【特集】インターネットと人権 元NGT48 荻野由佳さんが誹謗中傷の被害を語る 《新潟》
12月4日から人権週間が始まります。「インターネットと人権」について考えます。時には命をも奪う可能性がある誹謗中傷。誹謗中傷を受け続けている元アイドルの女性が初めてテレビカメラの前で語りました。
元NGT48の荻野由佳さんが語った誹謗中傷被害
「明日から背後に気をつけな」
「人を一人殺してるんだぞ」
これは、ある女性がインターネット上で受けた脅迫や誹謗中傷の一部です。新潟のアイドルグループ、NGT48の元メンバー、荻野由佳さんです。
この日、初めてテレビカメラの前で誹謗中傷の被害を語ってくれました。
荻野由佳さん
「言葉で人を殺すこともあると分かっていてほしくて。
私は幸い心がすごい強い女なので大丈夫だったんですが、心が弱く、すぐに命を絶ってしまう方もいるので、そういう(誹謗中傷する)方に気付いてもらいたいなと思って、(取材を)受けました」
荻野さんが所属していたNGT48では5年前、メンバーの自宅に男性が押し入ったとされるトラブルが発生。男性2人が逮捕されましたが、その後、不起訴処分となっています。
一方、ネット上は真偽不明の情報が飛び交い、荻野さんをはじめ複数のメンバーは匿名の投稿者たちから事件への関与を疑われるようになりました。
荻野由佳さん
「例えばSNSに文字を投稿すると、その文字を切り取られて、彼女のことを言っているとか。
その件に関して全く関与がなかったので、疑われる対象になり、それが真実になっている瞬間が辛かったです」
当時、東京と新潟を往復する日々が続いていた荻野さん。
事件が起きたこともグループラインで知ったといいます。
しかし、根拠のない事実とは異なる情報が次々にネット上に書き込まれ、多くの脅迫や誹謗中傷を受けることになりました。
荻野由佳さん
「会社からは何も言わずにいてと言われてました。
でも違うから言いたい。でも言えない。
死ねは普通で、『明日から背後に気を付けて過ごしていけよ』とか、殺害予告もありました」
連日続く誹謗中傷は、徐々に心を蝕んでいきました。
荻野由佳さん
「ステージに立っている時に、サイリュウムが棒に見えて急に怖くなった。
味方でいてくれている人たちが来てくれているはずなのに、その人たちでさえ『なんで荻野はまだNGTにいるんだよ』とか『なんでステージに立ってるんだよ』と思われているんじゃないかと、パフォーマンス中に思うようになってしまった」
顔の見えない相手からの攻撃。
中には炎上をあおることでアクセス数を増やし、広告収入を得るサイトも存在します。
3年前には、ネット上で誹謗中傷を受けていた、プロレスラーの木村花さんが自ら命を絶ちました。
また、ことし10月には、ジャニー喜多川氏による性加害問題で被害を訴えていた、当事者の会のメンバーの男性が亡くなりました。
性被害を訴えたあと、ネット上で誹謗中傷を受けていたとみられています。
去年10月、「改正プロバイダー責任制限法」が施行され、ネット上に匿名で投稿された場合でも投稿者の特定がしやすくなりました。
誹謗中傷をすると、個人に対しては「名誉棄損罪」や「侮辱罪」。
法人に対しては「業務妨害罪」などに問われる可能性があります。
大学生が考える誹謗中傷対策
新発田市にある敬和学園大学。
この日、学生たちが集まり、ネット上の誹謗中傷について話し合いました。
学生たちはサイバーボランティアとして、新潟県警と協力しながら幅広い世代にネットの危険性などを伝える活動をしています。
どうすれば誹謗中傷がなくなるのか。
学生たちの意見は・・・。
学生
「TikTokのコメント欄は『すてきなコメントを」とある。
そういうことで、書くときに考える」
「情報開示されるので叩かない。叩くのも叩かれるのも、その叩いているのを見るのも嫌」
敬和学園大学 人文学部国際文化学科
一戸信哉教授
「ある種の正義みたいなものを皆が欲していて、この人に石を投げていいとなれば、一斉に石を投げる。
感情を刺激して、何かを稼ごうとしている人たちがいて、それが接続されて増幅する」
一戸教授は、SNSなどを提供するサービス側が攻撃的な投稿は表示しない仕組みを作るなど、対策はあると指摘します。
しかし一方で、言論の自由との兼ね合いなど、課題も多いといいます。
小学生が受けるSNS教育プログラム
糸魚川市内の小学校で行われていたのは、SNS教育プログラム。
生まれたときからインターネットが身近にある、いわゆるデジタルネイティブの世代に、情報モラルについて学んでもらおうと、新潟県教育委員会が開きました。
この日のテーマは、SNSでのコミュニケーションについてです。
子どもたちは、同じ言葉でも人によって受け止め方が異なることなどを学んでいました。
児童
「あの子に送ったら、嫌な気持ちにならないかなとか、ちゃんと考える」
「自分に送られてきて、嫌な気持ちになるスタンプは人には送らない」
いまも続く誹謗中傷 荻野由佳さんが願うこと
現在もネット上で誹謗中傷を受ける、荻野由佳さん。
食べ物も喉を通らないほど、苦しんだ日々が続きました。
自らの経験から、少しでもネット上で誰かを攻撃する人が減ってほしいと話します。
荻野由佳さん
「ネットは誰が書いているか分からない。
私以外にも、この時間もこの瞬間も、誹謗中傷を受けている方はすごく多いと思う。
言葉ひとつによって、命を絶ってしまう人だっている。
なにかを発言するときは、ちゃんと考えほしいと心から思います」
人の命をも奪いかねない、ネット上の誹謗中傷。
投稿者はこれまで以上に特定しやすくなりました。
いま、書き込む側の責任が厳しく問われています。