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食料クライシス②野生動物から家畜を守る

2024年7月16日 18:59
食料クライシス②野生動物から家畜を守る

 日本の食料の危機的な状況と、これを乗り越えようという取り組みを紹介するシリーズ「食料クライシス」。2回目はクマやイノシシなど野生動物から家畜を守る手立てなどについてお伝えします。まずこちらをご覧ください。

 こちらは岩手県がまとめたクマによる人身被害のまとめです。2017年度は17人が被害に遭っていましたが昨年度は49人と6年で3倍近くに増えています。

 人身被害がそのまま家畜への被害になっているというわけではありませんが、野生動物による家畜への被害を防ぐための手立てが研究されています。

 6月18日、雫石町にある岩手大学附属御明神牧場で放牧している牛を牛舎に帰す退牧が行われました。農学部の出口善隆教授と牧場の職員学生らが林の下で涼んでいる牛を集めました。

(職員)こーこーこーこー

 牛を放し飼いにしているのは日本の国土の7割を占める森林を活用して、牛に下草などをエサとして食べさせて、エサの自給率を上げること。それに牛を放牧することで、野生動物を人が住む里に近づけないことができないか研究しています。

出口教授
「最近の野生動物と人間の被害とかあつれきを生じているのは奥山と同じような状況が耕作地近くまで押し寄せているというところがあるので、昔の里山の機能を復活させるのに牛を使って林の中に牛を放すことで復活できないかと考えたのが最初です。里山は昔 たき木を拾ったり家畜のための草刈りをやったりという形で見通しが良かった里と奥山の間の緩衝帯という形になって奥山の野生動物が出にくいという状況があった。その状況をもう一回再現できないかと考えました」

 出口教授は、御明神牧場の12か所にカメラを設置し24時間体制で野生動物が現れる様子を撮影、監視しています。撮影を始めた2018年から2022年までに撮影されたニホンジカは142頭から39頭へとかなり減って、シカの出没を減らした成果が現れました。しかしクマに関してはあまり効果が見られませんでした。

出口教授
「牛を放牧しているということは必然的に柵が作られるという事なので柵の効果も含めてなんですが、シカはてきめんに来なくなった。これは(シカが)牛と同じものを食べているというところもあると思います。クマにつきましては牛を怖がっていないような感じはありますが、ただ牛と一緒に撮影されたりとか確認されたりはないのである程度警戒しているのかと思いますがシカほどは効果がない」

 一方、空から野生動物による被害を把握する取り組みも行われています。日本草地学会の会長で岩手大学農学部の築城幹典名誉教授は、ドローンを使ってクマによる食害を把握しました。

築城幹典名誉教授
「クマがトウモロコシを食べたりとかシカが牧草を食べたりそういうことが問題になります。そういう侵入状況を把握するのも上空から見るドローンが非常に的確にできる可能性があるということで、そういう研究も行っています例えば電気牧柵を張るとかそういう対策に結びつく」

 日本で家畜に与えるエサのうち自給しているのは、わずか25パーセントしかなくこのことが、牛や豚、鶏などの自給率の低さとなっています。このため築城名誉教授はドローンで牧草を栽培している採草地の様子を把握し自給率向上につなげようとしています。

 この画像はドローンで撮影した採草地にどれくらい雑草が混じっているかを解析したものです。

築城名誉教授
「雑草はやっぱりエサとしての質が下がったりとかあるいは収穫量が下がったりということが問題となるので、そういうのを(雑草の混在具合)的確に見つけて対策をとることでエサを確保するということで進めている。Q そうすることによって自給率も上がっていくということですね?そういうことにつながるように研究を行っています」

 最近の学生はデジタルネイティブと言われる世代で、生まれたときにはインターネットやSNSの環境が整っていました。それだけにドローンで得られたデータをAI技術で解析するなどのことを容易にこなしています。築城名誉教授はこうした若い力が、農業生産の技術の発展にも寄与するものと期待しています。

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