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みんな大好き“うずらの卵”…その生産者が廃業しかねないピンチに!一体何が起きているのか?(静岡)

2024年8月2日 17:43
みんな大好き“うずらの卵”…その生産者が廃業しかねないピンチに!一体何が起きているのか?(静岡)

中華丼には欠かせない“うずらの卵”ですがその生産者がいま、廃業しかねない経営危機に陥っています。一体何が起きているのか?生き残りをかけて奮闘する静岡県内の生産者を取材しました。

中華丼やフライなどに使われ、子どもから大人までみんな大好きな“うずらの卵”。いま、その生産者が会社存続の危機にあります。

“うずらの卵”の大規模な生産者は全国にわずか25軒しかありませんが、その1つが湖西市にある「浜名湖ファーム」です。親子3代、40年以上にわたり“うずらの卵”を生産していて、現在、うずら8万羽を飼育し、1日6万個の卵を出荷しています。そこには、たくさんのこだわりが…。

(浜名湖ファーム 近藤 尚さん)
「乳酸菌や酢酸菌の入った餌を取り入れることで、うずら自体の腸内環境を良くして、免疫力をあげることで」「病気に負けないウズラを作っている」

さらに、浜名湖周辺の澄んだ空気と、ミネラルを豊富に含んだ地下水を与えることで、病気に強く、元気なうずらが育つといいます。

こうして作られた“うずらの卵”は濃厚で栄養がたっぷり詰まっていることから「命のカプセル」と名付け販売されています。この“うずらの卵”を使っているという地元の飲食店では…。

(はづき 清水 政士さん)
「ほかのうずらとはやっぱり違いますね!」「味がすごく濃くて」「とってもおいしいです」

さらに、東京・青山にある人気のイタリア料理店でもシェフの山本さんが全国の“うずらの卵”を食べ比べて「浜名湖ファーム」の卵を選んだといいます。

( IL TEATRINO DA SALONE 山本 鉄巳 シェフ)
「(浜名湖ファームは)うずらの健康とか卵の品質とかに凄くこだわってる農家さんなので」「お料理全体もそうですし、“うずらの卵”がおいしいって言ってくださるお客様がすごく多いですね」

しかし、そんな「浜名湖ファーム」が、いま、廃業さえしかねない会社存続の危機を迎えていました。

2024年2月、福岡県で小学1年生の児童が、給食に出された“うずらの卵”をのどに詰まらせ、死亡する事故が起きたのです。この事故を受け、全国の多くの学校給食が“うずらの卵”の提供を中止する対応を行いました。

静岡市の給食では月に1・2回のペースで“うずらの卵”を使った料理を提供していましたが、事故の翌日から提供を中止し、現在も再開されていません。

(静岡市教育委員会 学校給食課 原田 登志子さん)
「子どもにとっても、非常に人気のある食材ではありますから、突然の中止には戸惑うお子さんや保護者の方も沢山いましたけれども」「私たちとしては、やはり子どもの命を守るというところが一番ですので、同じような事故が起きないようにというところで」

給食事故をきっかけに、浜名湖ファームでは、それまでの出荷量の2割にあたる一週間で5万個もの減産を余儀なくされ、このままでは、1万羽のうずらを殺処分しなければならなくなるといいます。

(浜名湖ファーム 近藤 尚さん)
「本当はやりたくないですけど、処分という形で卵の量を減らすし
かない」「小さなひよこの時から自分たちは育てておりますので」「本当に悲しい気持ちはあります」

実は、給食事故の前にも“うずらの卵”生産者は経営危機に陥ったことがありました。それは、新型コロナの影響で、学校の一斉休校や飲食店の休業が相次いだことにより、“うずらの卵”の需要が激減し、なかには廃業に追い込まれた生産者もあったといいます。それが、ようやく元の状態に戻り始めた矢先、今回の給食事故が起きたのです。

(浜名湖ファーム 近藤 尚さん)
「コロナがあけて、これからようやく生産が安定しだす時に、 また減産要請が来たので」「残念な気持ちはあります」

事故から半年が過ぎても事態は良くならず、このままでは会社を続けられないと、「浜名湖ファーム」では生き残りをかけて自ら行動に出ることにしました。それが…「クラウドファンディング」。インターネットで資金を集め、それをもとに飲食店などに“うずらの卵”を無償提供することで、ニーズを掘り起こそうというのです。開始から6日目となる8月2日までに、約80人から支援が集まり、多くの応援メッセージも届きました。

(応援メッセージ)
『うずら農家のみなさんが安心して生産に取り組めますように。応援しています』
『小さい頃から“うずらの卵”をおいしくいただいてきました。地元を離れた今でも、帰省したときに必ず買ってます』

(浜名湖ファーム 近藤 尚さん)
「今後も」「ファンの声にこたえられるような“うずらの卵”を作り続けたいです」

この取り組みに協力する飲食店も、これがきっかけとなり“うずらの卵”の利用が広がることに期待を寄せます。

(はづき 清水 政士さん)
「当店も浜名湖ファームさんのウズラでとてもお客さんに喜んでいただいているので」「これをきっかけに」「まだ使われていないお店でも、これがきっかけで何か使うきっかけになれば、とても素敵だなと思います」

さらに明るい兆しも…。現在は提供を中止している静岡市の学校給食でも、“うずらの卵”の提供再開を検討しているといます。

(静岡市教育委員会 学校給食課 原田 登志子さん)
「再開の準備は今、整えていますので、近々再開という方向になると思います」「子どもたちに対しては、食べ方指導の徹底」「緊急対応マニュアルのようなものの見直しや修正、それから研修等を行いながら再開をしたいと思っています」

(浜名湖ファーム 近藤 尚さん)
「工夫して食べれば小さいお子様でも食べていただける食材ではあります」「“うずらの卵”は栄養価の高い卵でもありますので、お子さんから大人まで、みなさんに食べていただきたいです」

    静岡第一テレビのニュース