香川のサッカー界全体で前へ 高校サッカー
第100回全国高校サッカー選手権大会。香川県代表の高松商業高校は2回戦からの登場で茨城県代表の鹿島学園高校と対戦しました。試合は鹿島学園が効果的に得点を挙げて2-0で勝利しました。試合を振り返り、初戦で敗れた高松商業のこれからを展望します。
■試合の振り返り
去年の大みそかに初戦を戦った高松商業。全国制覇を目指した相手に対して、全国大会は4年ぶりで選手たちは全国の舞台が初めてという中、高松商業の川原寅之亮監督は、鹿島学園の強力なサイド攻撃を封じるために、本来は左サイドバックで主将の佐藤海七多選手(3年)を左の中盤の位置で起用しました。その左サイドバックの位置にはセンターバックを務める浅井七瑠選手(2年)を起用しました。そうすることで守備的な選手が増えサイドの守備が厚くなりました。さらに県大会で活躍をしていたフォワードの鍋島愛翔選手(2年)をベンチスタートにする選択をしました。
試合が始まると序盤は高松商業がうまく試合に入ります。試合のファーストシュートは前半3分、高松商業の鈴木康生選手(3年)のロングシュートでした。このシュートは相手のゴールキーパーの正面でしたが、その後、鈴木選手と與田拓海選手(3年)のコンビネーションから杖池秀太選手(3年)がシュートを放ち決定機をつくりました。
しかし、前半終了間際に右サイドからのロングパスを受けた鹿島学園の上野光永選手(3年)がペナルティエリアの外側から放ったミドルシュートが決まり先制を許します。
早く同点に追いつきたい高松商業でしたが後半5分、先制ゴールを挙げた上野選手が、左サイドでペナルティエリア内からフリーのスペースに下りてきた松村尚樹選手(3年)にパスを出すと、松村選手が素早く反転し右足を振りぬきます。この低い弾道のミドルシュートが右ポストに当たりそのままゴール。点差を広げます。
その後は余裕が出た鹿島学園がボールをポゼッションします。高松商業はベンチスタートの切り札、鍋島選手が交代で出場すると持ち前のドリブルで好機を演出します。ただ、鹿島学園のゴールを割ることはできず0-2のまま試合は終了しました。他会場では雪も舞った大みそかの選手権。大宮のスタジアムに差し込む西日は高松商業の選手たちの涙を映していました。
■全国との“差”と“気づき”という収穫
試合後、川原監督は試合を振り返って「県大会決勝後に全国レベルの強豪校と練習試合ができて、いい準備ができていた。入りは良かったが失点をした時間帯が良くなかった。もっとラインを上げたかった。差も感じた一方で通用した部分はあった」と話しました。
主将の佐藤選手は「個の能力など差を感じた。香川では勝てても全国では勝てない。後輩たちにはこの悔しさを糧に来年リベンジをしてほしい」と振り返りました。
試合は高松商業が組織的なプレーで粘り強く戦いましたが、監督と選手から出た「差」という言葉。その「差」について具体的に聞くと「基本的な止める・蹴る技術、パワーやスピード」などの言葉が挙がりました。では今後、高松商業だけではなく香川の高校サッカー界全体で全国との差を小さくしていくためにはどういうことが必要になるのでしょうか。香川県サッカー協会の嶋靖博会長は「全国と互角に戦うためには、香川県はもとより、四国全体のレベルアップが求められる。県内の指導者と選手により高い技術、スピ―ド、パワーを今まで以上に意識してもらいたい」と話しています。
また、高松商業の監督時代に選手権県大会10連覇を成し遂げ、その後も香川のサッカーの発展に尽力した山下憲一氏は、「香川の高校の多くは普段の練習を土のグラウンドでしている。環境面も含めて整備していく必要がある。あとJリーグのチームの存在は大きい。鹿嶋にはJ1の鹿島アントラーズがあって、選手たちは小さいときから高いレベルのサッカーに触れることができる。香川にはカマタマーレ讃岐があるので、もっと盛り上がっていくことができたら」と話します。
香川県は選手権が首都圏開催となった55回大会以降の都道府県別の勝利数が全国最少です。川原監督には試合後、香川県の小中学校のサッカー関係者から「足りない部分に気づくことができた」という連絡が複数あったといいます。主将の佐藤選手は「サッカーを通して出会えた人や学べたことがあった。将来はサッカーに関わる仕事がしたい。大学は県外に出てサッカーを続けるので、香川に戻ってきてサッカーに関われたらとも思う」と語っていました。
第100回大会での高松商業の戦いは、カマタマーレ讃岐から高校年代、さらにその下の年代、プロもアマチュアも含めた香川のサッカーの界の今後の大きなきっかけになるかもしれません。
(取材・文 高校サッカー選手権民放43社/西日本放送)