【高校サッカー注目・香川】ジャイアントキリング狙う四学香川西 過去最高の雰囲気で全国へ
優勝決定後、ピッチの選手たちが真っ先に向かったのはスタンド
第101回全国高校サッカー選手権は12月28日に開幕します。香川県代表の四国学院大学香川西(以下:四学香川西)は29日の1回戦で山形県代表の羽黒と対戦します。4年ぶり12回目の全国を戦う四学香川西。今回はチームの特長と注目ポイントを紹介します。
■“伝統のサイド攻撃”の根幹と県大会で見せた“新たな姿”
今年で創部40年の四学香川西。第85回大会から第93回大会まで県9連覇。第87回大会では現在J1川崎フロンターレのDF登里享平選手を擁して初戦で市立船橋(千葉)に2-1で勝利。第88回大会では初戦で前橋育英(群馬)に3-2で勝利。両校はいずれもその年の夏の総体王者でした。
全国の舞台でジャイアントキリングを起こしてきた四学香川西は伝統的にサイド攻撃を武器にしてきました。四学香川西がサイド攻撃をスタイルにする理由について、創部当時から指揮を執る大浦恭敬監督の息子でもある翔コーチは、「四学香川西の伝統は“基本”だ。止める技術や蹴る技術。縦へのドリブル突破やヘディングがサッカーの基本。それらの基本を監督が重視する結果、サイド攻撃がスタイルになった。」と話します。
現在その中心にいるのは、左サイドハーフのMF菊池亜門選手(3年)と右サイドハーフのMF山田晃市選手(3年)の2人です。菊池選手は縦への突破を武器に試合終盤でもスプリントを繰り返します。登里選手が高校時代につけていたことから、チームのエースナンバー“8番”を背負っています。山田選手はドリブラー。スペースを見つけるとスピードに乗ったドリブルでエリアに侵入してきます。県決勝では40メートル近いドリブルから先制点をアシストしました。
県大会でもサイド攻撃から得点を量産した四学香川西ですが、今年のチームには違いがありました。それは中盤でのパス回しの回数が増えたことです。早めにサイドにパスを出すのではなく、サイドで不利な状況では中盤でパス交換やサイドの選手がカットインする場面が目立ったのです。
このことについて翔コーチは、「色々な指導法に触れる中でサイド攻撃のスタイルはそのままにパスをつなぐことが増えた。パスをつなぐことでサイド攻撃も生きる」と話します。サッカーの“基本”を元にしたサイド攻撃を進化させて。初戦に勝てば13大会ぶりに今年の夏の総体王者『前橋育英』と対戦する可能性もあります。
■チームを支える“熱すぎるキャプテン”
県大会中、他チームの関係者などから聞こえてきたのは「今年の四学香川西は今までに無いほど雰囲気が良い」という言葉でした。県決勝の会場を包んだのはスタンドの選手たちの打楽器や手拍子による軽やかなリズムの応援。試合終了後、ピッチの選手たちが真っ先に向かったのはスタンド。メンバーではない選手たちと泣き崩れながら抱き合い喜びを爆発させたのです。
部員131名をまとめる谷将貴キャプテン(3年)は控えのゴールキーパーです。試合への出場機会は少ない中、選手間投票で選ばれてキャプテンに就任しました。
谷選手に話を聞くと「キャプテンになった時にチームの雰囲気だけは良くしたかった。どんなことがあってもチーム一丸で戦おうと声をかけ続けた。自分が出られないと悔しいが、きつい練習を乗り越えて誰が試合に出ても応援できる関係性になった」と話します。
その谷選手は県決勝の試合終了の瞬間を見ていませんでした。終了間際に勝負を決定づける得点が入り勝利を確信。ゴールを決めた選手のこれまでの努力が実を結んだこと、全国へ行けることへの喜びから号泣。気づいたら試合が終わっていたそうです。“熱すぎるキャプテン”がまとめるチームが、冬の寒さを吹き飛ばす活躍を見せるかもしれません。
■チーム帯同“大学生カメラマン”
そしてもう1人今年の四学香川西を支えるのは、試合中一眼レフカメラに大きなレンズをつけて選手の写真を撮り続ける大学2年生の吉田菜穂さん。
四学香川西の出身で高校時代は帰宅部。当時は趣味で野球部の試合の写真を撮りに行っていましたが、翔コーチからサッカー部の写真を撮ってほしいと頼まれて、それ以来サッカー部の写真を撮るようになりました。小さいときから貯めていたお年玉などの貯金で買ったカメラだけでは性能的に物足りず、週4回のアルバイトで望遠レンズを買いました。
今は香川から電車で1時間ほどの岡山の大学に通いながら、週末の大会やリーグ戦はほぼ毎回自家用車で通い、試合がない日はアルバイトをします。撮った写真はチームのホームページにアップします。県外生も多いため保護者から好評で、ゲームキャプテンの福平太一選手(3年)は、「モチベーションになる。親が東京にいて試合を観に来ることができないので、電話で写真を見ながら自分のその日のプレーについて話す」ということです。
吉田さんが写真を撮るときに意識するのは、ゴールシーンなどは自然と良い写真が撮れるので、それよりも純粋にサッカーをしているところを撮ること。なぜ写真を撮り続けられるのかを聞くと「チームのみんなが大好きだから」と答えが返ってきました。以前から年末の予定を空けていたという吉田さん。チームを支えた3年間で初めての全国大会。笑顔の選手たちをファインダー越しに撮ることを待ち望んでいます。
