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球界最年長投手 オリックス・能見篤史兼任コーチが語るプロ18年目 ~「びっくりした」昨季日本シリーズ登板&「宮城大弥は完全に“お友達感覚”(笑)」~

2022年6月13日 16:02
球界最年長投手 オリックス・能見篤史兼任コーチが語るプロ18年目 ~「びっくりした」昨季日本シリーズ登板&「宮城大弥は完全に“お友達感覚”(笑)」~
プロ18年目を迎えたオリックス能見篤史投手兼任コーチ
頭上に高く掲げた腕をしなやかに振り抜き、放たれる切れ味鋭いボール。美しいワインドアップが代名詞、オリックスの能見篤史投手。

5月28日に43歳になった左腕は投手としては球界最年長です。

20年オフに16年間過ごした阪神を離れ、オリックスと選手兼任コーチとして契約。移籍1年目からパ・リーグ制覇、日本シリーズ進出といまなお、活躍の幅を広げています。

プロ18年目を迎えた今シーズン、能見投手兼任コーチに胸の内を語ってもらうこのシリーズ。

初回は去年の日本シリーズのブルペンで起きていたこと、20歳の宮城大弥投手の素顔、若手選手との向き合い方などについて聞きました。(取材日は4月29日)

――18回目の開幕はどう迎えましたか?

18年やっているので、あんまり変わらないんですよ。いい意味でそんなに気持ちがたかぶることもないので、シーズン長いのでそれを頭に入れながらなので、「始まるな」くらいの感覚ですね。

――選手兼コーチとして2年目。こちらはどんな気持ちで臨まれますか?

どっちかというと、選手としてっていう気持ちの方がちょっと薄いかもしれないですね。

――コーチとしての方が?

僕としてはそっちの方が、実は少し大きくて、本当にチームとして困ったときに「なんとか力になれれば」と思っている。(オリックスには)それだけいいピッチャーが必ずいっぱいいるので、なんとかあの舞台で、成長していってほしいなとはすごい思います。

――自分は一歩引き、若手に任すという気持ちの切り替えは、社会人でもなかなか難しいと思う人も多いと思いますが?

あんま(難しさは)なかったですね。あんまり前に出たくないタイプなんで、中心はやっぱり若い選手。若い選手が中心になってやってもらうのが一番いいと思う。そこにプラスアルファ僕がうまく融合できればいいと思っているので。

平野(佳寿)とかは頑張ってやってもらわないといけないんですけど、ある程度僕とかは「じゃあ、中心でやって」と言われると自分もクエスチョンマークなので。その辺はしっかり理解しながら。でも、できることは必ずあるので、そこはしっかり周りを見ながら、何かサポートできたらとは思っています。

――昨年の日本シリーズ6戦。延長11回、村上選手の場面で登板。あの時はどんな気持ちでマウンドへ?

えとね、あのときは僕の中では「まぁこの場面はないな」と踏んでいたので。本当はあそこは僕自身がびっくりした方なので。

――えっ!?

ピッチャーも余ってたというか、(ほかにも)投げるピッチャーがいたので、僕はそっち(別の投手)を予測していたので、まさか違う方で・・・

――ブルペンではご自身で電話を受けたんですか?

(いつもは)受けるんですけど、終盤くらいになるともう1人補佐がいたんで。ブルペン担当補佐の飯田(現・育成コーチ)が「能見さん、今度から僕が出ます」と、「登板かもしれないので」って終盤になると(役割が)変わるんで。

――ベンチからのご自身の登板を告げる電話をブルペンで直接受けたことは?

シーズン中は多々ありました(笑)。

――どういう感じなんですか?

僕が出たり、飯田が出たりするんで、電話だとベンチには声でわからないらしく。僕が次に投げるって決まって、電話がきた時に(ベンチは)最初に「能見か」って聞くんです。

――本人確認ですか?

はい、本人確認(笑)。

――それからどんな感じですか?

「はい」って言って、「次行くよ」って言われて、「あ、わかりました」って、そんな感じ(笑)。

――そして、おもむろにウインドブレーカーを脱ぐんですね?

そうなんです。それで周りも「能見さんか」って。

――今シーズンは厚澤(和幸)コーチが入ったので役割は変わりましたか?

はい。主に厚澤さんがブルペンなので、僕は(兼任コーチ)ですが、人数の関係上、(ブルペンに)入れないとかあるので、サロンとかでテレビ見ながら気づいたことは厚澤さんとも相談しながらですけど、クセとか、いろいろね、なにか変化が必ずあるので、その辺は毎試合はモニター見ながらですけどね。

――オリックスは公式YouTubeなどみていても若くて楽しそうな感じがしますが、能見投手から見ていかがですか?

僕はあんまり壁を作って接するというのをしないので。(オリックスで)2年目なので、だいぶ若い子も打ち解けてきて、どっちかと言ったら、宮城(大弥)くらいは完全にお友達感覚で(笑)。

――具体的には?

人懐こいのは懐っこいですけど、僕に対しては結構暴言吐いたりとか・・・(笑)。

バッティング練習中なんですけど、「ボール当たれ」とか平気で言ったり(笑)。

ピッチャーは(試合前の練習で)センターにいるんです。キャッチボールをしてると(バッティング練習の)ボールが飛んでくる。宮城は近くにいるので、キャッチボールしながら、「(僕にボールが)当たれ」って言うんですよ(笑)。

――言い返したりするんですか?

