【独占インタビュー】16日に出産後初の大会出場へ レスリング東京五輪金メダリスト金城梨紗子「腹筋の力の入れ方が分からなくなっていた」
レスリング東京五輪金メダリスト金城梨紗子選手
東京五輪で2大会連続の金メダルを獲得したレスリング・金城(川井)梨紗子選手(27)。プライベートでは、大会後に元レスリング選手の金城希龍さんと結婚し、今年5月に第1子を出産しました。
そして、出産からわずか2か月後の7月。金城選手はパリ五輪に向けて、レスリングの練習を再開。
12月から始まるパリ五輪の国内予選に向けて、10月16日の全日本女子オープンレスリング選手権大会で、産後初めての試合に出場する予定です。
高みを目指し続ける金城選手に、独占インタビューをしました。
以下、主な一問一答。
――東京五輪での快挙を振り返って。
「だいぶ前だな(笑)1年以上たって、懐かしいなと。だいぶ生活も変わりましたし、オリンピック終わってから、バタバタしていた日々だったんですけど、もうそれも落ち着いて日常に戻った。懐かしいなと思っています」
――妊娠中、レスリングはどう見ていた?
「妊娠したと分かった時は、小学生の時にレスリングを始めてから20年間、大きいケガもしたことがなかったので、レスリングをしたくてもできない状況が、今までなかったんです。赤ちゃんができて、何があるのか分からないから練習はもちろんやめたんですけど。練習を見ていると、うずうずしていましたね。早くやりたいなというふうに」
――妊娠中にレスリングを見ていて感じたことは?
「子どもを出産して、6月の全日本選抜選手権で、初めて私が出場せず、妹の友香子だけが大会に出た。今までそういう状況がなかったんですよね。いつもは自分の試合のことでいっぱいいっぱいだったのが、客観的に、冷静に友香子の試合を見られて。結果、友香子は負けたんですが、それも含めて、この経験できるレスリングがやっぱりいいなって。今までは勝つことが全て。今も勝ちたいとは思ってますが、勝ちも負けもひっくるめて、スポーツっていいなと、見方が変わりました」
――育児で大変なことは?
「生まれてすぐ、新生児の1か月は、どこの赤ちゃんもそうだと思うんですが、昼と夜の区別がつかないんですよね。だから本当に寝なくて。寝かしつけようと思って、夜布団に入っても寝ない。ミルクあげて、寝かせて、というのを繰り返して、ぱっと外を見たら朝になってる時もあって。寝不足がしんどかったです」
――子どもが生まれ、練習の取り組み方に変化は?
「誰か子どもを見てくれる人がいないと、私が練習できないので、練習できる頻度はすごく限られている。今までは毎日自分のためだけに練習出来ていたのが、週に3回、4回とか。日本代表の合宿に行けば毎日練習できるんですが、その時は誰かに子供を預けている。練習量は落ちてるんですが、その分短期集中。短い時間にぎゅっと固めた練習をするよう意識してます」
――体の変化は?
「子どもの1か月健診が終わるまでは『お母さん何もしないで』と言われていた。1か月健診が終わった時に、病院に相談して『徐々に軽い運動からならいいですよ』と、言われてランニングを始めた。マットでレスリング始めたのは出産から2か月たってから。その時は出産前、当たり前にウオーミングアップでやっていたマット運動ができなかったり、準備運動のブリッジもできなかったり『うわぁ、やばいな』と、思ったんですが、自分がそこまで出来なくなった焦りよりも、『ここまで人って変わるんだ』って、初めての経験で。ある意味ちょっと楽しんでいた。出産ってすごいなと、改めて身をもって実感しながら、練習をなんとか頑張っているうちに、少しずつ動けるようになって、今に至ります」
――体を戻すために取り組んだことは?
「産後はホルモンのバランスが違うので、国立スポーツ科学センター(JISS)の産後サポートに連絡を取って、いきなり五輪前にやってたトレーニングに戻すのではなく、産後の体に合ったトレーニングを、本当に基礎的な、地味なトレーニングから始めました」
――具体的にどんなトレーニングをした?