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/西日本放送)
■“伝統のサイド攻撃”の根幹と県大会で見せた“新たな姿”
今年で創部40年の四学香川西。第85回大会から第93回大会まで県9連覇。第87回大会では現在J1川崎フロンターレのDF登里享平選手を擁して初戦で市立船橋(千葉)に2-1で勝利。第88回大会では初戦で前橋育英(群馬)に3-2で勝利。両校はいずれもその年の夏の総体王者でした。
全国の舞台でジャイアントキリングを起こしてきた四学香川西は伝統的にサイド攻撃を武器にしてきました。四学香川西がサイド攻撃をスタイルにする理由について、創部当時から指揮を執る大浦恭敬監督の息子でもある翔コーチは、「四学香川西の伝統は“基本”だ。止める技術や蹴る技術。縦へのドリブル突破やヘディングがサッカーの基本。それらの基本を監督が重視する結果、サイド攻撃がスタイルになった。」と話します。
現在その中心にいるのは、左サイドハーフのMF菊池亜門選手(3年)と右サイドハーフのMF山田晃市選手(3年)の2人です。菊池選手は縦への突破を武器に試合終盤でもスプリントを繰り返します。登里選手が高校時代につけていたことから、チームのエースナンバー“8番”を背負っています。山田選手はドリブラー。スペースを見つけるとスピードに乗ったドリブルでエリアに侵入してきます。県決勝では40メートル近いドリブルから先制点をアシストしました。
県大会でもサイド攻撃から得点を量産した四学香川西ですが、今年のチームには違いがありました。それは中盤でのパス回しの回数が増えたことです。早めにサイドにパスを出すのではなく、サイドで不利な状況では中盤でパス交換やサイドの選手がカットインする場面が目立ったのです。
このことについて翔コーチは、「色々な指導法に触れる中でサイド攻撃のスタイルはそのままにパスをつなぐことが増えた。パスをつなぐことでサイド攻撃も生きる」と話します。サッカーの“基本”を元にしたサイド攻撃を進化させて。初戦に勝てば13大会ぶりに今年の夏の総体王者『前橋育英』と対戦する可能性もあります。
■チームを支える“熱すぎるキャプテン”
県大会中、他チームの関係者などから聞こえてきたのは「今年の四学香川西は今までに無いほど雰囲気が良い」という言葉でした。県決勝の会場を包んだのはスタンドの選手たちの打楽器や手拍子による軽やかなリズムの応援。試合終了後、ピッチの選手たちが真っ先に向かったのはスタンド。メンバーではない選手たちと泣き崩れながら抱き合い喜びを爆発させたのです。
部員131名をまとめる谷将貴キャプテン(3年)は控えのゴールキーパーです。試合への出場機会は少ない中、選手間投票で選ばれてキャプテンに就任しました。
谷選手に話を聞くと「キャプテンになった時にチームの雰囲気だけは良くしたかった。どんなことがあってもチーム一丸で戦おうと声をかけ続けた。自分が出られないと悔しいが、きつい練習を乗り越えて誰が試合に出ても応援できる関係性になった」と話します。
その谷選手は県決勝の試合終了の瞬間を見ていませんでした。終了間際に勝負を決定づける得点が入り勝利を確信。ゴールを決めた選手のこれまでの努力が実を結んだこと、全国へ行けることへの喜びから号泣。気づいたら試合が終わっていたそうです。“熱すぎるキャプテン”がまとめるチームが、冬の寒さを吹き飛ばす活躍を見せるかもしれません。
■チーム帯同“大学生カメラマン”
そしてもう1人今年の四学香川西を支えるのは、試合中一眼レフカメラに大きなレンズをつけて選手の写真を撮り続ける大学2年生の吉田菜穂さん。
四学香川西の出身で高校時代は帰宅部。当時は趣味で野球部の試合の写真を撮りに行っていましたが、翔コーチからサッカー部の写真を撮ってほしいと頼まれて、それ以来サッカー部の写真を撮るようになりました。小さいときから貯めていたお年玉などの貯金で買ったカメラだけでは性能的に物足りず、週4回のアルバイトで望遠レンズを買いました。
今は香川から電車で1時間ほどの岡山の大学に通いながら、週末の大会やリーグ戦はほぼ毎回自家用車で通い、試合がない日はアルバイトをします。撮った写真はチームのホームページにアップします。県外生も多いため保護者から好評で、ゲームキャプテンの福平太一選手(3年)は、「モチベーションになる。親が東京にいて試合を観に来ることができないので、電話で写真を見ながら自分のその日のプレーについて話す」ということです。
吉田さんが写真を撮るときに意識するのは、ゴールシーンなどは自然と良い写真が撮れるので、それよりも純粋にサッカーをしているところを撮ること。なぜ写真を撮り続けられるのかを聞くと「チームのみんなが大好きだから」と答えが返ってきました。以前から年末の予定を空けていたという吉田さん。チームを支えた3年間で初めての全国大会。笑顔の選手たちをファインダー越しに撮ることを待ち望んでいます。
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/西日本放送)