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”泊まれる劇場”がオープン 地元を盛り上げたい 運営するダンサー夫婦の挑戦《新潟》

2023年11月25日 18:22
”泊まれる劇場”がオープン 地元を盛り上げたい 運営するダンサー夫婦の挑戦《新潟》

宿泊施設のなかった新潟市秋葉区に11月、あるゲストハウスがオープンしました。運営を任されたのは地元に住むダンサーの夫婦。「泊まれる劇場」にしようというダンサーの夫婦。そのオープンまでに密着しました。

坂の途中に1軒のゲストハウス

新潟市秋葉区の旧新津市街地と秋葉山をつなぐ乙女坂。その中腹に11月3日、1軒のゲストハウスがオープンしました。「スロウプハウス」。坂の途中にあることから、そう名付けられました。

スロウプハウスはどんな建物?

江戸時代の武家屋敷を約80年前に移築。石油で富をなした大谷製油所の邸宅として使われていたものをリノベーションしました。

「舞台」がある

1階は様々な人が交流できるカフェスペースに。そして、小上がりになっている部分には、珍しい「舞台」に見立てた空間も。

地域住民
「空き家がこんな立派に生かされてすごくうれしいですね、近所に住んでいる者としては。建物が喜んでいるわ、再生してもらって。でもまさか、泊まれるような施設になるとは思わなかったです」

運営するのはダンサー夫婦

運営をするのは土田貴好(たかよし)さんと妻の小倉藍歌(あいか)さん。2人は秋葉区でダンスカンパニーを主宰するダンサーです。型にとらわれない自由な身体表現が特徴の「コンテンポラリーダンス」を踊ります。2人はヨーロッパなどで研鑽を積み、3年前、夫・貴好さんの故郷、秋葉区に移住しました。

土田貴好さん
「ベルリンにいた時に色々思うこととか気付くことがありました。帰ってきてからは、アーティストを外から呼んで、さらに色んな作品とか芸術を残していって秋葉を盛り上げたい、新潟を盛り上げたいという思いがありました」

2人は2018年から2年間ドイツ・ベルリンへ。そこで目にしたのは日常的な「劇場」という存在でした。そして2人は、アーティストが滞在し地域と交流する「アーティスト・イン・レジデンス」で地元を活性化させたいと考えていました。

小倉藍歌さん
「どういう風なゲストハウスにしようかというところで『泊まれる劇場』というサブタイトルを付けました。ここで演奏会とか踊りが披露されたりとか、ある時は家族がご飯食べていたりとか。人々が交流して語り合う、そういうことが起きたら日々楽しいし、地域もより元気になると確信しています」

日本でも劇場をもっと身近に感じ、体験してもらいたい。「泊まれる劇場」にはそんな思いが込められていました。

「建物」は地元の人たちが購入してリノベーション

鉄道の街として栄えた秋葉区ですが、コロナ禍の影響もあり宿泊施設が1軒もない状況に。そんな地域の課題を解決しようと、地元建築家や農家など18人によるまちづくり会社「パッチワークAKIHA」が発足しました。2人に声をかけたのは代表の馬場一也さんです。

パッチワークAKIHA 馬場一也さん
「ダンサーという職業柄なのでしょうけども、やはりその感覚というか目の付け所、視点も鋭いところがありました。街づくりについても彼らともお話をする中で、共通の認識、向かっていく方向が近いものがあったので、一緒にやらないかということで声をかけさせていただきました」

2021年、パッチワークAKIHAは建物を購入。なるべく既存の間取りや素材を活かし、今年秋にかけてリノベーションを進めてきました。

ダンススタジオもつながっている

土田さん夫婦はゲストハウスと並行し、商店街にあるダンススタジオも運営。現在は子供たち23人とダンスカンパニーのメンバー11人が活動しています。藍歌さんはこのダンススタジオでの活動もゲストハウス作りにつながるものがあると言います。

小倉藍歌さん
「地域の方には、坂の途中のスロウプハウスと、このスタジオで何かやっている人がつながって『あの人たちね』と知って欲しいです。外から来た人にはゲストハウスを通じてもっと街を知る関係づくりができればいいと思います」

田んぼでのダンス体験プランも準備

スロウプハウスで大切にしている地域との関係。農泊による支援制度を活用し、地元の農家「タカツカ農園」の田んぼで取れた米をフードメニューとして提供。さらに田んぼの中で踊る「泥ダンス」を始めとした体験プランを通じ、地元秋葉区の食や人とのつながりを作ります。

早速、子供たちの”劇場空間”に

オープンを前にした9月24日、地域の人たちにスロウプハウスがお披露目されました。舞台で行われていたのは音楽家によるパフォーマンス。舞台上の子供たちが音楽に乗せて踊り出し、会場一帯がまさに劇場空間に。

小倉藍歌さん
「きょう起こった演奏の形であったり、踊りの形が、必ずしもここの劇場の使い方の正解とかではなくて、来る人によって、演者によって、色々なものの見方が出てくるのではないかと。常に坂の途中で変化し続けるスロウプハウス、泊まれる劇場でありたいなと思います」

オープン準備に奔走 ついに完成

もみじが赤く染まり始めた11月3日、ついに完成したスロウプハウス。

土田貴好さん
「もう寝られなかったです、この1週間ぐらいは。毎日4時5時までずっと準備をやっていて。今日は1時間ちょっと寝られました。眠くないです、大丈夫です」

完成した内部は

完成したスロウプハウス。窓際には自習スペースにも使えそうなカウンター席。その隣にはプロジェクターを備え、様々な用途に使える舞台空間。洗面台の鉢は地元・秋葉区の工芸品、新津焼です。

宿泊客の感想は?

階段をのぼって二階にある宿泊スペースには新津の町を一望できるダブルルーム。向かい側には木のぬくもりも感じられるドミトリールームもあります。爽やかな風が吹く午前11時、「スロウプハウス」はオープンを迎えました。初めての宿泊客の1人はパフォーマンスに来たバイオリニストの女性でした。

バイオリニスト
「普通のドミトリーと違って1人1人区切られていてデザインも良く、ワクワクします。若い夫婦2人が着実に夢を切り開いているのが刺激になり、こんな素敵な形になっていて心から尊敬します」

オープン初日からパフォーマンス

舞台では県外で活動するアーティストがパフォーマンス。会場は独特な世界観に包まれます。そして藍歌さんがこれからの決意を語りました。

「自信をもって挑戦していきます」

小倉藍歌さん
「この宿を通じていかに世界とつながれるか、いかにここの場を拠点にして色んな表現や、色んな人と出会う場が作れるかという仕組みづくりを自分は努めていきたいと思っています。自信をもって今後も挑戦していきますし、自信をもって失敗もしていくと思います。そんな姿をスタッフとも共有し、子どもたちとも共有していきたいと思っています」

寝る間も惜しんで過ごした怒涛の日々。でも、2人に立ち止まっている時間はありません。

「坂の上に何があるかわからないけど頑張っていきたい」

土田貴好さん
「これからたぶん色々時間に追われたり、仕事に追われたりみたいな感じになってくると思うのですけど、ここがあることでさらに芸術界がどうなったりだとか、秋葉区がどうなったりだとか。坂の途中から上に行ったら何があるのかわかりませんけど、次なる課題とか目標をもって頑張っていきたいと思います」


2023年11月17日「夕方ワイド新潟一番」放送より
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