【独自解説】ロシア軍機が日本の領空を侵犯 航空自衛隊が初めて「フレア」による警告実施 領空侵犯機にできるのは「退去」と「着陸」 今後自衛隊法第84条はどうなる?武器使用の明記で変わる各国の対応
■実際に領空侵犯機を撃墜すると後始末が大変 トルコとロシアの場合は…
では、「世界の常識は撃墜することだ」といいますが、実際に撃墜してしまった場合、これは国対国の問題になって、国と国の力がもろにぶつかり合うことになり、後始末がもう大変になります。それが2015年のトルコとロシアの間でありました。
この2国は、両方とも軍事大国です。ロシアは圧倒的な大国で核保有国です。トルコ側の主張は、「ロシアの爆撃機が国境を越えて入ってきた。10回警告したけど言うこと聞かなかった」というものです。ロシア側は「いやいやそんなことはない。もうあっという間に落とされた」と主張して、お互い相手を非難し合いました。
しかし、こういう時にロシアは大国の力を使います。トルコはロシアからエネルギーも含めていろんな貿易をしていました。そこでロシアは経済制裁をおこないました。エネルギーなどでトルコはその喉元を締め上げられました。結局、7ヶ月後にこの誇り高いトルコ・エルドアン大統領がロシアに謝罪して、領空侵犯した方のロシアが「そんなに謝るんだったら許してやるよ」というような感じになって、しこりが残っていると言われています。
残念ながら、トルコとロシアのように、より大国の方が押し切ってしまうとなると、その時に撃墜をして、国民の憤懣(ふんまん)は晴れても長期的に見ると利益になるかどうかは難しいといえます。
■今後自衛隊法第84条はどうなるのか?武器使用の明記で変わる各国の対応
今回、自民党の総裁選や立憲民主党の代表選などが行われている中で、先ほどの自衛隊法第84条が、「このままでいいのか」という声はもう上がっています。
この自衛隊法第84条、領空侵犯の対処ですが、「着陸をさせる」か「わが国の領域から退去させる」ということだけが明文化されていますが、この「必要な措置を講じる」というところに「武器使用」という言葉を入れるかどうかです。この「武器使用」を入れると、「即撃墜か」と思われる人もいると思いますが、これは相手からすると自衛隊が取る手段が増えるということです。今回は「フレア」です。その前は無線で呼びかけるか、機体を相手から見えるところへ翼を振る国際的な警告を行うかでした。ただ相手は武器を使われるという恐怖は感じません。