震災を知らない子どもたちと生後2か月の娘を抱いて守った母 命を守る備えを伝える“防災教育”で次の世代へ #知り続ける
未曾有の大災害から14年、震災を経験していない世代が増えるなか、教訓を伝えることはますます重要になっています。
シリーズでお伝えしてきた震災特集 命を守るための対策、最終回のきょうは震災を知らない子どもたちへ「次世代につなぐ防災教育」です。
馬淵川が近く、海からおよそ4キロの場所にある八戸市立第二中学校です。
★青森放送 猪股南アナウンサー
「津波避難ビルに指定されている八戸市の第二中学校で防災教室が開かれています。ここに集まっている生徒は2011年前後に生まれた震災を知らない世代。それだけに震災の記憶と教訓を伝えていくことが大切です」
この学校は津波の浸水想定区域に入っています。
学期ごとに避難訓練や防災教室を開くなど「防災教育」に力を入れています。
この日の防災教室は中学1、2年生およそ200人が参加。
避難するときに道の段差を乗り越える車いすの使い方を学びました。
★八戸工業大学 安部信行准教授
「(車いすの後部に)出っ張ってる所があるのでティッピングレバーを踏んでやります 踏んでやると上にあがる」
お互い助け合う「共助」の防災教育を受けた生徒は…。
★八戸二中の生徒(男子)
「地震の時だけじゃなく日頃の生活から周りを見て行動してサポートできたら良い」
防災の授業に熱心に取り組む1人が、中学2年生の前田悠羽さんです。
学校の授業で津波の恐ろしさを知り、防災を学ぶ大切さを感じています。
★八戸市立第二中学校2年 前田悠羽さん
「小学校から防災の授業で(震災の写真を)見てきました」
「津波が思ったよりも高くて建物の上に船がのっているのがとてもびっくりして印象に残っています」
震災が起きた14年前、前田さんは生後2か月でした。
母親の恵里奈さんはあの日必死に娘を抱いて守りました。
★母・恵里奈さん
「まずはびっくりしたのと同時に小さいこの子を守らなければいけないと」
「まずは抱っこして頭を守ったりまわりに落ちてくる物がないか確認して」
前田さんに震災の記憶はありません。
それでも防災の授業を通して家族と一緒に命を守る取り組みを実践しています。
★第二中学校2年 前田悠羽さん
「ちゃんと避難場所を決めておいた方がよいとよく言われてきたので、家でも親と話し合って避難場所を決めています」
八戸市は震災の翌年度から新しい防災教育の取り組みを始めました。
これまで防災ノートの作成や市内の小中学校に200回以上防災士を派遣するなどして、子どもたちに震災の教訓を伝えています。
★八戸市教育委員会 竹井亮主任指導主事
「今の小学生中学生たちは震災を経験したことのない知らない世代になりますので、その子たちがみずからの命を守る行動を身につけられるように防災教育を実施したり、防災ノートを活用して実践的な力が身につくようにしていきたい」
むつ市では防災教育から発展した取り組みが行われました。
下北の県立高校5校の高校生たちが企画する初の防災イベントです。
イベントでは家族連れが防災テントや簡易ベッドなどを体験しました。
★子ども
「うちのベッドと同じ感じでふかふかして安心して寝られます」
★高校生
「あなたは海にいます小さな地震が起きました さぁどうする?」
防災ゲームは災害の状況に応じてとるべき行動を考えます。
★子ども
「みんなが心配だからみんなを呼んで安全なところへみんなで逃げます」
自衛隊の協力を得て炊き出しの体験も行われました。
震災の記憶は高校生たちもほとんどありませんが、学んできた災害への備えを地域の人たちに伝えます。
★訪れた人
「自分たちももっと防災に意識を持たなきゃだめだなと改めて感じています」
★大湊高校2年 望木陽向さん
「いまの年下の子たちって大きい災害を経験していないので、その子たちに防災の知識とか『過去にこういうことがあったんだよ』と伝えて防災意識を高めてもらいたいです」
防災教育の専門家は…。
★弘前大学教育学部 小岩直人教授
「防災教育を受けている子どもたちに話を聞いて、いま(防災は)こういう風に考えているんだと子どもから教えてもらうこともあって良い」
あの日からきょうで14年。
震災を経験していない世代も、いざという時に自分の命を守る行動が取れるように。
防災教育を続け、広げていくことが未来への備えにつながります。