【深刻】全国で金属製品盗難多発する中…県内では茶畑の電線が盗まれ危機的状況の茶農家も(静岡)
全国で多発するケーブルなど金属製品の盗難事件。静岡県内でも茶畑の電線が盗まれる事例が増えていますが、取材を進めると、その被害をきっかけに、お茶づくりを辞めざるを得ない事態になっている生産者も出ていました。
金属価格の高騰に伴い全国で増えているのが、転売目的で金属製品を盗難する事件。道路の側溝に設置されたふた、「グレーチング」や神社の屋根に使われている「銅板」、橋の名前を印した「橋名板」などその被害は様々なものに及んでいます。そんな中、静岡の名産品の生産にも影響を及ぼす窃盗被害が…。
(佐野 巧 記者)
「菊川市に広がる茶畑です。今、この茶所で盗難被害が相次いでいるといいます」
被害が出ているのは、静岡が生産量日本一を誇るお茶の畑。現場では何が起きているのか…。12月、盗難被害にあった茶農家の山口さんに、狭い山道を走り、被害現場となった茶畑へ案内してもらうと。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「いっぱい盗られている」
盗まれたのは、防霜ファンに電気を供給する電線。通常であれば、このように電線が張った状態ですが、電線が途中で切られているのが分かります。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「制御盤から伸びている、この柱に犯人が登って、線を2本切って、奥の線も2本切って垂れ下がった状態で、両サイドは手が届く範囲で切って持っていかれた」
被害に遭ったのは12月8日。山口さんは、翌日、警察に被害届を提出し、警察は周辺の防犯カメラの映像などから犯人を特定。窃盗の疑いで、牧之原市の会社員の39歳の男を逮捕しました。
電線が切られたことで、現在は使うことができなくなった防霜ファン。特に、これからの時期に、はお茶の栽培に欠かすことができない重要な設備です。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「(防霜ファンがないと)霜が降りて、お茶も遅れて価格面でも下がる」「これがないとしょうがないという感じ」
やぶきた茶を栽培する山口さん。ここは、早場所と呼ばれる新茶の摘み取りが早い場所で、そのため、防霜ファンを使う機会も多いといいます。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「こうやって囲まれていると、風の通りも少ない。その分、早くお茶の芽が出てきて、最近みたいに凍ったりすると、もう、一気に全滅になっちゃうんでね。そのために必要なのが防霜ファン」
木々に囲まれ、お茶の栽培に最適な場所ですが、その一方で、人目につきにくい場所でもあります。犯人は、そこを狙ったのです。この茶畑で盗まれた電線は長さ50メートル、2万円相当ですが、被害はそれだけで収まらないといいます。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「新品の額で2万ぐらいという話だけど、 それは線だけの話だね。電気屋さんが来て、人工代とかいろいろかかれば、そんなもんじゃないしね」「犯人は小遣い稼ぎでやったかもしれないけど、元に戻してほしい。警察も『取られたものは帰ってきませんよ』って断言してたから力が抜ける」
被害に遭っているのは、ここだけではありません。周辺の茶畑でも被害が多発しています。これらの被害は、お茶産業の未来に影響を及ぼしているといいます。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「農家は高齢者になっていて、これを機にやめるという人も出てくる。お金かけられない」
茶の価格も低迷し、収益が悪化している中、新たな費用負担をするくらいなら、いっそ辞めてしまおうということなのです。一方、ここから約4キロ離れた茶畑でも、2024年11月以降、被害が続いています。なんと、ここは制御盤の中につながる線まで抜き取る卑劣な犯行。そして、目撃者によると不審なグループがいたといいます。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「電気屋が使う高いところまで登れるトラックと、下には旗振りがいたという話を聞いた。普通に電気屋だと思うよね」
電気工事を装った大がかりで大胆な犯行。この畑では、電線以外にメーターの設置も必要で、費用が多くかかることから、2025年の修理は諦め、2026年以降を予定しているといいます。山口さんの家は4代続く茶農家。お茶の生産を取り巻く環境は年々厳しくなっているといいます。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「最高に良かった時の4分の1 5分の1以下。うちも息子いるけど、全然違う仕事をしてる農家は自分で終わりって感じだ」「少ない収入から余分な出費が出ていく小遣い稼ぎでこんなことされては困る」
さらに、盗まれているのは電線だけではありません。茶畑に茶摘機などを乗り入れるのに必要な鉄板も盗まれたといいます。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「ここに架けてあった鉄板が5枚なくなっていました。11月中旬あたり」「律儀にゴムマットは置いていってくれました。ゴムは売れないみたいで」
菊川市内で相次ぐ、茶農家を標的にした盗難被害。被害にあった山口さんは、これ以上の被害は出さないように、防犯カメラの設置を増やすなど対策を進めるといいます。
(被害に遭った茶農家 山口 虎夫さん)
「(犯人が)見つからないとね、もう一生捕まらないし、 みんなにも、こんなカメラあるからつけた方がいいよっていうことは言ってます」「もう勘弁してほしいですね。二度とやってもらいたくないです」