【聖地で開幕】「競技かるた」全国大会 全国の代表58校が激突『ちはやふる』高校生の熱い夏 滋賀
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映画化もされた人気漫画『ちはやふる』の影響で一躍人気となり、競技人口が増えている「競技かるた」。部活動としても盛んに行われるようになっている。
そんな競技かるたの全国大会が20日、幕を開けた。
場所は“かるたの聖地”と呼ばれる滋賀県大津市の近江神宮。百人一首の第一首を詠んだ天智天皇が奉られている。
全国から予選を勝ち抜いた58校が日本一の称号をかけて火花を散らす、長く熱い一日が始まった。
今年で46回目を迎えるこの大会は、別名「かるたの甲子園」。一発勝負のトーナメント戦だ。
1回戦は午前9時から一斉に始まった。
異様な緊張感に包まれる中、いち早く一回戦に勝利したのは、黄緑のジャージを身にまとう京都府代表・大谷高校。しかし、これまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。全国大会出場までの軌跡を追った。
2年生部員
「めっちゃ負けてるときに、大丈夫よ、次1枚取ろう、1枚ずつ取っていこうみたいに言われるとうれしい」
競技かるた部主将・植野葉月
「負けてるときに大丈夫って言われると彼女頑張れるんですけど、私は負けてるときに声かけられるとムカつくので。話しかけるなって言ってるんです」
強き者は、考え方が違う。
1年生部員
「もう嫌や…」
2年生部員
「全然まだまだ弱いから…」
彼女の輝きに引き寄せられ、強き者も弱き者も全員で目指した全国の舞台。
競技かるた部主将・植野葉月
「負けないです、私たちは。言い聞かせましょう、あなたは負けない」
『ちはやふる』に勝るとも劣らない、畳の上の青春。高校生の熱い夏。
京都市にある、私立・大谷高等学校。
競技かるた部は、創部7年の若きチームだ。目指すのは、「全国高等学校かるた選手権大会」への出場。
競技かるたは、百人一首の上の句を「読み札」、下の句を「取り札」とし、1試合で使われるのは100枚の中から無作為に選ばれた50枚。
まず25枚ずつをお互いが自由に配置し、配置された札を記憶する。読まれた上の句に続く下の句を取り合って、自陣に置かれた札を先にすべて無くした方が勝ちだ。
相手陣の札を取ることは「抜く」と呼ばれる。抜いた場合は相手陣が一枚減ってしまうため、自陣から一枚札を「送る」ことができる。
競技かるた部主将 植野葉月
「絶対勝たなあかんなってわかってるから、意識していることは、とりあえず勝つこと」
大谷高校の主将を務めるのが3年生で「A級」の植野葉月。
競技かるたは、選手の段位(強さ)に応じて、A級からE級に分けられる。葉月は最高位A級の中でも、世代屈指の実力者。競技かるた部の精神的支柱だ。
大会は、各チーム5人が一斉に試合を行う団体戦。メンバーが3勝以上したチームの勝利となる。
大谷高校はA級の選手が2人、B級の選手が2人、それ以外は全員C級以下。強い選手がいる一方、5人のメンバーのうち1人はC級の選手が出場することになる。
京都府予選1か月前の5月。他校や大学生、OBを招いた団体戦の練習試合が行われた。その中で1人苦しそうに戦うのが、3年生でC級の長谷川優。格上のA級相手に気後れし圧倒されていた。
主将 植野葉月(A級)
「頑張れ、まだいけるよ。」
主将の葉月が試合中に声をかけ励ます。しかし、結果は敗北。
格上の選手に勝つことは簡単ではない。しかし、団体戦では、実力で劣る選手にも重要な役割がある。それが「負け方」だ。
練習相手の大学生
「勝てなくても、下の級の子が相手のめっちゃ強い人相手に善戦してるというだけでチームメンバーは鼓舞される。あいつがあんなに頑張ってるねんから俺も頑張らなってなるし。勝てなくてもチームの流れは作れる、誰しも作れる」
