自転車で道路横断中の高校生が大型トラックに700m引きずられ死亡…「トラックの左折時」に潜む危険
2週間前、自転車で登校中の高校生が大型トラックにはねられ、その後亡くなりました。
事故はどんな場所でどのように起きたのか。現場を取材しました。
前のカゴが大きくゆがみ、タイヤが半分に折れ曲がった自転車。通学中の高校生が乗っていた自転車です。
2週間前の1月25日午前8時すぎ、西条市吉田の県道で信号機のある横断歩道を自転車で渡っていた16歳の女子高校生が、右からやってきた大型トラックにはねられました。
杉本記者:
「高校生は、こちらの横断歩道で 左折してきた大型トラックにはねられ、そのままあちらへ700mほどひきずられました」
運転手は高校生をはねたことに気付かず、そのままトラックを走らせ、およそ700m離れたコンビニの駐車場まで高校生と自転車をひきずりました。
高校生は胸や腰などを強く打ち、ドクターヘリで松山市内の病院に救急搬送されましたが、その後亡くなりました。
現場に手を合わせに来た男性:
「自分も車運転するので、気を付けて運転せないかんなと いう気持ちがしますよね、どうしても。かわいそうに…」
現場近くの運送会社関係者:
「あってはならんことやなと思っております。運転手さんみんなみんなが、1人1人が考えて気を付けるようにしないといけないと思います」
事業用トラック「左折時」の重大事故 8割以上が対・自転車
60歳の運転手は過失運転致傷の疑いで逮捕され、警察の調べに対し、「縁石にのりあげたと思った。運転中に相手にケガをさせたことに間違いはない」」と話したということです。
こちらは、事故が発生した同じ時刻の現場の様子ですが、交差点を通過する車両の通行量は多いものの決して見通しが悪い、とは言えない場所です。
全日本トラック協会によると、おととし事業用のトラックが交差点で人や歩行者をはね、死亡または重傷となった事故のうち、「左折時」の8割以上が対・自転車でした。
トラックの左折中の事故について交通事故の専門家に話を聞きました。
交通事故調査解析事務所 熊谷宗徳代表:
「『縁石に乗り上げたと思った』 と言ってるのであれば、なぜそこで確認しなかったのか。それを確認しないまま走ってしまったので、振動も弱く音も聞こえづらくて、そのまま走って行ってしまった可能性が考えられる」
千葉県警の元交通捜査官で交通事故鑑定人の熊谷さんです。左折中のトラックと自転車の事故が多い理由は。
熊谷さん:
「大型トラックは特に左直近の死角が大きいということですね」
トラック左折時に注意すべき「死角」と「内輪差」
大型トラックのドライバーから周りの様子はどう見えているのか。
東温市の物流会社に協力してもらいました。
レンゴーロジスティクス 東温営業所 村上顕彰さん:
「下の方は見えにくいんですよね。この辺りが特に見えにくいですね。このミラーで、ある程度見やすいようにはセットしてます」
歩行者は助手席のすぐそば、普通乗用車なら比較的見えやすい位置に立っていますが、運転席から見ると…?
杉本記者:
「立っていたら(上下)両方のミラーに写って比較的分かるんですけど、しゃがむと上のミラーには完全に見えなくなりましたね」
トラックの左側についている大きな3つのミラーのうち、助手席のすぐ下あたりをカバーする一番下の「サイドアンダーミラー」での確認が重要であることが分かります。
大型トラックの特徴、もうひとつが、カーブを曲がる時に後輪が前輪よりも内側を通る「内輪差」。
大型トラックの内輪差はおよそ2mと普通車の倍近くあり、後輪部分が歩行者や自転車に接触してしまう可能性が高いのです。
特に、速度が出やすい自転車は巻き込まれる可能性が高くなります。
歩行者・自転車は「トラックから見えていないかも…」という意識を
事故を防ぐためにできること。まず、ドライバーは。
熊谷さん:
「交差点の歩行者や自転車が来てないか、目の前だけじゃなくて、こっちに進行してきていないかという確認作業がまず第一」
そして、歩行者や自転車は。
「特に大型車が左折をしてこようとか、右折をしてこようという時は、見えてない可能性がある。自分は見えてないかもしれないと、ちょっとそこで立ちどまる。自転車も減速したり停止したり、自分なりの事故防止も必要なのかなと思います」