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【独自解説】『火星の石』は大阪・関西万博に“一石”を投じられるか?関係者からは「目玉ではない」の声も…カギは、人類にとって重要な惑星の“物語”を紡げるか―

2024年9月23日 8:00
【独自解説】『火星の石』は大阪・関西万博に“一石”を投じられるか?関係者からは「目玉ではない」の声も…カギは、人類にとって重要な惑星の“物語”を紡げるか―
『火星の石』は万博の目玉になれるのか?

 2024年9月17日、大阪・関西万博での展示が正式に発表された『火星の石』。万博に様々な課題が指摘される中で、“一石”を投じられるのか?「行ってみたい」と思える万博に必要な“物語”とは?現場の取材を続けている、『読売テレビ』平田博一記者の解説です。

■地球から火星まで、新幹線で21年⁉各国が探査に乗り出す注目の惑星『火星』

 国立極地研究所の分析によると、今回の『火星の石』は約1000万年前に火星を離れ、その後かなり長い年月をかけて、地球に到達したのが約数万年前といわれています。

 実は、発見したのは日本の観測隊で、2000年に南極の『昭和基地』近くで採取されました。火星に関する隕石としては、世界最大級だということです。

 『火星の石』を保管している国立極地研究所の担当者によると、「『火星の石』は火星に水があることを証明する、とても意義のあるもの」だということで、“人類が火星に進出する夢に一歩近づくものではないか”という期待の声があがっています。水があることは、人類にとって、非常に大切なことだからです。

 火星は地球の半分ぐらいの大きさで、氷点下130℃~30℃ぐらいの気温を維持していています。

 また、各国は今、火星の探査を進めていて、少し遠い将来かもしれませんが、「人類にとって非常に重要な惑星ではないか」ということで、アメリカなどの大国が調査を続けています。

 地球からの距離は、ここ最近最も近づいた時で、なんと約5700万km。「遠すぎてわからない」かもしれませんが、時速約300kmの新幹線でずっと走り続けたとしても、21年かかるほどの距離です。

 ちなみに、1970年の大阪万博で注目を集めた『月の石』ですが、月と地球の距離は時速約300kmの新幹線で2か月ほどですので、この半世紀で人類の研究がいかに進んだかということがわかるかと思います。

■ことしに入り急浮上も「目玉ではない」?前売り券販売が低調な中、『火星の石』が一石投じるか!?

 実は、『火星の石』を万博で展示するという話は、2024年に入って急浮上したということです。関係者に取材したところ、経産省の役人さんが「今までなかなか公開されていないもので、何か注目を集めるものがないか」ということで、この『火星の石』に目をつけたということです。

 一方で、万博関係者からは、「『火星の石』は目玉ではない」という声が聞かれました。万博に関する取材を様々進める中で、その背景には、「目玉にはなれない」事情があるのではないかと感じています。

 これまで万博を巡っては、様々な“目玉になり得るもの”が紹介されてきました。

 1つ目が、『空飛ぶクルマ』です。当初は、『2つの地点の間を、人を乗せて移動できる手段』として期待されていましたが、現状、万博で空飛ぶクルマを運航する予定の4つの事業者のうち2つの事業者はすでに、「客を乗せた運行は断念する」と発表しています。当初思い描いていた計画通りにはいかない状況になっています。

 このほか、『大屋根リング』や『iPS細胞を使った動く心臓』などが、これまで目玉になると言われてきましたが、肝心のチケットの売り上げはというと、前売り券の販売目標1400万枚に対して、現状、約500万枚(2024年9月11日時点)と目標の4割未満にとどまっています。

 この販売状況について、経済界の関係者に話を聞くと、「前売り券については、関西を拠点にする企業などを中心に経済界が約700万枚購入する意思を示していて、経済界からの購入は進んでいるが、一般の方からの購入が思うように進んでいないと思う。お金を払ってでも行きたいと思えるような展示が、まだ見えていないのではないか。また、PRも不十分ではないか」という指摘をしていました。

■「いかに“物語(ストーリー)”を伝えられるか」『火星の石』の役割とは―

 2024年秋は“パビリオンなどで展示されるものが次々と発表される時期”といわれています。

 ただ、今回“目玉”になるかもしれないと注目されている『火星の石』に関しても、国立極地研究所では、万博で展示されるものとは別のものにはなりますが、“火星の隕石”というのは、既に展示されています。

 また、世界最大“級”とは言いますが、他の国では同じぐらいの大きさのものが既に発見されているということで、『火星の石』という“モノ”だけで「見に行きたいか」と言うと、それは人によって、意見が分かれる部分だと思います。

 そんな中で大切になってくるのは、「物語」ではないかと感じています。「いかにその裏側にある“物語(ストーリー)”を伝えられるか」ということが、カギになるのではないかということです。

 今回の万博は“未来社会の実験場”ともいわれています。先ほどお伝えしたように、『火星』は今後の人類にとって非常に重要な惑星だと考えられていますので、そのような裏側にある“物語”を伝えられるような展示を行い、「行ってみたい」と思える万博を形作っていくことが今後、重要になると思います。(『読売テレビ』平田博一記者)

(「かんさい情報ネットten.」2024年9月17日放送)

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