東京マラソンでみせた日本勢の挑戦 世界に挑んで得た“収穫”は?“日本のマラソンの可能性を感じさせるレース”

今年東京で開催される世界陸上選手権の代表選考レース。青山学院大学の太田蒼生選手(4年)が、日本勢で唯一世界のトップランナーが形成する先頭集団につき、日本記録を超えるペースの第2集団にも池田耀平選手(Kao)やパリ五輪6位の赤崎暁選手(九電工)、浦野雄平選手(富士通)がつき、世界に挑む果敢なレースをみせました。
今大会が終わり、世界選手権の代表3人は、パリ五輪代表でJMCシリーズ1位の小山直城選手(Honda)が最有力となり、昨年福岡国際マラソンで力走した吉田祐也選手(GMO)や2月の大阪マラソンで日本人トップの近藤亮太選手(三菱重工)や東京マラソンで日本人トップの市山選手らが濃厚となっています。
世界に挑んで得た収穫は?
結果としては、太田選手は中間地点を過ぎてから先頭集団から離れ、途中棄権。浦野選手が2時間6分23秒、池田選手が2時間6分48秒、赤崎選手は2時間7分48秒のタイムでした。
世界選手権の代表を目指すのであれば、第3集団のペースで進める選択もあったのかもしれませんが、あえて世界に挑んだ日本勢の選手たち。
太田選手は、レース前から先頭集団で走ることを宣言。「限界にチャレンジする意味でもある」と世界を肌で感じるためにあえてその選択をしました。
レース後は、「今回のレースは低体温と低血糖により途中で離脱してしまいましたが、前半から自分のやりたいようにレースを運び、世界のレベルを知れて良い経験ができました。オリンピックで金メダルを獲るために一歩踏み出せたと思います。次はもっと長く世界と戦い、3年後にはオリンピックで勝ちます」とこのレースを糧に次のステップに進む決意をコメントしています。
パリ五輪では6位に入った赤崎選手は、「自分としても未知の世界でしたが、良い経験になった。五輪というよりはまずは日本記録更新を目指してやっていきたい」とコメント。
また池田選手は、「結果から言うと残念の結果」としつつ、「速いペースでいって35キロくらいまでいけたのはプラス。速いペースでいった経験を次につなげていきたい」と収穫も口に。
「1キロ2分55~56秒のペースをイメージして練習をしてきた」と話し、「実際にペースと自分の走っている感覚があまり合っていない部分はあったが、走っているうちに楽になる部分や苦しい部分をしのいでいく感覚は新しい発見」と振り返り、「マラソンで勝負したいという気持ちは変わらない。スピードってところは今日も世界の選手たちに差をみせつけられてしまった。スピードへのアプローチをしていかないといけない」と今後を見据えました。
赤崎選手はパリ五輪を経験し、池田選手は世界トップランナーが集まったベルリンマラソンで日本歴代2位のタイムで6位。ともに“世界”を意識し、挑んだ東京マラソンでした。
大会後、マラソンの強化を担当する日本陸連の高岡寿成シニアディレクターは、このレースを総括。
「タイムを持っている外国人に日本人が挑戦して日本記録更新を期待しましたが、コンディション含めて厳しい結果になったかな」
結果を振り返りつつ、「その中で選考に関する標準タイム(2時間6分30秒)を突破する選手が3人出たのはよかった。世界との差を今日のレースで各選手が実感できた。多くの選手が果敢に挑戦する姿が“日本のマラソンの可能性を感じさせるレース”であった。このあとまた誰かがチャレンジしてくれたらと強く思う」と評価しました。
日本記録の2時間4分56秒は2021年に鈴木健吾選手(富士通)が記録。世界の壁に挑みつつ、記録の歯車を動かすのは誰になるのでしょうか。