言い返すというか、僕も結構いじってるんで、逆に(宮城が)言い返してくるパターンが多いですね(笑)。

――水の用意などでも何かエピソードがあったと聞きましたが?

ピッチャーの水の係とかは宮城がやっているんです。「しっかりしているな」と思うのは、宮城が先にあがるとき、やっぱり先輩に「お水いりますか」とか聞いてから(あがっている)。

その辺はいいんですけど、僕も冗談で「10本くらい置いといて」とか。何回か繰り返すうちに、1回6本くらい置いていって(笑)。スパイクに2本(ペットボトル)さしてたんですよ、スパイクの中に(笑)。

――いい関係ですね?

そうですね。悪気がないんでカワイイんですけど(笑)。

――若手への接し方、言葉を選んだりとか、厳しい言葉とか、気を使われていますか?

選手の性格によって、いろいろ変えてはいますけど。(厳しく)言っていいタイプの人間て必ずいるので。あまりにも優しい声をかけすぎると、スイッチが入らないというか・・・そっちに甘えちゃうというのは必ず出てくるので。

毎回厳しいことを言うことはないですけど、まぁ、山崎福也(さちや)とかはなるべく、ちょっと厳しめに声をかけてますし、もともと、もっとできるタイプの人間なので。

悔しさもしっかり持ってますし。

僕の見立てではそういう性格だと思うので、忘れないように、ちょこちょこスイッチを入れてあげようと思っています。

――宮城投手は?

宮城は見せないようにはしてるんですけど、自分の弱さを、周りには。(僕は同じ)左(ピッチャー)として、わかるんですよ。なので、今年に関しては「8勝しかできない」って断言してます。

――期待しているからこそ、あえて?

はい。

――本来ならもっと上にいく選手だからですか?

その意味があの子にとって、いろいろ考えていると思いますけど、8勝以上したら、あれなんです(笑)、普通に「寮まで迎えに来て、京セラ(ドーム)まで送れ」と。

――約束させられた?

そうですね。そういうのは冗談でいってきますけど。まぁ、傾向はちゃんといい方向には出始めているので、8勝以上しそうで(笑)。そういう雰囲気は持ってます、もう。(6月13日時点で宮城大弥投手は5勝3敗)

――能見投手は答えを与えて指導するタイプ?それとも気づいてもらうよう指導するタイプですか?

(選手の)タイプによります。

山崎福也はなるべく配球を結構言うようにはしてるんですけど、打者がどう感じているかということを感じてほしいんですよね、自分が投げて。「打者がこういう反応するな」って感じてほしいので。配球面の使い方はよく言うんですけど。

宮城はあんまり改めては言わないですね。あの子も考えながら投げているタイプなので。意外と賢いです(笑)。

――コーチ兼任1年目は結構、観察に使われました?

そうですね。向こう(選手)も構えてるでしょうし、僕もあんまりガツガツいけるタイプではないので。ちょっとずつ声をかけながらというか、そういうふうにはしてましたけど、もうある程度(壁は)取れてはいるので。

――2年目は寄り添う感じで?

そうですね。高山(郁夫)さんがいたり、厚澤さんが入ってきて、コーチ業の方が大変なんですが、基本的に僕は”いいとこ取り”みたいになってます。

――コーチを兼任しながら選手、は大変では?

大変でもないですよ。下(2軍)で投げに行くのは基本ないので。

たとえば、対戦相手が左ピッチャーとかの時は、バッティング練習中に(左の)バッティングピッチャーが必ずいると思います。

そこにお邪魔させてもらって、「きょう僕が投げますよ」とかはさせてもらっている。ブルペンで投げたり、調整したりはしているので特に問題ないです。

――ファンは能見さんが投げる姿も楽しみにしていると思うんですが?

ありがたいですね、そうやって思ってもらえるの。チーム事情もありますし、逆になかなか出てこないということで、あのー“宝くじ”みたいなもんですね。

――レアキャラみたいにおっしゃらないでください(笑)

そうなんです。だから、出てきたらレアなんです(笑)。

でも、ちゃんと準備はしているので、やっぱり新型コロナの中で選手が離脱したりはするので、便利にたとえば、ファームでも投げるピッチャーがいないときにパッといけるようには準備はしています。


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6月12日、対阪神戦で今季初登板を果たした能見投手。能見投手登板のコールが流れると、オリックスファンだけでなく阪神ファンからも大きな拍手が送られました。

8回、リードされた場面でしたが、1イニング打者4人に対し、10球を投げ、ロハスJr.選手にフォアボールを与えたものの無安打、無失点に抑えています。ファンからは「能見さん」と喜びの声がSNS上で飛び交い、トレンド入りするなど、根強い人気を誇っています。

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能見篤史 左投左打
1979年5月28日生
兵庫県出身 180センチ74キロ
鳥取城北高校ー大阪ガスを経て、2005年に阪神タイガースに入団。12年に最多奪三振、14年は5試合連続2桁奪三振のセ・リーグ記録を樹立。13年にはWBCに日本代表として出場。20年オフに阪神を退団し、オリックスと兼任コーチとして契約。
昨季、歴代最年長41才11か月で通算1500奪三振を記録。
通算成績
470試合104勝93敗4S
防御率3.35 (6月13日現在)
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