【“岡ちゃん”のエール全文掲載】「FC今治高校 里山校」入学式 岡田武史学園長が一期生たちに送った言葉
34名の一期生のみなさん、ようこそFCI高等学校 里山校へ。
さっきからずっと、おっちゃんは泣きそうになりました。本当に感動しちゃって。直に会った子もいるし、ウェブで会った子もいるけど、こうやってみんなが揃って、話を聞いていると、もう、おっちゃんは涙が出そうになっています。
これからはもう、学園長じゃなくて“岡ちゃん”でいいんでね。岡ちゃんって呼んでもらえばいいんですけど。 本当にこの学校やってよかったなと、つくづく思いました。今日、みんなを見て。
我々の学校というのは、学校法人、今治明徳学園という117年も続いているすごい歴史のある学校なんだけど、今変わろうとしています。その先頭を走っているのが、君たち34名です。
社会に出る準備である教育。その社会が変わってきて、教育が変わらなきゃいけないと思っています。特に、何で変わらなきゃいけないか。社会がよく、環境問題をみんなに何度も発信してきたと思うけど、大きく変わってきました。
これからロールモデルがいない、過去はこうだったとか、そういうことが通用しない時代が来ます。その時、先生どうしたらいいんですかとか、お父さんお母さんどうしたらいいんですか、政府とか行政機関に、どうしたらいいんですか?と聞いても、誰もが分からない時代が来ます。
4月に種を植えて、ここで水抜きしたらこうやって収穫できる、それが分からない。今や砂漠でも洪水が起こっています。とんでもない時代が来るかもしれない。その時、誰に聞いても分からない。過去のデータを調べても分からない。その時は自分の足で進んでいくしかありません。
それと共にAIが発達してきたら、仕事の半分がなくなると言われています。今まで言われたことをきちっと正確にこなせばよかった。でもそれはAIでもよくやります。今までの教育は失敗しないことを教えてきました。しかし、そんなのだったらAIが全部やってくれます。そうじゃなくて、これからの時代、みんながさっきも言ってくれた“失敗しながら”学んでいかなきゃいけない。
まず、この学校の中心となるのは「主体性」。 主体性というのは、自分が何をしたいか、どうやりたいか、どう思っているか、それをしっかり持つこと。
うちの先生は答えをみんなに与えません。3つの質問をしてくださいとお願いしています。「どうしたの?それで君はどうしたいの?先生に手伝えることある?」なんか冷たいように思うかもしれないけど、みんなが結論を出します。
そして、みんなが言ってくれた「多様性」。人はみんな違います。顔も違う、考え方も違う、価値観も違う。ただ違うだけ。この34人、多様な人がいます。足の速い子もいるし、頭のいい子もいるかもしれない。コミュニケーションが得意じゃない子もいるかもしれない。しかしそれは違うだけ。間違いじゃない。違いを認め合う。そして落としどころを探していく。一人も残さない。全員が落としどころを見つけていく。
例えば体育祭、みんなが企画してもらうことになると思います。そりゃ運動神経が良い子は楽しみでしょうがない。でも体育祭苦手だなという子がいるかもしれない。その全員が楽しめる体育祭を考えてほしい。そういう違いを認め合って落としどころを見つけていく。そういう作業をこれから知ってもらいたいと思います。「エラーアンドラーン」失敗?全然問題ない。だって分からないことがあるんだから、正解が。必ず失敗しちゃう。
実は僕、初っ端で失敗しました。 昨日、京都で夜会食。元京大の総長・山極先生とIPS細胞の山中先生と食事ということで 京都に行ってホテルに泊まって今朝。
ヤフーの電車のマークを押すと出てくるじゃないですか、新幹線とか。朝、何時に着かなきゃいけないとか言ったら 6時5分の電車 京都駅に乗りなさいと言った。5時55分に京都駅の新幹線のところに行ってパッと見たら その電車がないんですよ。6時5分。あれ?で、駅員に聞いたら 「これ東海道線です。新幹線じゃありません」って言われて。ヤバい。「次の新幹線何時ですか?」「6時55分」え、50分もあんの?
