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立ち入り禁止の池で泳ぐ 道の真ん中で写真撮影 「オーバーツーリズム」の現状 観光と地域の共存は…北海道美瑛町

2024年8月24日 8:30
立ち入り禁止の池で泳ぐ 道の真ん中で写真撮影 「オーバーツーリズム」の現状 観光と地域の共存は…北海道美瑛町

立ち入り禁止の池で泳ぐ、ドローンを無許可で飛ばす、車道に平気で飛び出して写真を撮る…

人気の観光地・北海道美瑛町です。

人口9000人余りの町が、年間およそ240万人の観光客をもてなす…

この夏も後を絶たない「迷惑行為」や、住民の生活に悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」が問題となっています。

立ち入り禁止「青い池」で泳ぐ危険行為

ゆるやかな丘が広がる道北の美瑛町。

農業がさかんで、およそ9千人が暮らしています。

四季折々さまざまな表情をみせる雄大な景色を写真におさめようと、年間238万人の観光客が訪れます。

平日にも関わらず、長い車の列ができていたのは、屈指の観光地「青い池」です。

多いときには駐車待ちの車で2キロ以上も渋滞が発生するといいます。

水面が青く見える幻想的な池を一目見ようと、たくさんの観光客が訪れます。

しかし、この場所でまさかの行為が目撃されました。

これは7月に撮影された映像です。

悠々と泳ぐのは、外国人とみられる男性。

ドローンに向かってピースサインをするような様子も。

撮影者によりますと、男性は10分ほど池に入っていたということです。

青い池は水深が深く、危険なため立ち入りが禁止されています。

さらに、ドローンの飛行には許可が必要ですが、届け出はありませんでした。

(観光客)「それインスタ映えじゃない。よく分からない」

(観光客)「考えられないです。こういう人たちがいて、もし営業中止とかになったら困るので、やめてほしい」

後を絶たない危険な迷惑行為

取材中にも…

(カメラマン)「あれ危ないわ」

柵を越えて写真を撮ろうと、危険な迷惑行為が後を絶ちません。

こうした問題は2023年の冬にも。

(山﨑記者)「池の上に寝そべっています。写真撮影していますね」

凍り付いた青い池の上で写真を撮る観光客。

これらの現状を解決するため、美瑛町が導入したのはAIを搭載したカメラです。

(警告音)「危険です。池に入らないでください」

人の侵入を検知すると、英語や韓国語など4か国語で警告音が流れますが…

(美瑛町商工観光交流課 成瀬弘記さん)「今回に関しては、設置した侵入検知カメラに検知されなかったので、検知できるエリア外から侵入されたのではないかと考えています」

泳いでいた男性は、カメラの死角を通って侵入したとみられています。

(美瑛町商工観光交流課 成瀬弘記さん)「広い場所なので全てがカバーできているわけではない。これからまた対策が必要かなと考えています」

「オーバーツーリズム」に悩む地元農家

一方、問題は観光名所の「セブンスターの木」でも。

(山﨑記者)「写真を撮ろうと観光客が列をつくっています。あちらの車道も写真を撮る人で埋め尽くされてしまっています」

写真を撮ろうと、車道にごった返す観光客。

なかには道の真ん中に座りこむ人も。

(観光客)「この景色がSNSで有名。車がいない道路ときれいな景色」

(観光客)「満足な写真を撮りたいみたいな」

周囲には小麦の畑が広がっています。

収穫期を迎え、観光客のすぐ側を続々とトラクターが通過しますが…

観光客とぶつかりそうになり、警備員が注意する場面も。

地元の農家は10年以上前から観光客による迷惑行為、いわゆる「オーバーツーリズム」に悩まされてきました。

(地元の農家)「駐車場に入りきらないバスがいて、それが何台も道路に並ぶ。そしてお客さんを降ろすでしょ。もう通れなくなって。いつ事故が起きてもおかしくない状況」

近くの駐車場には多くの車やバス。

路上駐車も相次ぎ、農作業に支障が出ているといいます。

(山﨑記者)「あちらの男性、畑の中に入ってしまっています」

さらに、畑を踏み荒らされる被害も。

靴底を介した病害虫の侵入が懸念され、農家にとって一番の脅威です。

(地元の農家)「観光客に対して…いなくなればいいなと思うけどね。この農村地帯で共存なんてできるんだろうかね」

住民の要望をうけ、町と警察は7月から8月21日までの1か月間、付近の町道を駐車禁止とする試験的な対策を始めました。

さらに、警備員が交通整理や注意喚起にあたっていますが、いたちごっこが続いています。

(警備員)「道路に出て好き勝手やっている人は明日は来ないので、最初で最後の一日だけ、その場だけだからあまり言うこと聞かない」

構造的な対策が必要…課題は財源確保 

専門家は構造的な対策が必要だと指摘します。

(北海道大学 石黒侑介准教授)「国内外の事例を組み合わせますと、ある程度仕組みとして解決できる形はすでに見えている。国立公園や自然保護区のように特定の駐車場でマイカーやレンタカーを降りてもらって、(ルールやマナーの)レクチャーを受けてからマチを訪れてもらうスタイルが必要」

その上で重要なのが財源の確保です。

美瑛町ではバスツアーなどの日帰りの観光客が多く、宿泊客は1割にも達していません。

観光地にかかる費用は、町民サービスに充てる一般会計で賄っている現状があります。

(北海道大学 石黒侑介准教授)「美瑛町は人口9千人で200数十万人をもてなしているので、観光客からコストをもらわずに税金だけで観光客を十分に受け入れる整備をしていく、サービスを提供していくのは難しい」

町は2年後の4月から宿泊税の導入を予定。

さらに、観光客から入場税や入域税などを徴収する案を検討しています。

また2023年4月に施行したオーバーツーリズム対策の条例では、「町長は畑などへの立入りが認められる場合に立入制限区域を指定できる」と初めて明文化しました。

これまでに町が立入制限区域を指定したことはありませんが、状況が悪化した場合には措置がとられる可能性があります。


そもそも美瑛町の基幹産業は観光ではなく農業です。

美しい景観は農家の営みによるものであるという理解を観光客に広げながら、実効性のある対策で、農家の生活を第一優先に守っていかなければなりません。

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