ワリエワ選手シングル出場可能に 冷静に受け止めるロシア国民も
ドーピング問題が浮上したロシアオリンピック委員会のカミラ・ワリエワ選手について、CAS(=スポーツ仲裁裁判所)は14日午後、個人種目への出場を認める裁定を下しました。地元・ロシアでは、冷静に受け止めている国民も多いようです。15日に行われるシングルへの出場を認める判断はどんな背景からなのでしょうか?
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個人種目への出場を認める裁定が下った30分後の公開練習で、カミラ・ワリエワ選手は4回転ジャンプなどを次々と成功させ、“絶望”の異名通り圧倒的な滑りを見せつけました。
しかし、報道陣の質問に答えることはないまま、ワリエワ選手は会場を去りました。
日本時間14日午後3時ごろ、CAS(=スポーツ仲裁裁判所)はドーピング問題について、ワリエワ選手の北京オリンピック出場を認める判断を下しました。
CAS=スポーツ仲裁裁判所 リーブ事務局長
「フィギュアスケーター、カミラ・ワリエワについての裁定を発表します。北京オリンピックでの引き続きの出場を認める決定をしました」
これをもって、ワリエワ選手は、15日に行われる女子ショートプログラムにも出場できることになります。
CASは日本時間13日午後9時ごろ、関係者約50人への“オンライン聴取”を行いました。関係者は、報道陣からヒアリングルームの中が見えないかを念入りにチェックし、上の階からも見える範囲を確認しているようでした。
リーブ事務局長
「ワリエワ選手もオンラインで証言します」
―― 彼女自身が?
リーブ事務局長
「そうです」
ワリエワ選手本人も参加したヒアリングは約6時間かけて行われました。一夜明け下されたワリエワ選手の出場容認。その理由について――
リーブ事務局長
「まずワリエワ選手が16歳以下であること。オリンピックに出場できない場合、取り返しのつかないダメージを与えてしまうだろう」
さらに、リーブ事務局長は「オリンピック期間中の検査では、陽性と認められなかった。12月に採取した検体が陽性だからといって、今大会の成績に影響を及ぼすとは言い切れない」と述べました。
提訴していた国際オリンピック委員会(=IOC)や国際スケート連盟は、「CASの判断を尊重する」と発表しています。
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ワリエワ選手の個人戦出場容認の結果は、世界中に速報で伝えられました。ロシアでは、冷静に受け止めている国民も多いようです。
ロシア国民
「彼女はドーピングをする人に見えません。ただ、ウソをついているかどうか次第ですね」
ロシア国民
「私はルール違反には反対です。判断が正しかったかどうかは分かりません」
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スポーツ仲裁裁判所の仲裁人である早川弁護士は今回の判断について、「不可解な点も残っている」と話します。
CAS仲裁人 日本アンチ・ドーピング規律パネル委員長 早川吉尚さん
「私からすると、アスリートに偏った立場で判断が下されたんじゃないかなと。本来では、原則暫定資格停止を出すべきところ、『仲裁人がどのような思想信条を持っているか』というところも影響せざるを得ない」
「今回の一つのイレギュラーなポイントは、なぜ12月25日の検体が、2月7日の段階まで届かなかったのか。現実にはそういった(遅れ)が 起こるといった可能性はほとんどゼロだと思います」
世界反ドーピング機関(=WADA)は14日、検査を行った研究所は 「ワリエワ選手の検体を、北京オリンピック前に検査しないといけないとは知らなかった」と発表しました。
予定通り15日の個人戦に出場できることとなったワリエワ選手ですが、団体戦の順位については今後、国際スケート連盟が最終的な判断を下すとしています。