【消滅可能性自治体】岩手の79%が将来消滅する?自治体は強い危機感
(吉岡伸剛アナウンサー)
フカボリは、4月に発表があった消滅可能性自治体について三浦記者とお伝えします。
(三浦裕紀記者)
「消滅可能性」というインパクトの強い言葉ですが、発表した民間組織「人口戦略会議」がどのような自治体を消滅の可能性があるとしているかといいますと、子どもを産む中心となる20歳から39歳の女性の数が2020年から30年間で半数以下となる自治体を最終的に消滅の可能性があるとしています。
(吉岡伸剛アナウンサー)
人口減少が進み、自治体として運営できなくなってしまう可能性があるということですね。
(三浦裕紀記者)
はい、岩手の自治体で消滅の可能性があるとされたのが、盛岡や北上など内陸部の7つの市と町を除く26の市町村です。
(吉岡伸剛アナウンサー)
8割近くの自治体が消滅の可能性があるというのはとても心配になります。
(三浦裕紀記者)
対象となる女性の人口減少率が7割を超えているのが、この4つの町村です。なかでも普代村は、2050年までの30年間で減少率は県内で最も高い78.6%となっています。深刻な状況を改善しようと、村も様々な取り組みをしていました。
子ども園庭で気持ちよさそうに遊ぶ子どもたち。広い広い子ども園の園庭。しかし、遊んでいた子どもはわずかでした。
ボランティア
「絵本好きな人?」
この日は、ボランティアの人が絵本の読み聞かせに訪れていました。この子ども園に通っているのは、0歳から5歳までの35人です。読み聞かせをしていたこちらの女性は、かつてここで保育士をしていました。
元保育士
「(20年前は)70人も60人もいたが、どんどん少なくなって、まちを歩いていても子どもの声も聞こえないし、姿も見えない」
2020年の普代村の人口ピラミッドです。人口の4割を超える人が65歳を超えていて、40歳以下の人の数は少なく、高齢化が進んでいます。村は消滅可能性自治体の発表を聞いて…
普代村 政策推進室 中村克成室長
「公表されるとびっくりする。高校生までの医療費の無償化、保育料の無償化、給食費の無償化、看護、介護、保育職の養成奨学資金の貸し付けということで一定条件を満たせば返済免除という制度も運用している」
人口減少を抑えようと村も様々な取り組みをしていますが、その中で突き付けられた厳しい数字。村外から移り住んでもらう取り組みも強めていますが…
普代村 政策推進室 中村克成室長
「進学、就職期の若年世代の転出が大きな課題となっている」
(吉岡伸剛アナウンサー)
普代村に高校はありませんし、進学や就職で、一度村を離れた人が戻ってくるとうのは簡単なことではありませんよね。
(三浦裕紀記者)
人が流出してしまうという問題は岩手を含め東北の自治体で特に大きな問題となっています。今回の調査で全国の市町村の約4割が消滅可能性自治体とされましたが、東北地方は岩手で79%、秋田で96%、青森で88%などと最も深刻な地域となりました。その中、10年前の調査で消滅の可能性があるとされた自治体の中で、減少率の改善が見られ消滅可能性自治体から脱却したところもありました。県内では唯一、矢巾町がその自治体です。
ご機嫌斜めだったのか、大きな泣き声が響いていたこちらの部屋。矢巾町で一時的に子どもを預かってくれる場所です。町の施設で最初の1時間は300円と気軽に利用することができます。
矢巾ゆりかご 半澤久枝理事長
「お母さんでリフレッシュ目的が一番多い。こういう理由じゃないと預けられないということがお母さんのハードルを高くしているところがあるので、リフレッシュで預ける人が多いです。というと驚かれて」
同じ階には、親子で遊べる広いスペースもあり、町内に住む人であれば無料で利用できます。
利用している人
「スタッフも多いので、ありがたい。サポートしようというのが、そもそもすごくありがたくて、助かっている。矢巾町、ありがたいと思っている」
矢巾町は、若い女性の減少率が10年前の51.6%から10ポイント近く改善しました。
矢巾町 高橋昌造町長
「(消滅可能性自治体を脱却して)正直なところほっとしている。岩手医科大学の大学キャンパス、附属病院、岩手医大効果は大であり、波及効果は計り知れない」
2019年に岩手医大付属病院が矢巾町に移転し、病院関係者が町内に移り住んだことが大きいと高橋町長は話します。10年前に比べ改善はしたものの町は、将来に対する危機感は依然強く持っています。今年度、子育て対策にとりくむ新たな課も設置しました。
矢巾町 高橋昌造町長
「出生率の向上とか子育て支援策の充実などに取り組んでいかなければならない思いを強くしている」
同じく強い危機感をもっているのが、現時点、消滅の可能性があるとはされていない北上市です。企業誘致に成功し、近年、転入者が転出者を上回っていますが、10年前に比べると若い女性の減少率が4.4ポイント悪化しました。
北上市 政策企画課 金田明課長
「若年層の人口流出も市の中では大きな課題、若年層人口流出というものをある程度抑えるために大学の設置も検討を進めている」
(吉岡伸剛アナウンサー)
矢巾町も北上市も現時点、消滅可能性があるとされていませんが、危機感を持って人口減少対策に取り組んでいるのですね。
(三浦裕紀記者)
今後どのようなことに取り組んでいけばいいのか盛岡市の地域づくりを指導する県立大学の新田教授に聞きました。
県立大学 総合政策学部 新田義修教授
「市町村独自の対応ではなかなか解決できない社会構造になっているのではないか」
新田教授は、女性が働く場所をよくしていくことが大事と話します。
岩手県立大学 総合政策学部 新田義修教授
「育てる母親の仕事を続けられるかも大事なところかなと思っている。子育て終わった後に同じ条件で働けるのもこれから求められるし、それがあるからこそ職場であるとか地域で選ばれると思う」
(三浦裕紀記者)
子どもの数が減り続けている今、特効薬といえる取り組みはないのかもしれませんが、自治体の支援に加え、わたしたちも職場や地域で子育てをしやすい環境をつくっていくことがプラスに働いていくと思いました。