「おなかが大きかった時期が長いので、腹筋の力の入れ方が分からなくなっていたのと、腰が反っちゃうんですよね。骨盤底筋という筋肉と、横のコルセットになるような部分や腹式呼吸。呼吸から見直した」
――家で子育てをしながらトレーニングはする?
「練習の頻度が少ない分、寝かしつける時についでにスクワットしちゃおう、くらいでやったりします(笑)軽く負荷になるので」
――女性アスリートが競技復帰できる環境については?
「東京に住んでるとJISSの施設が使えると思うんですが、私は普段地方に住んでいるので難しい。ただ、実家が石川県なので、住んでいる福井県と近い分、支援を受けながらできるとは思う。全国どこにいても、女性がスポーツで戻ってくるというのは、まだまだ難しい社会なんだろうなと感じます」
――今後どう変わればいいと思う?
「スポーツだけでなく、女性が子供を産んで社会復帰するのは、男性と比べて、すごくハードルが上がると思う。それが女性だけのハードルになって欲しくないというか、私1人が何かを変えられるとは思ってないんですが『社会復帰に向けて、ちょっと必死になって、頑張っている女性がいるんだぞ』ってことを知ってもらえれば、勇気づく人がいるかもしれない。スポーツだけでなく、全ての女性がいつでも戻りたいタイミングで戻れるようになればいいなと思います」
――五輪2連覇で満足しなかった?
「あります、あります。もう金メダル2個持ってるからいいでしょって、自分も思ったんです。でも3連覇を期待してくれる人はいるし、私もオリンピックって最高な舞台だし。今は3連覇というよりも、2つ欲しいものを取って、結婚して子どもを産んで、もう欲しいものは持っているから『どうなってもいいから、やりたいとこまで、やってみよう』と。レスリングが好きで戻ってきたので『行けるところまで、行っちゃえ!』みたいな感じです」
――今までと大会への臨み方は違う?
「まわりは東京五輪以来の大会とか、12月の全日本選手権も注目されるとは思う。『3連覇に向かう、川井、金城梨紗子が戻ってきた』って見ると思うんですが、私自身は、新しい自分だと思っている。2連覇は過去のことであって、子どもを産んで、誰しもが経験できないことを経験した上で、選手にまた戻っている。別人だと思ってるので、プレッシャーもきっとない。本当レスリングができることが幸せだなと思いながら、やってると思います」
――16日の女子オープンは名字が変わり初めての大会。実感は?
「まだあんまり実感はないです。試合で賞状をもらったら、また実感わくのかな」
――出産後初めての実戦。今の思いは?
「シングレットを着て、マットに上がって、たくさんの人に見られる状況にならないと、その時の気持ちは分からないですが、出るからには負けていいと思ってるわけじゃない。出るからには勝ちたいですが、勝ちを目指す上で、1年2か月ぶりに戻ってきたという幸せと実感を、かみしめながら試合をしたい」
――緊張すると思う?
「絶対します。組み合わせとか、ホームページにエントリーが出ただけでも緊張して、妹の友香子にLINEで『めっちゃ緊張してきた』と言った。組み合わせを見ると、今でも緊張しますね。それは昔からです」
――パリ五輪の予選に向けて。
「1個1個の大会の先に、つながってくるのが五輪だと思う。今は女子オープンに向けてやって、その大会が終わった時に、自分がどう思うかで、次の目標を考えたい。自分のことではあるんですが、自分がどう感じるのか、楽しみな自分がいる」
――パリ五輪は「ママでも金」?
「昔テレビで、柔道の谷亮子さんが言っていた。その時は、超他人事だったが、自分がそれを目指せる立ち位置にいられることが、とてもうれしいです。同時にそれを目指すことが簡単じゃないことを、本当に痛感してますし、谷亮子さんだけじゃなくて、妊娠、出産を通じて、世の中の母親は、すごいなと思いますね」
――2連覇をした梨紗子選手でも、母として金メダルを取ることは圧倒される?
