「私たちの様に悲しむ家族が2度と現れないように」現在も意識不明の状態続く 保育園でリンゴ食べ重体の男児の家族が手記公表【愛媛】
去年5月、新居浜市の保育園で生後8か月の男の子が給食に出た生のリンゴを食べて意識不明の重体となった事故で、市の第三者委員会がまとめた事故原因や再発防止についての報告書を受け、男の子の家族が手記を公表しました。
「私たちの様に悲しむ家族が2度と現れないようにしていただきたい」
男の子は現在も意識不明の状態が続いていて手記の中では、事故直後の状況や24時間の看護生活、報告書に対する思いなどが綴られています。
(以下、手記全文)
家族の思い
2024年4月8日事故当時、別の園に申し込んだのですが抽選に漏れてしまい、新居浜上部のぞみ保育園に5月からの入園となりました。まだまだ慣れない日々でした。当日は、少し鼻水が出ていましたが変わった様子もなく、いつも通り園に預けました。午前10時半過ぎ、園から「離乳食を詰まらせて、今、病院に運ばれたので、急いで行って下さい」と電話がありました。動揺しているようで、詳しい説明はありませんでした。連れて帰るつもりで、ミルクの準備をして病院へ向かいました。病院には園長先生がいましたが、状況の説明はありませんでした。処置室からお医者さんが出て来て、「とりあえず、心臓は動き出しました。」と言われ、そこで初めて事の重大さを知りました。おむつ1枚で顔色も悪く横たわっている息子と会いましたが、意識は戻っておらず変わり果てた姿になっていました。事故後、私たちの人生は180度変わりました。入院中は付き添いがあり、家と病院の二重生活になりました。別々の生活で、家族がバラバラになったと感じた事が一番つらかったです。生きるか死ぬかも分からない子供の事も、分からない事だらけで、どこに何をどう声をあげれば良いのか、相談先がない事にもとても悩み大変でした。松山の病院から新居浜の病院に移ってからも24時間付き添いを夫婦交代でしました。在宅医療のために家に連れて帰る準備、行政の設備、補助などが整っておらず何をするのにも一苦労でした。在宅医療という選択をしたのですが、受け皿(訪問看護や施設、子供に対応してくれるかなど)の少ない状況に落胆せざるをえず、とても大変でした。現在は在宅での看護になり、ほぼ全てを夫婦でケアし、2時間おきに体位変換、痰、唾液、鼻水の吸引、おむつ替え、4時間おきに栄養剤の注入、1日2回の浣腸、着替え、入浴(訪問看護さんの介助、リハビリ)など24時間の看護生活です。夜は夫婦で交代しながらの看護で1日があっと言う間に過ぎていっています。一方で、家族が一つの家で暮らせる事の当たり前の幸せを感じています。たくさんの方の手助けで、今の生活が成り立っており、感謝の気持ちでいっぱいの反面、時間の縛りや家から離れられない煩わしさは残ります。今現在、息子の体調がいつ変化して悪くなるかも良くなるかも分からないので常に不安です。それでも少しでも良くなるように、出来ることは全てしてあげたいです。そして、寝たきりだからと諦めるのではなく、できる限り、家族みんなでやりたい事をしていきたいです。同じような事故が、2度と起こらないように、私たちが伝えていけることは伝えていきたいとも思っています。検証委員会の報告書を読みました。とてもしっかりと事実関係、対策等がまとめられていたと感じました。委員のみなさんの、お忙しい中での検証に感謝いたします。きちんと検証され防止策がまとめられた事はとても意味のある大きなことだと思います。私たちにも寄り添って頂けた内容だと感じました。報告書を読んで初めて知ったこともあり、ただただ悔しく悲しい気持ちになりました。読めば読むほど起こるべくして起きた事故と言えるのではないかと思いました。あまりにもずさん過ぎる管理態勢には悪質と言わざるを得ない、人の命を預かるという認識に欠けすぎていると思いました。悔しさと悲しみでいっぱいです。報告書の内容が全ての保育現場に伝わり、対策もきちんと実行、継続されることを願います。園の会見の様子は全容を見ていませんが、隠すことなく、説明責任をきちんと果たしていって欲しいです。いま、事故で失ったものは戻ってこないと理解しています。それでも、少しでも良くなることを信じて、前向きに過ごしています。とにかく、子供に関わる全ての人たちに、今一度、現状を見直して、自分だったら何が出来るかを考え、事故がないようにしてもらいたい。もし、事故が起きた時にも対応出来るように、考えて行動して欲しいと思います。私たちの様に悲しむ家族が2度と現れないようにしていただきたい。今後は園、新居浜市、愛媛県、国の動きをしっかりと見ていき、不備があれば訴えかけていきたいと思います。
以上