全国に30万人超え “不登校”の子どもをどう支える? 寄り添い続ける親の思いとは― 北海道

学校を年間で30日欠席する「不登校」の子どもは、全国で30万人を超えています。
「不登校」になったことで周りとの距離を感じ、焦りや不安を感じるのは家族も同じです。
どう子どもを支えていくか、親の思いを取材しました。
(兄・義暁さん)「作者も同じなの」
(父・義博さん)「作者一緒なの?」
(玲衣さん)「そうだよ」
(父・義博さん)「じゃあ絶対面白いね」
上川管内に住む小学6年生の鈴村玲衣さん。
兄の義暁さんと弟の義史さんとは大の仲良しです。
(母・結さん)「入学式すごい緊張してるよね」
(玲衣さん)「うん、あんまり覚えていないかも」
入学当初は楽しく通学していたという玲衣さん。
4か月ほど経った夏休み明けから徐々に学校に通わなくなり、現在は主に自宅で過ごしています。
(玲衣さん)「自分では楽しかったんですけど、疲れちゃっていたみたいで、ちょっとずつお休みする日が増えて」
玲衣さんは音や匂いを人一倍強く感じ、周りの人の喜怒哀楽といった感情を強く感じ取る特性があります。
通学できなくなった頃は食欲が落ち、痩せていったと言います。
(母・結さん)「徐々に食欲が落ちていって、食べるのが好きな子なのに2口3口夕食を食べたらおなかいっぱいと言って、痩せていったんですよね。見るからに」
母の結さんは「無理に学校に行かせることもなく無理に休ませることもしない」と玲衣さんを見守りました。
現在は週に1・2回給食を楽しんだり、先生と個別に授業を受けるようにしています。
玲衣さんの判断を大切にしたいと考える母の結さん。
それは、自らの経験に基づいています。
(母・結さん)「自分自身が小学校4年生から不登校になって、小学校と中学校はほぼ通わずにいて、高校は通信制に進んで、公務員として仕事をしている。自分の体験として、不登校になったから人生が終わるわけではないと実体験としてもっていた」
結さんは不登校を乗り越え公務員にー
自立するため勉強を続けていた結さんを陰ながら支えていたのは、家族でした。
いまは、娘の玲衣さんが生きていくための力を蓄える時間だと考えています。
学校には行かない代わりに玲衣さんが向かった先はー
(フリースクール代表 中野英生さん)「こんにちは、いらっしゃい」
自宅近くにあるフリースクールです。
(玲衣さん)「中野さんがいるとかね」
ここでは家族以外の人と関わることができる第2の居場所となっています。
(フリースクール代表 中野英生さん)「学校に行きづらい子は外に出るのも怖い、笑顔が少ない子も最初のうちは多い。安心できる場所が増えることで笑顔が増えたり、そうすると保護者も安心できる」
文部科学省によると、全国では小学生の47人に1人、中学生の15人に1人が「不登校」だといいます。
また、道内の小中学生の不登校児童生徒は増加の一途をたどり、2023年度は1万4167人と過去最多を更新しました。
わが子が不登校になったとき、多くの親はどう接すればいいか悩む場合があるといいます。
専門家は親を支える支援も必要だと指摘します。
(北星学園大学社会福祉学部心理学科 村井史香専任講師)「家庭のなかだけで解決することは難しい。家庭の受け皿や支援が十分かと言われると、まだ足りていない部分が多いのではないかと思う」
札幌市内で開催されたのは、不登校の子どもを持つ親の会です。
わが子との苦しくつらい経験や悩みを分かち合うことができる場です。
(参加者)「玄関で動けなくなっても無理やり連れて行って。途中で吐くし、過呼吸になって。ひどいことしたなと、思い出しても涙がでるくらいの。二度とあんなことしたくない」
(参加者)「学校は行かなくていいよって、学校は心配はしなくていいって言って」
同じ境遇にある親と状況や思いを共有した参加者はー
(参加者)「毎日泣いていたし、何が起きているかわからなかったし。参加することで、自分を大丈夫っていうための安心感を持てる場として親の会の存在がすごくありがたい」
(不登校を語る親カフェ ポレポレ 竹内祐子さん)「自分だけじゃないということで、ホッとされることが多い。参加することでほかの方を聞くことで、自分を客観的に見えたりすることが多いので、それが親の会の意味だと思う」
2024年10月、ある1冊の本が出版されました。
子どもが不登校になった経験を持つ保護者らが、取材を重ね、まとめたものです。
タイトルは『子どもが「学校に行きたくない」ときに読む本』。
冒頭には「ひとりで悩まないでほしい」とかかれています。
公的な支援や進学情報などが掲載され、親の悩みを解く糸口になればと編集されました。
(札幌市立藻岩中学校PTA 新田晴美さん)「心がつらくなっている親子に少しでも情報を得ることで安心と笑顔につながればと思い作りました」
(札幌市立藻岩中学校PTA 矢野智章さん)「思いを持った大人はたくさんいるので、実は知らないだけだったりするので、本を見て知っていただくとまた変わる」
上川管内に住む、鈴村玲衣さんと母の結さんです。
(母・結さん)「あ、いいんじゃない」
(結さんと玲衣さん)「おー!いえい!」
玲衣さんが夢中になっているのがお菓子作り。
メニューを考えることが楽しいと話します。
(母・結さん)「わー!得意げ」
家族に喜んでもらうため、クリスマスケーキやお父さんの誕生日にはケーキを贈るなど、趣味のひとつになりました。
(母・結さん)「好奇心とか内側から湧き上がる、これを知りたいみたいな力をつけてもらえたら」
(母・結さん)「いただきます!玲衣ちゃんありがとう!」
(兄・義暁さん)「見た目からしておいしそう」
(義暁さんと玲衣さん)「おいしい。うまっ!」
(母・結さん)「幸せな人生を歩んでほしいと心から思っていて。職業とか進路はオプションでしかない。根っこの部分は彼らが幸せだなと思ってほしい」
(父・義博さん)「興味のあることをやってもらえる環境を用意するのが親の仕事だと思っている。いっぱい失敗してくれればいいなと思っているんですけど。それを見守っていられればいいかなという感じです」
様々な背景がある「不登校」。
理解を広げるため、家族に寄り沿った支えが求められています。