×

【特集】コロナ禍が明けても… 返済が本格化する「ゼロゼロ融資」 混迷する飲食業界 《新潟》

2023年12月2日 17:33
【特集】コロナ禍が明けても… 返済が本格化する「ゼロゼロ融資」 混迷する飲食業界 《新潟》
コロナ禍で資金繰りが悪化した事業者のための「ゼロゼロ融資」。
その返済が今、本格化しています。新潟県内の融資額は4,440億円。「自粛」ムードで大打撃を受けた飲食業界は、信用保証協会の支援も受けながら、回復のための次の一手を探っています。

■活気を取り戻す飲食店

新型コロナウイルスが「5類」に移行してから約半年。
長く続いた「自粛」ムードが終わり、夜のまちは活気を取り戻しています。

「せーの、乾杯!」

三条市の居酒屋「よね蔵 燕三条店」でも、男性グループや女性2人組などが解放感にひたっていました。

<客は>
「飲みに行くことをオープンに伝えられてすごくいい」
「なかなか友達と会いにくかったので最近は気軽に会えるようになって楽しい」

この店では「5類」移行後、コロナ禍前の水準まで売り上げが回復しました。

<よね蔵 燕三条店 荒木剛店長>
「忙しくて大変ですが、嬉しい悲鳴ですね」

■頼ったのはゼロゼロ融資

しかし、新潟市にある別の飲食店では・・・。

<飲食店の店主>
「最初はそんなに借りるつもりは なかったんですよ。でも(コロナ禍が)いつ終わるかわからないと言われて、借りるだけ借りました。思ったほど残らないですよね」

当時右肩上がりだった経営を襲ったコロナ禍。
売り上げは半減し、資金繰りは悪化。頼ったのが「ゼロゼロ融資」でした。

■ゼロゼロ融資とは

「ゼロゼロ融資」の2つのゼロは「利子」と「担保」のゼロを意味します。
コロナ禍のさなか2020年3月に始まった制度です。
金融機関から借りた事業資金は最長で3年間、利子の支払いが免除されるため、申し込みが殺到しました。

そして3年後となることしの夏以降、「ゼロゼロ融資」の返済が全国で本格化。
さらに、物価高。融資の返済に食材や電気代の高騰。飲食店に重くのしかかります。

■融資を借り換え返済

<飲食店の店主>
「融資を受けた金額は900万円くらい。コロナ禍が明けたころにはほぼないですよ。取ってあったお金が…」

売り上げは少しずつ戻ってきているため、融資を借り換え、月々の返済額を減らして乗り切りたいと話します。

■ことしの倒産件数は過去最多の可能性

東京商工リサーチによると、「ゼロゼロ融資」を利用した企業などの倒産件数は全国で1,000件超。飲食業界で見た場合、ことしの倒産件数は過去最多の年間842件を超える勢いで増えていて、「ゼロゼロ融資」の返済も背景にあるとみられます。

返済に悩む中小企業や事業者を支援するのが、信用保証協会です。

<新潟県信用保証協会保証推進部 栗山充 部長>
「いつ終わるか分からないパンデミックに近い状況で、平時の運転資金よりも多めに、調達をお考えになる中小企業の経営者の方が多かったのではないか」

■県内のゼロゼロ融資は、総額4400億円以上に

信用保証協会は中小企業や個人事業主が融資を受けやすくなるよう「公的な保証人」となります。「ゼロゼロ融資」でも保証人となり事業資金の借り入れが円滑に進むよう支援しました。

信用保証協会によると、県内ではゼロゼロ融資が2万8,000件行われ、総額は4,440億円に上ります。返済が本格化する今、事業者の「稼ぐ力」のサポートに乗り出しています。

<新潟県信用保証協会 保証推進部 栗山充 部長>
「売り上げの部分をどうしたら回復できるだろうかと保証協会に相談があった場合は、保証協会の職員、専門家をあわせて対応していただいたケースが非常に多い」

■経営戦略の練り直し


その協会から支援を受けている店舗のひとつが、上越市の高田地区にある「比他棒(ぴーたーぱん)」。手ごろな価格で本格的な中華料理を提供しています。

料理長(店主)の佐藤勇一さんは横浜と大阪で21年修行。およそ12年前に地元・上越市に帰郷し、この店を開業しました。

経営は順調でしたが、コロナ禍でお客は激減。「ゼロゼロ融資」を受けました。
今は信用保証協会が派遣する外部の専門家と共に、経営戦略を練り直しています。

食材の高騰でメニューの価格を見直した一方、その分、品数を増やすなどしてサービス向上を図ります。佐藤さんが気がかりなのはお客さんの懐事情。

<中華料理店「比他棒」 佐藤勇一さん>
「どこまでお客さんの負担にならないで食事をしてもらえるか」

■専門家のアドバイスで経理を見直す


上越市の高田地区で3店舗を展開する佐藤さん。専門家の助言を受けて、経理の仕方も見直しました。

<外部専門家 平野康晴さん>
「3店舗合算で損益を計算されていたんですね。それを店舗ごとに損益が計算できるようにしてお金の流れをわかるようにしました」

<中華料理店「比他棒」 佐藤勇一さん>
「目からウロコの話が多かったです。コロナ禍が明けたことで、客数は増えているのに客単価が下がっていると言われた時、そんなこと考えたこともなかったんですよ。漠然とお客さんが来ればと思っていました。

コロナ禍にゼロゼロ融資の返済・・・逆境を経験する中で、経営者として気づかされることも多かったといいます。

<中華料理店「比他棒」 佐藤勇一さん>
「飲食店にしてみれば暗黒の時代だったけれど、コロナ禍があったことで違うものも見えたかな」

本格化するゼロゼロ融資の返済。
逆境をどう乗り切るのか・・・それぞれの店が次の一手を模索しています。

テレビ新潟のニュース