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「内水氾濫」に備え「輪中堤」整備した戸沢村蔵岡地区 想定外の「外水氾濫」で多数の浸水被害

2024年8月6日 17:25
「内水氾濫」に備え「輪中堤」整備した戸沢村蔵岡地区 想定外の「外水氾濫」で多数の浸水被害

緊急報告・豪雨被害の現場から。2回目は、最上川が氾濫しほとんどの住宅が浸水被害を受けた戸沢村蔵岡地区です。去年、新たな堤防が整備されるなど対策が講じられていましたが、甚大な被害を防ぐことはできませんでした。水害はなぜ繰り返されたのか。専門家の見解を交えお伝えします。松山大雅記者のリポートです。

7月26日の午前10時ごろ、戸沢村蔵岡地区で撮影された映像です。住宅の1階部分が茶色く濁った水に浸かってしまっているのが分かります。映像はこの住宅の2階から撮影されました。住民の川窪啓一さん(59)です。家族3人で避難所に向かおうとしましたが、氾濫した水が住宅の前まで差し迫っていたためやむを得ず2階に避難しました。

川窪啓一さん「自衛隊からヘリで救助してもらった。命が助かったのでよかった」

7月25日からの記録的な豪雨で戸沢村蔵岡地区では最上川の水が堤防を越え、およそ70戸が浸水被害に遭いました。地区内にある唯一の商店です。住宅を兼ねた店内は浸水し、商品の他、家財道具のほとんどが土砂に飲み込まれました。それでもなんとか残ったものもありました。

芦原良子さん「家族の写真です。思い出の写真。みんな写真を撮るのが好きだから」

店主の芦原良子さん(85)です。芦原さんは今回の豪雨で明治時代から100年以上続いてきた店をたたむことを決めました。

芦原さん「商売を続けようかとも思ったけど、今回でもうあきらめました。 やっぱり水にはかなわないね」

小さな集落に深い爪痕を残した今回の豪雨。なぜ被害はこれほどまでに拡大したのでしょうか。

松山記者リポート「時刻は午後2時半です。国土交通省のメンバーらが欠損した堤防などを視察しています」

7月31日、国の調査委員会が蔵岡地区に入り、現地調査を行いました。過去の水害を契機に、堤防を兼ねてかさ上げされた国道47号でしたが、今回の豪雨で川の水があふれ、およそ100メートルにわたり崩れ落ちました。国交省新庄河川事務所によりますと7月26日の午前2時からおよそ8時間にわたって最上川の水が堤防を越え、地区内に流れ込んだとみられています。
調査委員会で委員長を務める東北大学の風間聡教授は堤防について「粘り強く持ちこたえた」と一定の評価を示しています。

風間聡教授「強く印象に残ったのは、8時間も堤防を水が越えているのに壊れないで済んだことは特筆すべきところ」

松山記者リポート「先日の大雨で大きな被害が出た戸沢村蔵岡地区です。きょうの大雨で再び道路が冠水しています」

蔵岡地区はこれまで、幾度となく大規模な浸水被害に見舞われてきました。2018年8月には2度にわたって地区全体のおよそ80戸が被害を受けました。
風間教授は2018年のケースと今回では水害のメカニズムに違いがあると指摘します。

風間教授「2018年は戸沢村の南のほうで雨が降って一気に押し寄せて最上川に水が出切らず、支流の角間沢川が氾濫し住宅地に水がたまる。今回は本線の水がたくさんあったので、堤防の上からあふれてどんどん入ってきて住宅地が浸水した形。外水か内水かの違い」

風間教授によりますと2018年のケースは堤防の内側にある川、いわゆる「内水」によって水害が発生する「内水氾濫」とよばれるパターンでした。一方、今回は堤防の外側にある最上川、「外水」の水が地区に流れ込んだことによる「外水氾濫」だったと説明しました。
県は2018年の内水氾濫を受けおよそ14億円をかけて地区を囲むように堤防を設ける「輪中堤」を去年、完成させていましたが、今回はその想定とは異なる氾濫のパターンでした。

風間教授「輪中堤というのは内水氾濫に対して防ぐための堤防なので、外水に対しては考えられていなかった。今回は全く輪中堤は無力という形。 外水には機能していないので」

度重なる浸水被害に住民からは「住み慣れた土地を離れなければならないのではないか」との声も多く聞かれています。

蔵岡地区の住民 佐藤一春さん(79)「水の心配がないところに集団移転するしかない。6年ほど前にもこんな目に合っている。もうここは住むところじゃない」

風間教授は住民がより安全な場所に移り住むことや高床式の住宅を導入するなどさまざな選択肢があるとしていますが、国や行政が住民の意向を尊重することが重要としています。

風間教授「どういったことができるのかお金のしばりもあるので、将来、蔵岡地区をどうしたいか議論していくことが大事」

浸水被害に繰り返し襲われた蔵岡地区。国や行政には住民に寄り添った支援が期待されます。

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