないと言われていて高温棟ではやっぱり蜜が入りませんでした ところが高温・高CO2にするとけっこう入るんです これは不思議でした 有意差はないですけど複数年で同じ傾向が現れているのでなぜか分からないですけど今注目しているところです」

気温が高いとりんごの赤い色を作っているアントシアニンが蓄積しないため色づきが悪くなります。また気温が34℃を超えると果実の表面が褐変するリスクが高くなるといいます。それでも伊藤教授は青森県はりんごの産地として持続可能だとみています。

★伊藤大雄教授
「りんごの品質は変わってしまうと思いますし栽培上不利になるようなことも出てきますけど消費者が弘前のりんご受け入れてくれれば産地として続くと思います」

温暖化により品質の変化が避けられないと予測される県産りんご。今後日本一の産地を持続させるためには品種改良や効果的な日焼け対策が必要になると見込まれます。

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