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問われる運転手の健康管理 専門家も指摘“低血糖の危うさ” 札幌・小学生死亡事故の“警鐘”

2024年8月10日 0:08
問われる運転手の健康管理 専門家も指摘“低血糖の危うさ” 札幌・小学生死亡事故の“警鐘”

札幌市豊平区で、小学4年の男の子が赤信号を無視したワゴン車にはねられ死亡した事故で、運転手の男に実刑判決が言い渡されました。

ハンドルを握る運転手の体調管理の責任が問われています。

(西田倖さんの父親)「事故が起きる前から止まっているというか、何ら心境の点で進展はないのかなと思います。私たち遺族に謝る必要はないと思っていて、とにかく倖に謝り続 けてほしいというのは思い続けているところです」

息子の命を奪った男の判決を前に、父親が胸の内を明かしました。

(西田倖さん)「ゲームカセットだ!手錠も入ってる!」

クリスマスプレゼントをもらって大喜びする男の子。

このわずか半年後、9歳で命を絶たれました。

【なぜ】倖さんをはねる直前に、物損事故も…

(鷲見記者)「男の子がはねられた横断歩道です。現場には車の部品が散乱していて警察が入念に調べています」

札幌市豊平区の市道で、登校中に横断歩道を渡っていた小学4年生の西田倖さん。

そこに赤信号を無視したワゴン車が突っ込み、倖さんは腹部を強く打って、死亡しました。

過失運転致死の罪に問われている花田光夫被告。

検察によりますと、糖尿病の持病があった花田被告は、意識障害を起こす可能性を認識していたにも関わらずインスリンを注射したあと、食事をとらずにワゴン車を運転。

その後、低血糖による意識障害に陥り倖さんをはね、死亡させたとされています。

さらに、倖さんをはねる直前、250メートル手前の歩道上でもポールをなぎ倒す物損事故を起こしていました。

花田被告が裁判で語った“自分の性格”

(花田被告)「私自身は記憶にありませんけど、 現場検証をしていますし、証拠を検討した結果、間違いないと思います」

初公判で起訴内容を認めた花田被告。

2013年ごろから、糖尿病を患い、薬などで血糖値を抑える必要がありましたが、通院は不定期。

血糖値の測定もせず、医師などから意識障害の危険性を繰り返し伝えられていました。

(花田被告)「性格的にずさんなところがあった」

糖尿病はインスリン注射などで血糖値をコントロールします。

専門家も警鐘“低血糖リスク”体調管理必須

専門家は低血糖にならないように常に体調管理が必要だと指摘します。

(北海道大学病院 糖尿病・内分泌内科中村昭伸 診療准教授)「食後の血糖値を下げるための注射を打ったにもかかわらず、食事をとらなかったり、激しい運動をした場合に下がりすぎるということが起こりえる。それが低血糖状態。脳にぶどう糖が行かなくなるので、それによって意識がなくな ってしまい倒れてしまう」

意識障害にならないための“ルーティーン”

(糖尿病患者の男性)「1日分の針を準備するのがルーティンですね」

小学1年生の時に1型糖尿病と診断された男性です。

生活習慣とは関係なく発症する1型糖尿病は、1日4回のインスリン注射が欠かせません。

(糖尿病患者の男性)「こうやって血がでます。血液をつける、どのくらいだろう…136!普通の人だと80~110ってところで、110でも普通の人だと高いんですけど、136は悪くない数字です」

低血糖にならないようにするため、重要なのが食事です。

(糖尿病患者の男性)「カレー鍋です、野菜たっぷりのカレー鍋。(炭水化物を取ると)血糖値が上昇しちゃうんで、それを抑えるために野菜から食べる。インスリンを使うものとしての責任感ですね。インスリンは一歩間違えれば凶器にもなるので、 打つんだったら食べろ」

通勤などで車を運転することが多いという男性。血糖値が下がりすぎた時のために車内にあめを常備するなど、体調管理には最大限の注意を払っています。

(糖尿病患者の男性)「血糖が低いかもしれないとちょっとでも思ったら、(血糖値が)ちょっと高めでもいいから食べておいて、安心して運転したいと思っています。インスリンを使う人は責任を持って使わないといけないと思う。使うんだったら低血糖を起こさない」

繰り返される“意識障害”の事故

過去にも低血糖症による意識障害が原因の事故がありました。

2014年、大阪の御堂筋で、車が暴走し3人が重軽傷を負った事故では、被告の運転手が過失運転致傷の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けました。

誰もが当事者になる可能性

専門家は、糖尿病に限らず誰もが当事者になりうると指摘します。

(滋賀医科大学 法医学部一杉正仁 教授)「自動車の事故の1割が運転手の体調変化によるものと言われている、心臓病、脳血管疾患などが原因としてある。糖尿病に限らずどなたでも体調を良好に保つ、あるいは体調が悪いときはハンドルを握らないということはどの病気にも言えること。体調が悪いときは運転しないが大原則」

ちぎれたランドセル、傷ついた息子の顔…家族の記憶

事故があったあの日から家族の時間は止まったままです。

(西田倖さんの父親)「切れてしまっているんですね。ランドセルも結構傷ついているので本人の体を守ってくれていたのかなと思うんですけど、顔も傷ついていたし、衝撃はひどかったんだなと改めて思いました」

「人を幸せにする子になってほしい」と「倖」と名付けたという両親。

裁判で父親は、最大の刑罰を与えてほしいと訴えました。

迎えた2024年8月2日の判決。

札幌地裁は、「低血糖で意識障害を引き起こす危険を軽視した過失は重大で、事故を起こすことは十分に想起された。身勝手な犯行である」として禁錮2年6か月の実刑判決を言い渡しました。

(西田倖さんの父親)「(判決は)結局通過点でしかないので、これで私たちが終わったとは感 じていません。交通ルールを守った子どもが、 身勝手な行動で判断を誤った大人の責任で命を落としてしまった事件なので、そういった事件に対して、罪の重さはこれでいいのかというのは、自分が当事者になって痛感している部分なんですね。今後似たような事件が起こったときに、遺族の気持ちを考えるとこの結果でいいのかというところは慎重に考えていきたいなと思います」

運転時に体調管理ができていなかったことに関して、強く責任を問う判決が下されました。

同じような事故が二度と起きないためにも運転する人全員が、 ハンドルを握る責任の重さを、改めて考えなくてはいけません。

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