「同じ五輪のメダルでも、リオと東京でこんなに違う。同じ金メダルで、どっちも大切ですが、感じるものは全然違ったので、次があれば、きっとまた違うんだろうなって。今は純粋にレスリングが好きで、レスリングが楽しくて戻って来ている。五輪を目指して頑張ることが楽しい、本当にそれだけです」
そして、出産からわずか2か月後の7月。金城選手はパリ五輪に向けて、レスリングの練習を再開。
12月から始まるパリ五輪の国内予選に向けて、10月16日の全日本女子オープンレスリング選手権大会で、産後初めての試合に出場する予定です。
高みを目指し続ける金城選手に、独占インタビューをしました。
以下、主な一問一答。
――東京五輪での快挙を振り返って。
「だいぶ前だな(笑)1年以上たって、懐かしいなと。だいぶ生活も変わりましたし、オリンピック終わってから、バタバタしていた日々だったんですけど、もうそれも落ち着いて日常に戻った。懐かしいなと思っています」
――妊娠中、レスリングはどう見ていた?
「妊娠したと分かった時は、小学生の時にレスリングを始めてから20年間、大きいケガもしたことがなかったので、レスリングをしたくてもできない状況が、今までなかったんです。赤ちゃんができて、何があるのか分からないから練習はもちろんやめたんですけど。練習を見ていると、うずうずしていましたね。早くやりたいなというふうに」
――妊娠中にレスリングを見ていて感じたことは?
「子どもを出産して、6月の全日本選抜選手権で、初めて私が出場せず、妹の友香子だけが大会に出た。今までそういう状況がなかったんですよね。いつもは自分の試合のことでいっぱいいっぱいだったのが、客観的に、冷静に友香子の試合を見られて。結果、友香子は負けたんですが、それも含めて、この経験できるレスリングがやっぱりいいなって。今までは勝つことが全て。今も勝ちたいとは思ってますが、勝ちも負けもひっくるめて、スポーツっていいなと、見方が変わりました」
――育児で大変なことは?
「生まれてすぐ、新生児の1か月は、どこの赤ちゃんもそうだと思うんですが、昼と夜の区別がつかないんですよね。だから本当に寝なくて。寝かしつけようと思って、夜布団に入っても寝ない。ミルクあげて、寝かせて、というのを繰り返して、ぱっと外を見たら朝になってる時もあって。寝不足がしんどかったです」
――子どもが生まれ、練習の取り組み方に変化は?
「誰か子どもを見てくれる人がいないと、私が練習できないので、練習できる頻度はすごく限られている。今までは毎日自分のためだけに練習出来ていたのが、週に3回、4回とか。日本代表の合宿に行けば毎日練習できるんですが、その時は誰かに子供を預けている。練習量は落ちてるんですが、その分短期集中。短い時間にぎゅっと固めた練習をするよう意識してます」
――体の変化は?
「子どもの1か月健診が終わるまでは『お母さん何もしないで』と言われていた。1か月健診が終わった時に、病院に相談して『徐々に軽い運動からならいいですよ』と、言われてランニングを始めた。マットでレスリング始めたのは出産から2か月たってから。その時は出産前、当たり前にウオーミングアップでやっていたマット運動ができなかったり、準備運動のブリッジもできなかったり『うわぁ、やばいな』と、思ったんですが、自分がそこまで出来なくなった焦りよりも、『ここまで人って変わるんだ』って、初めての経験で。ある意味ちょっと楽しんでいた。出産ってすごいなと、改めて身をもって実感しながら、練習をなんとか頑張っているうちに、少しずつ動けるようになって、今に至ります」
――体を戻すために取り組んだことは?
「産後はホルモンのバランスが違うので、国立スポーツ科学センター(JISS)の産後サポートに連絡を取って、いきなり五輪前にやってたトレーニングに戻すのではなく、産後の体に合ったトレーニングを、本当に基礎的な、地味なトレーニングから始めました」
――具体的にどんなトレーニングをした?
「おなかが大きかった時期が長いので、腹筋の力の入れ方が分からなくなっていたのと、腰が反っちゃうんですよね。骨盤底筋という筋肉と、横のコルセットになるような部分や腹式呼吸。呼吸から見直した」
――家で子育てをしながらトレーニングはする?