5人が並んで一斉に戦う団体戦では、1人が相手に圧倒され悲壮な雰囲気を出してしまうと、他の選手にもマイナスの影響を及ぼしてしまう。逆に、個人の粘りや奮闘が周りの士気を高め、実力以上の力を引き出すこともある。
たとえ相手より実力で劣るとしても、ひるむことなく全力で「粘り続けること」がチームの勝利につながる。
主将・植野葉月
「他の子の方が結構プレッシャーかかっているんじゃないかなと思っていて。私も勝たないといけないんですけど、5人中3人勝つってことは、他絶対2人勝たないとダメじゃないですか。それを4人が勝たないと、と思うと、私よりしんどいと思うし」
団体戦は1人が強くても勝つことは出来ない。勝気な発言が目立つ葉月だが、メンバーが力を発揮できるにはどうすればいいのか、頭を悩ませていた。
3年生・長谷川優(C級)
「メンタルも自分では落ち着いてるつもりだけどダメになっているときもあるから、そこは気を付けたい」
主将・植野葉月
「私たちは負けない。言い聞かせましょう、あなたは負けない」
6月16日。ついに運命の京都府予選の日を迎えた。
大会は1発勝負のトーナメント。全国大会へ出場できるのは京都府で1校、優勝校のみだ。
2回戦を突破した大谷高校の準決勝の相手は、名門・洛南高校。過去18度の全国出場を誇る絶対王者で、大谷高校と並ぶ優勝候補だ。互いの実力は拮抗しているが、洛南は全員がB級と隙の無いチームだ。
序盤はお互いに一歩も引かない攻め合いが続く。会場の熱気、緊張感はこの日最高潮に。この試合が事実上の決勝戦となることを誰もが理解していた。
先に主導権を握ったのは洛南高校。大谷のB級選手(1年生)が、「絶対勝たなければ」というプレッシャーから思うように手が出せない。立て直すことができないまま、洛南が1勝を先取する。
主将・植野葉月
「大谷ここからいくよ!」
粘りを見せているのは、大谷高校の3年生、C級の長谷川優。
大会前の5月の練習試合では気持ちで圧倒され、敗北したが、格上相手にくらいつき互角の戦いに持ち込んでいる。
その頑張りに答えるように、主将の葉月らA級の2人が実力を発揮し、大谷が2勝。試合をひっくり返した。
3人の勝敗がつき、逆転で王手をかけた大谷高校。
残るは2人。競技かるた部の部長、3年生の武田至(B級)と3年生の長谷川優(C級)だ。
先に勝負が動いたのは武田だった。相手も同じB級で、逆転に逆転を繰り返す接戦の中、最終盤で武田が痛恨のお手つき。洛南が土俵際で踏みとどまり、逆王手をかけた。
試合の行方は、C級の長谷川優に託された。
激戦の末、勝負は、お互いの陣地に札が一枚ずつ残る「運命戦」に。
運命戦では相手陣地の札を抜くのは難しいため、お互いが自陣の札を守り合う。すなわち次の一枚、自陣の札が読まれた方の勝利。祈ることしかできないため、「運命戦」と呼ばれる。
緊張の中…、読まれたのは大谷陣地の札だった。
洛南の選手も最後まであきらめずに大谷の陣地へ手を伸ばす。しかし、優は冷静に反応し右手前の札を払った。格上相手に粘り続けたC級の優が一枚差の激闘を制し、大谷高校は決勝進出を決めた。
3年生・長谷川優
「自分が勝たないといけないってわかった瞬間、超きつかったし、その時がちょうど負けていたタイミングだったので余計きつくてどうしようかなって。自陣が読まれた瞬間はうれしくて」
主将・植野葉月
「もう不安で怖くて仕方がなくて、最後泣いちゃいました。」
試合が決まった瞬間、主将の葉月は崩れ落ちるように泣き出した。
団体戦ではたとえ自分が強くても、最後は仲間を信じて待つことしかできない。
勢いそのままに、決勝戦は大谷高校が5-0で勝利。念願の全国出場を果たした。
■“聖地”で繰り広げられる熱き戦い あす21日は個人戦
全国398校の頂点を目指して火花を散らす「かるたの甲子園」。
大谷高校は、1回戦を5-0で勝利し2回戦に進んだ。仲間を信じて全力で戦う高校生たちの青春の日々は続く。
あす21日は、1697人が参加する個人戦が行われる。