一人、待合室で座ってたら寝てしまって、気がついたら57分。え?新幹線行っちゃった…ヤバい。この最初の一期生の入学式に遅れたら これは校長にボコボコにされるなと。焦って、でも何とかギリギリ5分前に着きました。
これで僕はエラーして学びました。これからヤフーを見ても、ちゃんと新幹線かどうかちゃんと見ろよと。これで一つ勉強しました。
こうやって、こんなことしなくていいけど…人って成長していくもんです。 みんなと一緒に 本当にこの3年間終わった時に みんなが熱中するものを見つけてくれてね、なんか成長したなっていう姿を必ず見せてくれるって確信しました。
僕はド素人がこういう教育に入ってきて、本当にいいのかと悩みました。でも答えが分からない。本当に。やってみなきゃ分かんないんじゃないかと。 ファーストペンギンみたいにそんなもんだと。よし飛び込んでやろうと思って飛び込みました。そしたらすごい反響でした。
今日こられている鈴木先生、教育の第一人者。キャプテンもほとんどが 向こうから岡田さん、ぜひ僕も!って来てくれます。EXILEのHIROまで 岡田さん、僕に何かできることありませんか?というような…本当にすごい反響です。
大学の学長がもう3人会いにここへ来ました。そしてこういう多様な子どもたちをぜひうちに入れてくれという、公立トップの大学もあります。そしてこれはまだ言えませんけど 有名私学の大学理事長が、ぜひ包括提携したいと。それはどういうことか。
もう一般入試のテストを見たって チャットGPTが満点取る時代だと。そして今は総合入試といって、推薦とかAOが50%を超え始めている。国公立でも30%を目指すようになっている。じゃあ、推薦入試で何を見るんだ?ちょっとしたエッセイ、面接。これじゃ人がわからないんです。結局内申で取っちゃってるんです。じゃあ一緒じゃないですか。
だから、岡田さんみたいな教育をしたあとは、どういう特徴を持っているのか。それを包括提携3年間見て、そういう特徴を持った子を入試するようなシステムを作りたいと。新しい入試を作りたいと言ってきてくれています。
その意味でみんな卒業する時に 熱中するものを何をしてくれてもいいと言っている。それでも心配で大学はどうなるかと思っている子もいるかもしれない。でもこの3年間だったら 必ずみんなは出入り口を見つけられると思っています。一緒になって、僕もしょっちゅう失敗します。うちの先生も失敗します。 みんなも失敗する。そして一緒になって成長していきたい。
そして保護者の皆さん ぜひ一緒に我々とこの子たちを成長させる力になってもらいたい。我々は、本当にいろんな意見を ぜひ受け止めたいと思っています。匿名でも結構です。どんどん意見を言っていただいて 我々は必ずフィードバックします。そういう意味で一緒になって育てていきたい。
自分の子ども、かわいいです。僕も3人の子どもがいます。自分の子どもに僕サッカーを教えられないんですよ。サッカーを教えたら「こうやってこうやってな。要するにこうやって…いいぞ頑張れ。また明日頑張れよ!」… 自分の子だったら何とかやらせたくなる。「もうちょっとこうしろお前、違う違う」って。(子どもが)サッカー嫌いなんですよ。ダメですね。 何とかしたいって思いすぎることが、この子を育てなかった。
そういう意味でこの34人の 彼らの持っている育つ力を一緒に信じて、僕らは絶対一人も見捨てません。寄り添い続けます。冷たいような態度かもしれないけど、より温かく寄り添っていきます。保護者の皆さんも一緒になって 寄り添って、どんなことがあってもこの子たちを素晴らしい人間にして送り出したいと、今心に本当に誓いました。
本当にようこそFCIへ。おめでとう!これからよろしくお願いします。