【特集】“空飛ぶ海猿” 海上保安庁の機動救難士 「要救助者を絶対に助ける。そして、家族のもとへ」 最年長ベテラン隊員に密着 ≪新潟≫
海の安全を守る海上保安庁。そこにはヘリコプターでいち早く現場に駆け付ける「機動救難士」という隊員がいます。
“空飛ぶ海猿”とも呼ばれる「機動救難士」。
新潟航空基地所属、最年長のベテラン隊員に密着しました。
ヘリコプターから船へ。
エンジントラブルが起きた船から乗組員を吊り上げていきます。
救助にあたっているのは海上保安庁の「機動救難士」。
別名「空飛ぶ海猿」です。
海の安全は、自分たちが守る。
日々、厳しい訓練に励む最年長隊員の信念とは……。
新潟市東区・第九管区海上保安本部の「新潟航空基地」。
機動救難士の竹村啓さん、38歳です。
神奈川県出身で、2005年に海上保安庁に入庁。
2015年に全国でわずか90人しか選ばれない「機動救難士」に任命されました。
新潟航空基地 起動救難士 竹村啓さん
「人命救助がしたくて。ヘリコプターと連携して迅速に救助できる隊に入りたいと思って機動救難士を目指しました」
打ち合わせを終え、竹村さんたちが向かったのは……。新潟空港の敷地内にある格納庫。
ヘリコプターを使ったレスキュー訓練です。
機動救難士の隊員が次々とヘリコプターから降下していきます。
地上20mの高さから5秒ほどで下へ。
要救助者の命を救うためにはその速さに加え隊員同士の連携が求められるといいます。
竹村さんは新潟航空基地の機動救難士の中で最年長。
訓練を重ね出動に備えています。
こちらは2018年に発生した秋田県沖での海難事故の映像です。
ヘリコプターから船の上に降りたのが竹村さんです。
負傷した船員の救助にあたりました。
要請があればいち早く現場へ。
ことし、九管本部の管内で発生した船舶の事故は67件。このうち機動救難士が4人救出しています。
新潟航空基地 機動救難士 竹村啓さん
「機動救難士にお願いすればどうにか救出してくれるのではないか。そういう期待にこたえなければならないというところで、結果を出すということは大事になってくる」
新潟市北区の漁港に竹村さんたちの姿がありました。
この日の最高気温は15度。冬が近づく日本海で潜水訓練です。
まずは、水に慣れるため片道およそ250mの距離を泳ぎます。
新潟航空基地 機動救難士 竹村啓さん
「寒くなると思考力とかいろいろ落ちたり。(海中は)言葉も通じない環境ですのでメンバーと一緒に連携を図っていければ」
基礎訓練が終わるとボンベを背負っての水面移動。
およそ25キロもの装備をつけて要救助者を捜索します。
新潟航空基地 機動救難士 竹村啓さん
「はーしんどい。きつい。やっぱり普通の装備よりもボンベ背負うとすごく重いのでその分結構きつかったです」
これにはベテランの竹村さんも。
新潟航空基地 機動救難士 竹村啓さん
「やっぱりちょっと辛かったです。日々普段では考えられないような厳しい訓練を実施しているところで。その中で自分がどこまでやれるのかという限界点をしっかり確かめている」
昼休み。疲れた体への栄養補給が欠かせません。
竹村さんも後輩の隊員たちとつかの間の休憩を楽しんでいますが、その目線の先には訓練の映像が。
新潟航空基地 機動救難士 竹村啓さん
「見ながら(食べる)人が多いかもしれないですね。うまく救助したい、物事をこなしたいという部分は少なからずあると思うので。そういうことを自然とみんな気にしているのかな」
ムードメーカーでもあるという竹村さんですが。
新潟航空基地 機動救難士 竹村啓さん
「話にオチがあるかないかは大事だと思っていて。話の先まで見ていくというのは救助の先を見ていくというのもあるので」
最年長ながら飾らない人柄で隊をまとめています。
1日の勤務を終えて自宅へ。
竹村さんを家族が出迎えます。家では3人の子どもたちの父親です。
息子・灯利くん(3)
Q)パパのどんなところが好き?
「こちょこちょするところ!」
竹村啓さん
「やんちゃなので言うこと聞かないことも多いんですけどやっぱり子どもと遊んでいると癒しはあります。みんな帰りを待っていてくれてるので」
竹村さんの妻、祥美さんです。危険な現場に駆け付ける夫の仕事については……。
妻・祥美さん
「不安とかはやっぱりありますけど。『やってこいよ』という思いでいます」
Q)奥様にとってどういう存在ですか?
「唯一無二という感じですかね」
竹村啓さん
「長い期間救助に携わる時もあるので家を長く開ける時とかも早く帰りたいなって思います。帰りたくなるというか帰らなきゃいけない存在がいて仕事ができている。大切な存在」
“ベテラン”そして“最年長”という立場になった竹村さん。
大切にしている、信念があります。
竹村啓さん
「だいぶ不安だったと思うんですよね。不安が私たちに会ったことで払しょくできるような。任されたからには是が非でも救出して帰ってくる。機動救難士が出動したのであれば成功して帰ってくるというものをモットーにやっています」
要救助者を絶対に助ける。
そして、家族のもとへ絶対に戻ってくる。
“空飛ぶ海猿”はきょうもこの海を守ります。