【特集】増加するインバウンド 宿泊客は“夕食難民”も 宿泊施設は人手不足と高齢化 新潟が抱える課題を検証《新潟》
新潟県の新年度予算案から新潟が抱える課題を考えます。
今回は経済にも大きな影響を与える「外国人観光客」の受け入れについてです。
春節を迎え、中国からやってきた観光客に密着。さらに、まちぐるみで受け入れようとする湯沢町の取り組みです。
2月12日、鮮やかな上着に身を包んだ一行が新潟にやってきました。
<中国からの旅行客>
「中国のハルビンから来ました」
「春節で9日間の休みを取りました」
新型コロナの影響で運休していた直行便はことし1月、4年ぶりに運航を再開したばかりです。
中国北部の都市・ハルビンからの団体客です。
新潟への旅、彼らが期待していることは・・・。
<中国からの旅行客>
「新潟の食べ物がおいしそう」
「ニシキゴイの里、いっぱい魚がいるのですごく楽しみ」
「円が安いからいい」
「USJとディズニーランドが楽しみ」
県によると、いまハルビンからの観光客はほとんどが団体で、新潟から入り、東京や京都を経由し、大阪からハルビンに帰る6日間のツアーが組まれていると言います。
一行が最初に立ち寄ったのは“新潟ふるさと村”です。
各自、自由に昼食をとることに・・・。
みなさんのお目当てはラーメン!券売機に中国語の表記はありませんでしたが、スマホの翻訳機能を駆使して食べたいものを注文できたようです。
<中国からの旅行客>
「券売機に写真が付いていたのでわかりやすかったです」
注文したのは背脂ラーメン!
大人はしっかり日本酒も試飲!!その味に満足していたようです。
バスに揺られ1時間・・・。
続いてやってきたのは小千谷市にある「錦鯉の里」です。
大きな口を開けて出迎える姿に興味津々の様子。
<中国からの旅行客>
「かわいい」
「錦鯉は好きなので飼いたいです」
「でも高価だからここで楽しみました」
錦鯉の里では中国語のほか英語やベトナム語など合わせて4つの言語に対応したパンフレットを作っています。
この対応にツアーのガイドは・・・。
<ガイド 王峰さん>
「中国語表記がない所はあまり行かないです」
Q)中国語表記が増えたら観光の幅は広がるでしょうか?
「そうかもしれない。でも団体は時間を気にするから行く場所は限られる。自由行動する人(個人旅行者)はもっと来てもらえます」
今後、増えるインバウンドへの対応として言語など受け入れ態勢の強化は不可欠です。
県は外国人の個人旅行者が増えることを踏まえて空港にICTを活用した案内システムを導入するなど環境整備への予算を拡充しています。
『【拡充】インバウンド受入環境整備・高度化事業』に700万円、
『国際線維持・拡大事業』に1億2170万円を計上しています。
また、新潟空港発着の国際線の定期路線の維持・拡大を促進するため引き続き運航経費などを支援する考えです。
まちぐるみで観光客の受け入れに力を入れるところも・・・。
県内の一大観光地、湯沢町です。
湯沢町の観光客はコロナ禍前、小雪だった2019年をのぞくと毎年400万人以上で推移していました。ここ数年も回復傾向です。
そのうち外国人観光客はコロナ禍の影響以外は右肩上がり。今後、さらなる増加が予想されます。
そんな観光客を受け入れる宿泊施設の中には、働き手の不足と高齢化が課題となってるところもあります。
温泉通りにある島村ロッヂです。
嶋村武夫さん86歳と妻のヨシ子さん77歳。夫婦2人で営んでいます。
<嶋村武夫さん>
「築90年。川端康成がここで食事した。それで、あの小説書いたの。あの島村がうちなの」
歴史ある宿を守ってきた2人ですが…最近、思うように体が動かないこともあるようです。
1990年代ごろまでスキーブームやバブルの影響も相まって多くの人があふれた湯沢町。
島村ロッヂは元国体選手の夫・武夫さんがスキー学校を開き、多い時には400人の生徒が通うほどだったといいます。
ゲレンデの目の前の立地。
15人ほどの従業員を雇い、日中は食堂としても営業し、大忙しでした。
しかし、その後スキーブームは去り、従業員もいなくなりました。
子どもたちの手も借りながら夫婦2人で12部屋の宿をなんとか切り盛り・・・。
去年、夕食の提供をやめたと言います。
<妻のヨシ子さん>
「だんだん健康に不安が出て来て、無理ができないなということで、夕食は…やめにしました。それで離れたお客さんも随分いますけど」
いま、そうした宿泊施設が増えているのです。
<妻のヨシ子さん>
「ちょっと“夕食難民”が相当出ましたと言われるが、その辺をこれから考えなくてはと思う」
課題となったのが「夕食難民」です・・
まちの飲食店は増加傾向にあると言いますが、それでも観光客であふれ、予約なしでは入れない店が多いのが現状です。
夕食難民を出さず地域経済を回すために・・・。
湯沢町は去年からナイトマルシェをはじめました。
特に外国からの観光客は素泊まりを選ぶ人も多いため、夕食難民になりやすい傾向があります。
訪れた海外からの観光客に話を聞くと・・・。
Q)宿泊施設で夜ご飯は出ますか?
<海外からの観光客>
「いいえ、自分たちで」
Q)飲食店には行かないんですか?
「人が多すぎで混雑している」
「私たちは9人で入れる店はない。だから私たちはここに来ました」
「いろんなお店があると思うんですけど混んでたりするんですよ。もうちょっと多くしてくれたらいいと思う」
Q)こういうナイトマルシェがあれば?
「最高ですね」
ナイトマルシェはことしすでに4日間 開かれ、会を重ねるごとに来場者が増えています。
一時的な「夕食難民」の受け皿となっているのです。
合わせて、夜の時間帯に路線バスを増便して外食と共にお酒を楽しめる仕組みを作っています。
公共交通と併せて取り組むことで夜の経済活動を活性化させ観光客の消費の拡大を狙います。
宿泊と食事を切り離して考える「泊食分離」。
まちは「泊食分離」を進めることで宿泊施設は負担が減り、高齢でも辞めずに経営を続けられるようになると言います。
【湯沢町 富沢 雅文 課長】
「このナイトマルシェと夜の交通の拡充の政策を絡めて、より観光客に喜んでいただければいいなと考えています」
夜の交通の拡充は地域住民にとっても移動手段の確保となり「観光」と「生活」の両面の改善につながるといいます。
県は『地域の交通資源をフル活用した 移動手段の確保に向けた取組』に3040万円、『地方バス路線の維持・確保』で5億5210万円(2月補正含む)を計上しています。
県は地域の交通資源をフル活用した移動手段の確保やバス路線の維持・確保にも引き続き支援する考えです。
2月の県議会で審議される新年度予算案。住みやすく、そして魅力的な地域へ・・その実効性も試されます。