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【開業60周年】JR東海道新幹線を支える深夜の大規模保守作業を密着取材…驚きの最新技術も(静岡)

2024年10月16日 17:54
【開業60周年】JR東海道新幹線を支える深夜の大規模保守作業を密着取材…驚きの最新技術も(静岡)

2024年、開業から60年を迎えた東海道新幹線。今回、私たちは特別に、終電後に行われたある大規模な保守作業に密着させてもらいました。するとそこには、驚きの進化を遂げた最新技術がありました。

東京から新大阪までの552.6キロを結ぶ東海道新幹線。今や世界一とも言われる3分に1本が走る超過密ダイヤで運行されていますが、開業から60年間、乗客が死亡する事故はなんと一度も起きていません。その陰には、日夜、新幹線の設備を完全な状態で維持するプロフェッショナルの存在があるのです。今回、真夜中に行われた知られざる保守作業を特別に見せてもらいました。

午後9時。新幹線が走る高架橋の下に集まったヘルメット姿の人たち。その数 約30人。

(作業員)
「こんばんは 点呼を始めます」

(作業員)
「作業条件 補修作業138キロ450から140キロ」

作業員が持つ資料には「トロリ線張替」の文字が。この「トロリ線」とは一体?新幹線はモーターで走るため、常に外部から「電気」を供給する必要があります。その電気を受けるのが、車体の上についたパンダグラフで、上に張られた電線から電気を送っています。この電線こそが「トロリ線」なのです。作業員に続き、新幹線の線路がある高架橋の上へと厳重に管理された階段をのぼっていくと。

そこには、新幹線とは違う大きなエンジン音を立てる黄色と青の機関車の姿が。これは、新幹線の保守作業に欠かせない、その名も「保守用車」。この車両を使い作業を行うようです。

午後10時。まだ、隣の本線上には営業運転中の新幹線が走る中、準備を行う保守用車に乗せてもらうと…。そこには、大きなドラムに巻かれたキラキラと輝く銅線が。これこそが、今夜、新たに取り付ける「トロリ線」なのです。多い時には3分に1度、高速で走る新幹線のパンダグラフが接触するため少しずつ摩耗し、安全のために取り換えが必要となるのです。

(JR東海 静岡統括電気所 髙木 良章 総括助役)
「トロリ線の材質は銅、新品の太さは約15ミリ、きょうは1500メートルを張っていく」「今晩の張り替えは最終列車が通ってから、あすの始発列車が通るまでの4時間で作業する」

新幹線の安全を守る大切な作業でありながら、時間との戦いでもあるのです。今回、張替作業が行われるのは、新富士駅の約2キロ西側、富士川近くにある1.5キロの区間。このあと、保守用車を現場へと移動させます。

午後11時30分。最終列車も通過し作業員たちも線路内へと入ります。

(作業員)
「立ち入り及び着手23時36分、確認が取れましたので立ち入りをお願いします」

(作業員)
「よし よし」

普段は絶対に入ることのできない新幹線の線路へ。営業運転中は2万5000ボルトという高圧電流が流れるトロリ線。もし感電したら、死に至る可能性も非常に高い危険な現場のため、まず最初に電気が止まっているか確認を行います。

(作業員)
「取付よし」

ちゃんと電気が止まっていることも確認できました。エンジンで動く保守用車も現場に到着しました。保守用車は5両編成ですが、1両ごとに役割が違います。先頭車両には新しいトロリ線が巻かれたドラムが乗せられていて、ここから新しいトロリ線を出しながら進んでいきます。そして、2両目に乗った作業員が、現在 張られているトロリ線に新しいトロリ線をぶら下げていきます。

今回、作業する区間は2年2か月ぶりの更新ということで、これまで使われてきたものと新品のトロリ線の色や輝きの違いは一目瞭然です。3両・4両目では、トロリ線が正しい向きに設置されているか、丁寧に手で触れながら確認。そして最後尾の5両目は約2.5トンの力で引っ張り、曲がったトロリ線をまっすぐに伸ばしていきます。1500mもある1本の長いトロリ線を、わずか4時間で一気に張り替えるため、素早く正確な連携が必要となります。ところで、交換するトロリ線は、新品と比べ一体どのぐらい摩耗しているのでしょうか。

(JR東海 静岡統括電気所 髙木 良章 総括助役)
「トロリ線の下面を見ると水平にすり減っている。パンタグラフが擦るため、水平にどんどん摩耗していく」

比べてみると、パンダグラフとの摩擦で、いかに消耗しているかがよくわかります。このトロリ線の摩耗をチェックしているのが、“幸せの黄色い新幹線”と呼ばれるドクターイエロー。東京ー博多間を10日に1回程度走行しながら、測定用のパンタグラフでトロリ線に異常がないか調べているのです。線路などのゆがみなども測定しているドクターイエローですが、JR東海は、2025年1月に引退させることを発表しました。その理由として車両の老朽化が上げられていますが、実は、トロリ線自体の進化も関係しているんです。

(JR東海 静岡統括電気所 髙木 良章 総括助役)
「トロリ線の内部には検知線が入っていて摩耗の進行を検知できるシステムを導入している」

最新のトロリ線には光ファイバーが組み込まれていて、これにより、リアルタイムでトロリ線の状態が管理できるようになっているのです。新しいトロリ線への取り換えは作業は順調に進み、最後に1500mあるトロリ線の端を、2.5トンの力で引っ張りながら固定していきます。

(作業員)
「位置よし 前後よし」

そして最後は人の目と耳で最終チェックを行います。

(JR東海 静岡統括電気所 髙木 良章 総括助役)
「今たたくと、澄みやかなキーンという音が鳴ると思うのですが、金具が緩んでいるとドスという鈍い音がする。単純にたたいているようにみえるが、目視で金具が緩んでいないか確認する重要な作業」「最後は複数の人の目で確認することが安全を担保する上では大切」

午前4時。作業開始から約4時間。時間内に無事に作業終了です。最後に大事故につながりかねない落し物がないか、歩いて確認し、保守車両や作業員は現場を後にします。

午前6時30分。作業終了から2時間半が経ちましたが、現場にはまだ髙木さんの姿が。するとそこに。

新幹線の一番列車です。ちゃんと新幹線が通過できるかチェックしていたのです。

(JR東海 静岡統括電気所 髙木 良章 総括助役)
「私たちの作業は、お客様の目に触れることのない縁の下の力持ち的な存在ですが、大きな工事をやり遂げて、お客様を目的地まで届ける大きなやりがいを感じている」

    静岡第一テレビのニュース