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【特集】にぎわう新潟駅前 一方で遠のく客足…歴史と風情が残るまち「古町」の活路は  《新潟》

2024年6月1日 20:26
【特集】にぎわう新潟駅前 一方で遠のく客足…歴史と風情が残るまち「古町」の活路は  《新潟》

新たな飲食店街もオープンし、新潟駅前がにぎわいう一方、対照的なのが古町地区です。
そんな古町で1世紀近く営業を続ける老舗の和菓子店があります。
長く愛される秘けつ…そこから見えてくる古町の活路とは。

■リニューアルでにぎわうJR新潟駅の駅ビル

5月25日の土曜日。
JR新潟駅の“CoCoLo新潟”には多くの人が訪れていました。

グランドオープンから1か月。

〈CoCoLo新潟店 営業部 阿部健明さん〉
「私たちがイメージしていたよりもはるかに多くのお客様にお越しいただいている。毎日が長岡花火じゃないですけど、あのくらいの人出が毎日来ている」

1日の平均来場者数はのべ10万人。

真新しい店内にトレンドを意識した食品や飲食店が並び、新潟市の新たなスポットとして人気を集めています。

■対照的な新潟市の中心部

この同じ日……新潟駅から約2キロ離れた古町です。

静かな土曜日を迎えていました。

〈和服店を営む人〉
「だいだいこんなもんですよね。古町はもともとが、土日そんなに人が出ているわけではない。CoCoLo新潟ができて変化が起きたとは特に感じられない」

にぎわう新潟駅と閑散とした古町。
中心部はいま、対照的な姿を見せています。

■古町で約1世紀続く和菓子店

佐藤紳一さん(74)は古町地区で和菓子店を営んでいます。

〈里仙 佐藤紳一さん〉
「まずかったねという人はいないけど、お世辞でもおいしかったよと言われると、やってよかったねという気持ちになります」

創業は昭和2年。

戦時中は砂糖が手に入らず休業したことも。その後も新潟大火や新潟地震などを乗り越え、この古町で1世紀近く変わらぬ味を守り続けて来ました。

花街として栄え、その歴史と風情が残る古町地区。

古町は、京都の祇園、東京・新橋と並ぶ芸妓のまちとして知られています。

■「手仕事にこだわって」

古町から始まった佐藤さんの店は評判を呼び、三越や新潟駅前などに販路を広げました。

〈「里仙」社長 佐藤紳一さん〉
「おじいちゃんに言われたのは、“手で出来るものであれば手を使え”。みんな手の大きさも違うし指の太さも違う。同じ花が菊になったりバラになったりするかもしれない。おもしろいもの」

手仕事にこだわって和菓子を作り続けてきた佐藤さん。

■時代とともに人の流れが変わる

ただ、時代の流れとともに人の流れは変わり、2020年に古町のシンボルだった新潟三越が閉店。

古町の地下商店街「西堀ローサ」も運営会社の解散が決まり、テナントについては来年3月までに退去するよう求めています。

佐藤さんの店もピーク時は本店を含め6つ店舗がありましたが、現在は2つにまで減っています。

さらに……

〈「里仙」社長 佐藤紳一さん〉
「ここ今空き家でしょ、うちの隣が空き家。パトカーも通らない」
Q)パトカーも通らないということは?
「人がいないということ」

町内は人口が減り空き家が増えているといいます。

〈「里仙」社長 佐藤紳一さん〉
「ラーメン屋はあったし、そば屋もあったし、人はいっぱいいた。とにかく人はいた。この界隈で元気なの俺だけになったな」

さまざまな店が立ち並び、多くの人でにぎわっていた古町。1日の歩行者の数は40年前は1万5000人以上にのぼりましたが、現在は4分の1にまで減少しています。

■「にいがた2km」

中心街の活性化へ…

新潟市は新潟駅から古町にかけてのエリアを「にいがた2km」と名付け、まちづくりを進めています。

〈新潟市都市政策部 宮崎博人 政策監〉
「古町は全国のチェーン店がいっぱいあるわけではなくて、 こういった形の個性のある喫茶店や本屋さんというのが集まっているというのは、新潟駅とはまた違う魅力がある」

■古町には個性あふれる魅力が

古町の個性のひとつとして案内してくれたのが…

〈新潟市都市政策部 宮崎博人 政策監〉
「普段歩いている方にとっては日常の風景だがこれを初めて見た方にすると街の中にいきなりあると結構おもしろい」

古町に鎮座する弘法大師の石像です。

カメラの切り取り方によっては…

〈新潟市都市政策部 宮崎博人 政策監〉
「おしゃれなお洋服屋さんの横に石仏があって、後ろに近代的な高層ビルが建っている。いまの若い方々は“SNS映え”とかとよく言うが、これもうまく伝えれば伝えたなりに魅力になると思う」

情緒のある街並みやカフェなど古町には個性あふれる魅力が詰まっていると話します。

この魅力を、どう発信するのか。

■若者のチカラで魅力発信へ

5月18日、新潟市中央区には若者たちが集まっていました。

若い世代が出会い、つながる場を作ろうと市が中心となって企画した新たなプロジェクトです。
若者のチカラでにいがた2kmエリアの歴史や文化などを発信してもらおうというのです。

〈新潟市都市政策部 宮崎博人 政策監〉
「うまく全体的にやれば新潟駅と古町というのは競合するわけではなく、新潟駅の盛り上がりもうまくやればこっちにも持ってこられる」

■創業時からの木型も

古町で和菓子店を営む佐藤さんです。見せてくれたのは……

〈「里仙」社長 佐藤紳一さん〉
「大きなカステラの上にこういうのを乗せる、家紋。これだけあるのは新潟でうちぐらい」

それぞれの家紋をかたどった木型です。創業からこれまで大切に使い続けてきました。
しかし、いまではほとんど使われなくなったといいます。

〈「里仙」社長 佐藤紳一さん〉
Q)何十年も使っていない家でも残しておく?
「だって、もう作る人がいない。まだ(注文する人が)いるから、『うちはなんとかの紋ですよ』とその人から言われたとき『ありません』と言えない」

伝統や文化を失ったら二度と取り戻すことはできない……。

■手作りへのこだわりと常連客を大切にしたい

新潟駅の駅ビル“CoCoLo新潟”のリニューアルにともない、佐藤さんのもとには出店の打診がありました。ただ、断ったといいます。

それは手作りへのこだわりと今の常連客を大切にするため。

〈常連客〉
「頑張ってくださいね、ずっと、名店だから」
<佐藤社長>
「ありがとうございます。気を付けて」

Q)なじみの客がいるんですね?
〈「里仙」社長 佐藤紳一さん〉
「いっぱいいる。みんな年をとった」
Q)ありがたいですね?
「買い物来てくれるからね。そういう方ばっかりで(店は)ずっともっている」

〈「里仙」社長 佐藤紳一さん〉
「東京にいるとか埼玉にいるとかいろいろな人たちがおばあちゃんの年忌に来たとか買い物して帰る。そういう店は将来ずっと忘れないで続くんじゃないか」

歴史ある町並みには伝統が、文化が息づいています。
古町らしさを生かし、もう一度にぎわいを……。

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