「練習の頻度が少ない分、寝かしつける時についでにスクワットしちゃおう、くらいでやったりします(笑)軽く負荷になるので」
――女性アスリートが競技復帰できる環境については?
「東京に住んでるとJISSの施設が使えると思うんですが、私は普段地方に住んでいるので難しい。ただ、実家が石川県なので、住んでいる福井県と近い分、支援を受けながらできるとは思う。全国どこにいても、女性がスポーツで戻ってくるというのは、まだまだ難しい社会なんだろうなと感じます」
――今後どう変わればいいと思う?
「スポーツだけでなく、女性が子供を産んで社会復帰するのは、男性と比べて、すごくハードルが上がると思う。それが女性だけのハードルになって欲しくないというか、私1人が何かを変えられるとは思ってないんですが『社会復帰に向けて、ちょっと必死になって、頑張っている女性がいるんだぞ』ってことを知ってもらえれば、勇気づく人がいるかもしれない。スポーツだけでなく、全ての女性がいつでも戻りたいタイミングで戻れるようになればいいなと思います」
――五輪2連覇で満足しなかった?
「あります、あります。もう金メダル2個持ってるからいいでしょって、自分も思ったんです。でも3連覇を期待してくれる人はいるし、私もオリンピックって最高な舞台だし。今は3連覇というよりも、2つ欲しいものを取って、結婚して子どもを産んで、もう欲しいものは持っているから『どうなってもいいから、やりたいとこまで、やってみよう』と。レスリングが好きで戻ってきたので『行けるところまで、行っちゃえ!』みたいな感じです」
――今までと大会への臨み方は違う?
「まわりは東京五輪以来の大会とか、12月の全日本選手権も注目されるとは思う。『3連覇に向かう、川井、金城梨紗子が戻ってきた』って見ると思うんですが、私自身は、新しい自分だと思っている。2連覇は過去のことであって、子どもを産んで、誰しもが経験できないことを経験した上で、選手にまた戻っている。別人だと思ってるので、プレッシャーもきっとない。本当レスリングができることが幸せだなと思いながら、やってると思います」
――16日の女子オープンは名字が変わり初めての大会。実感は?
「まだあんまり実感はないです。試合で賞状をもらったら、また実感わくのかな」
――出産後初めての実戦。今の思いは?
「シングレットを着て、マットに上がって、たくさんの人に見られる状況にならないと、その時の気持ちは分からないですが、出るからには負けていいと思ってるわけじゃない。出るからには勝ちたいですが、勝ちを目指す上で、1年2か月ぶりに戻ってきたという幸せと実感を、かみしめながら試合をしたい」
――緊張すると思う?
「絶対します。組み合わせとか、ホームページにエントリーが出ただけでも緊張して、妹の友香子にLINEで『めっちゃ緊張してきた』と言った。組み合わせを見ると、今でも緊張しますね。それは昔からです」
――パリ五輪の予選に向けて。
「1個1個の大会の先に、つながってくるのが五輪だと思う。今は女子オープンに向けてやって、その大会が終わった時に、自分がどう思うかで、次の目標を考えたい。自分のことではあるんですが、自分がどう感じるのか、楽しみな自分がいる」
――パリ五輪は「ママでも金」?
「昔テレビで、柔道の谷亮子さんが言っていた。その時は、超他人事だったが、自分がそれを目指せる立ち位置にいられることが、とてもうれしいです。同時にそれを目指すことが簡単じゃないことを、本当に痛感してますし、谷亮子さんだけじゃなくて、妊娠、出産を通じて、世の中の母親は、すごいなと思いますね」
――2連覇をした梨紗子選手でも、母として金メダルを取ることは圧倒される?
「同じ五輪のメダルでも、リオと東京でこんなに違う。同じ金メダルで、どっちも大切ですが、感じるものは全然違ったので、次があれば、きっとまた違うんだろうなって。今は純粋にレスリングが好きで、レスリングが楽しくて戻って来ている。五輪を目指して頑張ることが楽しい、本当にそれだけです」